“老後破産”対策は50歳から始める!まずは「お金の棚卸し」から
「R50」の新常識 余裕の老後は知識で築く! 15

“老後破産”対策は50歳から始める!まずは「お金の棚卸し」から

  • 公開日:2020.12.11

Editor's Eye

人生100年時代において、50歳はまだまだ折り返し地点。特に、これからの時代に必要になってくるのは「働きながら年金をもらい、資産を上手に使う」という発想です。単に貯めるだけでなく、リタイア後のお金の準備も始めておきたい「R50」世代に向けて、長年マネー誌、ビジネス誌の編集に携わり、年金関連の取材・執筆を多数手掛けてきたフリーライターの森田聡子(としこ)氏が解説するシリーズ連載。第15回では、大手流通系企業で長きにわたって確定拠出年金(DC)関連の業務に携わり、現在は社労士として活躍する鈴木一成(かずなり)氏への取材を実施。鈴木氏が講師を務める「50歳時のライフプランセミナー」の詳しい内容と、いかに「老後破産」に備えるべきかを聞きました。

この人に聞きました

鈴木 一成

一成FP社会保険労務士事務所
社会保険労務士・AFP

大手流通系企業で20年以上、企業年金制度・ライフプランセミナー・確定拠出年金に関する社内研修の講師を務める。53歳で社会保険労務士の資格を取得。2020年3月に定年(60歳)を迎えた後は勤務先から再雇用され、副業として社労士との“二刀流”で仕事を続けるR50世代のロールモデル的な存在。

――鈴木さんの会社では、50歳時から「定年前」のライフプランセミナーを実施していると伺いました。50歳なら「定年までまだ10年もある」という捉え方もできますが、50歳になったら定年準備が必要ということなのでしょうか?

私の勤務先では20年近く、55歳の社員を対象に最初のライフプランセミナーを実施してきました。しかし、受講者の中から「もっと早くこういう話が聞きたかった」「今からでは準備期間が足りない」という声が上がり、2017年から50歳で実施するようになったのです。正確に言えば学齢51歳、同学年の人が全員50歳を迎えた次の年度ですね。

社員の中には20~30代からコツコツお金を貯めてきた人もいれば、「何とかなるさ」と老後の準備をしてこなかった人もいます。後者のタイプが55歳時のライフプランセミナーで“気付き”を得ても、定年までは5年間と間に合わせるには時間がないというわけです。

もう1つ、毎年の誕生月に日本年金機構から送付される「ねんきん定期便」の記載内容は、50歳を境に大きく変わります。50歳以降は「将来受け取る見込み額」が示されるようになり、定年後の生活設計がやりやすくなるのです。ライフプランセミナーには受講者各自のねんきん定期便を持参してもらい、それを基に将来の収入の試算を行っています。

――なるほど。今は定年退職者をめぐる環境も大きく変わってきていますから、早めの準備が必要というわけですね。

企業サイドからすれば、ライフプランセミナーの前倒しは、「50歳になったらそろそろ、自分のセカンドキャリアのプランニングをしておいてほしい」という意思表示でもあります。

私が新入社員だった1980年代には、ほとんどの企業が55歳定年制で、入社したら定年まで勤め上げるのが一般的でした。それが、2021年4月に高齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業機会確保が努力義務になり、本人が希望すれば70歳まで会社で働くことができる時代がやってきます。半面、今は早期退職制度がありますし、定年後も継続雇用や再雇用を選んだり、起業したり、フリーランスとして働いたりと選択肢が広がっています。老後の生活の柱となる公的年金の受給開始年齢も、今後は60歳から75歳の間で選べるようになります。

定年後についてはキャリアと生活の両面から考えていく必要があり、そういう意味でも早めの準備が欠かせません。50歳からの10年間で、しっかり準備しておこうという話です。50歳でのアクションが、定年後の人生にとって非常に重要になりますね。

――定年準備のキーワードは50歳ということですね? 鈴木さんの口からそういう言葉を聞くと、説得力があります。ライフプランセミナーでは、具体的にどんなことをお話しされているのですか?

最初は「不安の共有」から始めることにしています。企業の研修は嫌々参加している人も少なくないので、スタート時点で受講者に自分の定年後への危機感を持ってもらう必要があります。人生100年時代ですから、老後の生活にはそれなりのお金がかかります。一方で、今の収入がずっと担保されるわけではありませんよ、という具合です。2019年に「公的年金だけでは老後資金が2000万円足りない」問題が大きく取り上げられたことで、だいぶやりやすくなりました。

しかし、気を付けなければならないのが、情報を得ることが大切な半面、その情報に踊らされてはいけない、ということです。先の「2000万円足りない」問題で、老後の生活費の算出根拠となったのが総務省の「家計調査」です。「夫65歳以上、妻60歳以上の無職夫婦世帯の標準生活費」を見ると、例えば月々の住居費は、ここ数年、1万3625円~1万7500円で推移しています。

調査対象となった今の60代のご夫婦に持ち家の方が多かったためと推測されますが、賃貸住まいの方はもちろん、持ち家であってもご自宅がマンションの場合は管理費や修繕積立金の支払いが毎月必要ですから、到底この水準では収まらないですよね? 都市部か地方かによっても大きく異なります。このように、“他人事”の情報ばかりを集めても、実際にはほとんど役に立ちません。集めた情報は“自分事”に落とし込んでいく必要があります。

――おっしゃる通り、“他人事”の情報で「老後資金が足りない!」と大騒ぎしても意味がないですね。“自分事”に落とし込むために、セミナーではどんな方法をアドバイスなさっているのですか?

私が受講者に勧めているのが、「お金の棚卸し」です。

まずは、現在の家計の収入と支出を「損益計算書(PL)」にまとめてもらいます。さらに、現時点での資産(預貯金・有価証券・保険・不動産など)と負債(住宅ローン・教育ローン・自動車ローンなど)の額から定年時の評価額を割り出し、老後に予定される支出(老後の生活費・自宅のリフォーム費用・子どもの教育資金・子どもの結婚援助資金・旅行資金など)を予想して、「賃借対照表(BS)」を作成するのです。

BSまでたどり着けば、“自分事”の老後がかなり具体的な形で見えてきます。しかし、セミナーでこれをやろうとすると、最初の家計の把握からつまずいてしまう受講者が多いのです。受講者が50人いるとしたら、家計簿を使っているのはせいぜい2人くらい。恐らく、読者の皆さんも大半の方が家計簿を付けていらっしゃいないのではないかと思います。

50歳になると、会社でもキャリアを積んで、若い頃より給与もぐんと上がっている方が多いはずです。そういう方ほど“ザル家計”になりがちで、だからこそ家計簿を使って家計管理を行う習慣を付けておく必要があります。今は電子マネーでほとんどの支払いに対応できますから、家計簿の記帳もラクになっています。何より、「お金の棚卸し」の第一歩はそこから始まるのです。

***

後編「定年までの「あと10年」でできる!“老後破産”の回避策 」に続きます。

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著者

森田 聡子 金融ライター/編集者
森田 聡子
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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