
「ローン完済は70代…老後が不安」アラフォー夫婦が始めるべき投資は
- 公開日:2020.12.16
Editor's Eye
資産運用にまつわるお悩みにプロが回答するシリーズ。今回はやりくり上手で月に23万円もの余剰金を生み出す共働き世帯が登場。ただ当のご本人は住宅ローンの返済が終わるのはオーバー70、そのうえ教育資金の準備として「学資保険」にまだ入っていない……と、老後も含めた未来のお金への不安を感じていると言います。保険会社に勤めたキャリアを持ち、年金や住宅ローンなどトータルでのアドバイスに定評のあるファイナンシャルプランナー渡辺和子さんに回答していただきました。
相談者のプロフィールとお金データ
【久松 聡子(仮名)さんプロフィール】
37歳。一つ年上の夫と3歳になる長女の3人で暮らす。宮城県在住。夫は商社営業、自身はオフィス業務をしており、2人とも正社員。株主優待目的での株式投資もしており、優待券を使って家族で食事をするのが楽しみ。
【寄せられたお悩み】
「共働きで今後も働く予定ですし、今のところボーナスも出ていますが、私も夫も今後大きく収入が増えることは望めません。そのため、家計費は項目ごと細かく分け管理をしており、かなり生活は切り詰められていると思います。
子供が小さいうちにと思い、2年前に住宅を購入しましたが、35年ローンで完済年齢が夫71歳、老後もローンを払えるのか今から心配です。また子供もゆくゆく教育資金がかかると思います。学資保険も気になっているものの迷っているうちにタイミングを逃して、いまだ入っていません。今からでも入った方がいいのかも迷っています。
この状況で安心して夫婦2人で老後、やっていけるでしょうか」
【お悩みの論点】
①かなり切りつめて生活はしているつもりだが、もっと他に方法はあるか
②住宅を購入したが、ローン完済年齢は70オーバー……不安を感じている
③教育資金も心配、今からでも学資保険に入るべきか
資産状況や月々の収支内訳
【資産状況や月々の収支内訳】
世帯の金融資産額(運用中の投資額と預貯金を合わせた金額):約450万円
内訳
預貯金:420万円
個別株:約30万円
※ちなみに、相談者および夫の会社には企業型確定拠出年金がない。
収支
<収入>
・世帯の毎月の手取り収入:49万円
・手取りの年収:686万円
<支出>
35万1000円(詳細以下)
支出について、久松さんよりコメント
※1……「住宅ローンの返済中です。ボーナスのときは、12万円×年2回返済にあてています」
※2……「財形貯蓄で貯めています」
※3……「保育料です」
銀行口座にお金を寝かせておくのはもったいない! 投資による資産運用を始めよう
現状、久松さんの家計はかなり支出が抑えられており、月によって数万円の特別支出はあるのでしょうが、何もない月は約23万円の余剰金があり、そのうち10万円を会社の財形貯蓄で積み立てていますから、残り13万円は銀行口座にそのままということになります。一般的な手取り収入からみる預貯金割合を、15%~17%程度と考えると、久松さんは実に46%!日頃の家計管理の賜物で素晴らしいですが、まだお若いですし、少し積極的に運用資金に回してもよさそうです。現在の低金利の中で、このままというのはもったいないですね。
例えば、財形貯蓄の10万円は、5年後10年後、車の買換え費用や、住宅ローンの繰り上げ返済資金など、使う目的の決まったお金としてそのまま継続し、残りの13万円の一部を運用してみてはいかがでしょうか。
お2人とも会社員ですので老後の資産形成の選択肢として、やっぱり外せないのはiDeCo(個人型確定拠出年金)です。掛金も1000円単位で変えられますから、上限の2万3000円をご夫婦それぞれで始めてみてはいかがでしょうか。
月5000円までは減額できるので、二人目のお子さんなど、ライフイベントの変化で拠出額は考えるとして、まずは口座を持ってみるのがおすすめです。仮に3%の利回りで運用できたとすると、ご主人は22年間で854万3000円、奥様は23年間で907万9000円、合計約1762万円となります。その上に税メリットが乗ってきます。老後資金の目標を2500万円*とするなら、あと少し頑張って、つみたてNISAで2万3000円を20年間3%で運用できれば、目標達成となります。
*……久松さんは現在37歳。1983年生まれの女性の平均寿命は、なんと98歳!そのうち2人に1人は101歳と、まさに人生100年です。国の年金がご夫婦で月約6万円足りないというデータもありますので、65歳から100歳までの35年間の月6万円の不足分を取り崩せるよう、約2500万円を概算で目標としています。
久松さんのご家庭は、月6万9000円(iDeCo2万3000円×2人、つみたてNISA2万3000円)を運用に回したとしても、財形貯蓄で10万円、余剰金として約5万円が確保できますので、問題のないバランスです。投資にあてても問題のない金額は、ある程度のセオリーはあるものの絶対的なものはありませんから、長期的に考えて無理のない金額にするということ、将来どれくらいにしたいか大体でよいので目標を描いておきましょう。
30代後半に向いている投資信託って?
つみたてNISAの20年非課税期間がつくられた背景を知ると少し気が楽になるかもしれません。長期積立分散投資を20年間継続した場合、すべての人の投資収益率がプラスになっているということから、このような制度になりました。そういう意味では、運用期間が20年以上ある久松さんは、あくまでも過去の実績ですが、何を選んでも効果を得られる可能性があるということになります。
投資信託で長期国際分散投資が可能となっていることを感じていただきたいので、ひとつの便利なファンドをご紹介すると、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)があります。何が便利かというと、これ1本で全世界(日本を含む先進国・新興国)の約50ヶ国に国際分散投資ができることになります。このファンドを保有するだけで、全世界にあるたくさんの優良な会社、約3000社に投資ができるというわけです。そう考えるとワクワクしてきませんか?
学資保険はいる?いらない? 意外と知らない奨学金制度にも注目を
久松さんのご家庭には、3歳のお子さんがいらっしゃいますが、迷っているうちに学資保険をしそびれてしまい、今からでも始めた方がよいのか? とのこと。そもそも学資保険の目的は何か、ということが大切になります。
目的は2つ考えられます。①お金がかかってきそうな大学資金に向けてお金を貯めていきたい、②または一家の大黒柱に万が一のことがあった場合、お子さんが大学に行けなくなってしまうことを防ぐ、この2点です。ほとんどの方は前者の目的として、ご準備されているように思いますが、ときどきお子さんに死亡保障が付いていたり、貯めたり増やしたりする目的にもかかわらず元本割れのケースも目にします。この低金利時代においては保険も運用されづらくなっていますから「学資」という名前に惑わされず、目的をもって加入することをお勧めします。
また日本学生支援機構の奨学金制度は、在学中に完済してしまえば金利は付きませんから、注目する価値のある制度です。大学卒業の22歳まであと19年時間があります。保険で準備するなら、多少円よりも金利が見込め、かつ親御さんの万が一に備える外貨建て保険を使って、為替のリスクヘッジもしながら見ていくという方法もあるかもしれません。
老後に住宅ローンを残さない方法
近年、晩婚化で家を買うタイミングが遅くなり、2020年ローン完済時の平均年齢が73歳と高くなっています。雇用年齢も引き上がってきてはいますが、しっかりとした返済計画を立てていきたいところです。
長い返済期間、借りっぱなしではなくメンテナンスも必要。借り換えと繰上返済、2つの利息のスリム化に積極的にチャレンジしてみることが大切です。低金利時代ですから、住宅ローン控除を受けているうちは、焦ってする必要はありませんが、頭の片隅に置いておきましょう。
借り換えは浮く利息よりも諸費用が多くかかる場合がありますので、効果がどれくらい得られるのか、シュミレーションが大切です。また借り換えを検討するのなら、現在の金融機関に利息の交渉することもできます。利息交渉は、全然恥ずかしいことではありません。大切なお金だからこそ、しっかり交渉してください。繰上返済は金融機関によっていくら以上からというルールを設けているところがありますし、低い金額から手数料が無料の金融機関もあります。借入にも複利効果が働くので、一気に数百万を返済するよりも、コツコツ返済する方が効果が見込めます。
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冒頭でもお話した通り、余剰金を23万円も毎月出せるのは日頃の管理の賜物です。どうぞ日頃のやりくりには自信を持って、投資信託による積立投資など新しいお金との付き合い方も学んでみてください。応援しています。