老後資金、貯金3000万円じゃ足りない?カギは「不安にならない投資」
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

老後資金、貯金3000万円じゃ足りない?49歳からできる投資とは

  • 公開日:2020.12.07

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線で資産相談に応じると言われるIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)。実際に、彼らは相談者に対してどんなアドバイスをしているのでしょうか。IFAが印象深かった相談内容を振り返るシリーズ連載第12回で取り上げるのは、子育て“卒業”を機に老後資産形成に興味を持った共働き夫婦に、大手IFA法人ファイナンシャルスタンダードの水口洋佑さんがアドバイスしたケース。貯めたお金をどう、投資すべきかを検討していたご夫妻に、あえて積立投資も提案した理由とは……?

今回は、お子さんの大学卒業を機に自身の老後資金について考え始めた、東京都にお住まいの岡田康夫さん(49、仮名)の例をご紹介します。

相談者:
岡田 康夫さん(49) 会社員

ご家族:
妻  智子さん(49) パート
長女 佳奈さん(23)

(いずれも仮名)

昨年、金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループが「年金の不足分を補うために、老後には2000万円程度の資産の取り崩しが必要」と報告書にまとめた「老後2000万円問題」を機に、リタイア後の資金について考え始めた岡田さん。ちょうど一人娘の佳奈さんが社会人となったのを機に、これまでコツコツ預金してきた3000万円を運用しようと思い立ちました。以前、個別株に興味を持った際にネット証券に口座を開いており、ネット証券のメールマガジンで知った当社の投資セミナーに参加したのを機に、個別面談を希望されました。

老後資金の準備について、数年前までは50代後半のリタイア直前になって考え始める人が多かった印象がありますが、最近は20~40代と早い段階から真剣に検討する人が増えているように感じます。岡田さんも興味本位で個別株を買ってはみたものの、残る3000万円ものお金をどう運用すればいいのか分からないと困っていました。

老後資金をいくら用意すべきか、というのは、実は奥が深い問題です。老後の収入源となる保有資産や公的年金の受取予定額はもとより、「どんな老後生活を送りたいか」によって、目指すべき運用金額が大きく変わってきます。

岡田さんの場合は、「老後も現在の生活を維持したい」とのご希望でしたので、それに基づいて100歳までの年間収支と貯蓄額を試算するキャッシュフロー表を作成しました。収入は比較的高いので年金額も標準世帯よりは多いと見込まれますが、年金だけで今の生活を維持しようとすると赤字が出てしまうことが分かりました。

キャッシュフロー表はあくまで現段階の試算であり、将来の物価や税率、受け取り年金額などは変わる可能性がありますし、支出額も自身や家族の健康状態によって変わるので、その通りになるわけではありません。しかし、だからといって赤字だからとあきらめたり、目を背けていては豊かな未来は遠のくばかりです。今できることをやることで将来の生活は変えられます。今できることを見つけ、最初の一歩をサポートするのがIFAの仕事です。

岡田さんの場合は、まずは今ある貯蓄を有効活用していくとともに、教育費負担がなくなるのを機に毎月の収入から積立投資を始めることが有効と考えられました。一括投資と積立投資は、どちらか一方だけでもいいのですが、並行するとより効率的な資産運用が期待できます。

最近はiDeCoやつみたてNISAといった税金の面で有利な制度の認知度が上がっており、メディアなどでも多くの情報が提供されています。積立投資は時間を分散して投資することで下落相場も利益につなげることができるので、一括投資と比較すると商品選びにそれほど気を遣う必要がありません。

岡田さんの場合も、ご夫婦それぞれでつみたてNISA口座を開設し、世界株式全体の指数に連動するシンプルなインデックスファンドを、上限枠となる年40万円(月額約3.3万円)を積み立てで購入することにしました。社会人1年生の佳奈さんも、ご両親にならって積み立てを始めました。こうした積立投資は専門家のアドバイスなしに自分で始められる人も多く、比較的シンプルなご提案となりました。

一方、岡田さんのご希望の一括投資はハードルがグンと上がります。なぜなら、一括投資は商品選びと投資タイミングによって、回復が難しいほどの損失を負ってしまう可能性があるからです。教科書的には、逆の値動きをするとされる株と債券に分散してリスクを抑えることが推奨されているものの、リーマンショック以降は株も債券も暴落時には一緒に下落する傾向が強まっており、分散効果が期待できなくなっています。

運用商品ごとの相関性や正しい組み合わせなどについては、金融機関の営業担当者でも正確に説明できる人は少なく、単純に期待リターンが高い(その分、リスクも高い)商品を勧められてしまうこともあります。

長期投資の場合、期待できる年平均のリターンが5%であっても、激しい変動をならした「平均5%」と、ブレが少なく安定した「平均5%」の商品とでは、実際の利益や保有中のストレスに天と地ほどの差があります。同じ期待リターンなら、なるべく変動幅が少ない商品を選ぶ方が最終的な利益は大きくなり、保有中も大きな下落によるストレスを感じずに済みます。

値動きの影響をなるべく小さくし、リスクを抑えた運用を実現するために、当社では「オルタナティブ戦略」という、変動幅を小さくする仕組みを採用した運用を重視しています。たとえば、ロング(買い注文)・ショート(売り注文)戦略といって、優良な個別株を買い、市場全体を示す指数を売るという逆方向の投資を両方実施する戦略では、上昇相場では良い個別株の上昇率は市場を上回るのでその差分が利益となり、下落相場では良い個別株は市場平均よりも下落は小さいのでその差分を利益にできます。

要するに、上昇局面の利益が抑えられてしまう代わりに、下落相場でも利益を出せることになり、結果的に長期的な運用成果が安定するのです。今後も何度となく訪れるであろう金融ショックや暴落時にその衝撃を緩和する効果が期待され、長く続けやすい投資戦略と言えます。

当社では、初回面談でお客さまの状況や課題をヒアリングした上でカルテを作成し、目標の共有までを行います。その後社内で会議をし、他のアドバイザーの意見も集約しながら、2回目以降の面談で提示する提案内容を詰めていきます。

今回のケースでは「住宅ローンの繰り上げ返済を優先すべきではないか」という意見も上がりました。確かに、運用での利益が住宅ローンの金利を上回ることが保証されているわけではないので、こうしたリスクを取りたくない場合はその選択肢も有力になります。どちらが有利になるかは分からないので、ご本人の価値観とすり合わせることにしました。

岡田さんにこの2つの選択肢をお伝えしたところ、リスクを取ってでもオルタナティブ戦略で運用したいと希望されたので、3000万円の貯蓄のうち、2500万円を運用することになりました。

オルタナティブ戦略は、通常の分散投資に比べると難しい考え方ですので、実際に投資をするなら仕組みをよく理解する必要があります。特にこのケースでは、2500万円を一気に投じることになります。自分がどの程度リスクが取れるかの判断は難しいので、なるべく想像がしやすいよう具体的なデータや数字を使って説明し、岡田さんには十分にご納得いただくことを重視するようにしています。「おかげで2020年のコロナショックでは株式市場が30%超下落する中、5%程度の下落で抑制できており、その効果を実感することができた」とおっしゃっていました。

岡田さんはまだ49歳。この先も、さまざまなライフステージの変化や金融市場の変動があるでしょう。始めるハードルが低い積立投資も、価格が高くなると売りたくなったり、下がってくると怖くてやめたくなったりと、一人で長期投資を続けるのは難しいものです。専任のアドバイザーとして、当初の目的などを確認しながら継続的にフォローしたり、その時々のお悩みをお聞きするなど、岡田さんがご納得のいく運用を続け、豊かな老後を実現できるよう、今後もサポートしてまいります。

この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (11)
  • 難しかった (0)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

著者

水口 洋佑 ファイナンシャルスタンダード ファイナンシャルアドバイザー
水口 洋佑
慶應義塾大学経済学部卒業。2008年三井住友信託銀行(旧中央三井信託銀行)入社。資産運用コンサルティング業務に従事した後、マネージャーとして人材育成に関与。2018年ファイナンシャルスタンダード入社。独立・中立的な立場から資産運用アドバイスを提供している。楽天証券IFAアワード受賞者。

関連コラムRelated

参考サイト
もっと情報をキャッチ!