iDeCoの受け取り方、分割ならプロのおすすめは定額よりも「定量」解約
セミナー講師が伝えたい マネープランのツボ 4

iDeCoの受け取り方、分割ならプロのおすすめは定額よりも「定量」解約

  • 公開日:2020.12.15

Editor's Eye

「自分がもらえる年金、月にいくらかご存知ですか」。人生100年時代、大多数の人に関係し、「もらえる」というポジティブな情報でありながら、即答できる人はほとんどいません。しかし、おさえるべき知識を身につけておけば、リタイア後に向けたマネープランはもっとスムーズに、自分の思う通りに組めるはず。証券会社に所属し、企業等の従業員にライフプランや資産形成のセミナー講師を務める小出昌平氏が、マネープランのよくある疑問について連載で解説します。第4回では、いざ老後を迎えてからiDeCoを分割で受け取るときの手法について考えます。やり方としては、金額を決めて受け取る「定額」か、売却する数量を決めておく「定量」の2択になるわけですが、どちらにもメリット・デメリットがありそうです。

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は税制メリットがとても大きい制度で、掛け金を拠出するときだけでなく、受け取るときも、一時金だと退職所得控除、年金だと公的年金等控除という税金の負担を減らす仕組みがあります。現状では一時金を選ぶ人が圧倒的に多く、なんと89%の人がiDeCoを一時金で受け取っています(厚生労働省社会保障審議会企業年金・個人年金部会 参考資料1「企業年金・個人年金制度の現状等について」P20(2020年9月30日)より)。

なぜこんなに一時金を選ぶ人が多いのか? 税制の違いを指摘する向きもありますが、私は「いま、iDeCoを受け取る人のほとんどを自営業者か企業年金のない会社員が占めているから」という理由もあると思います。退職金代わりにiDeCoを利用していた人たちが、今、一時金で受け取っているというわけです。

しかし、公務員や企業年金のある会社員も、2017年からiDeCoを利用できるようになりました。退職金は別にあるので、これを機にiDeCoを始める人たちの目的は、60歳以降の給料や公的年金の補てんという意味合いが強いでしょう。ですから、今後はiDeCoを年金で受け取る人が徐々に増えると思います。

iDeCoを年金で受け取るときは、「取り崩しながら運用する」ことが必要になります。でも、今時点では年金で受け取る人が少ないので、セミナーで説明することはあまりなく、セミナーが終わった後にたまに紹介することがある程度です。

この「取り崩しながら運用する」とはどういうことなのか? セミナー終了後の個別質問のシチュエーションでご説明しましょう。それはまだ「流行っていない」考え方ですが、iDeCoを年金で受け取る人が増えるにつれ、徐々に広まっていくはずです。

***

参加者
ちょっと質問があるのですが……。

講師
いいですよ、何なりとどうぞ。

参加者
私は勤め先から退職金が出るので、iDeCoは年金で受け取るつもりです。その場合、iDeCoの運用をやめることになるのですか? それとも、運用を続けることになるのでしょうか?

講師
年金だと、「取り崩しながら運用する」ことになります。
一時金でiDeCoの残高を受け取ったら、当然ですが運用をやめることになりますが、iDeCoでは、積み立てることができなくなった後でも運用を続けることができます。

参加者
「取り崩しながら運用する」んですか? セミナーでも聞かなかった話なので、イメージが湧かないのですが……。

講師
いや、おそらく、すでにご理解されている知識で分かる話だと思いますよ。ドルコスト平均法のことは、セミナーで理解いただけましたよね?

参加者
はい、それは分かります。
iDeCoでは原則、毎月定額で積み立てるので、安いときはたくさん買うことに、高いときは少ない量しか買わないことになります。値動きのある投資信託で積立投資を続けると、買付単価が平準化されて、儲かりやすくなる、あるいは損をしにくくなる。これがドルコスト平均法のメリットですよね。

講師
そのとおりです。よく理解されてますね。ドルコスト平均法とは、「積み立てながら運用する」ときのコツであり、「安く買う」の次善策になるということですね。

参加者
そうでした、思い出しました。投資の大原則は「安く買って、高く売る」ですが、常に「安く買う」のは難しいから、その次善策がドルコスト平均法だという話でしたよね。

講師
そうです。では、今度はiDeCoをドルコスト平均法で「取り崩し」ていくとどうなると思いますか?

参加者
定期的に定額で、例えば、毎月5万円ずつ取り崩していくってことですよね。
年金で受け取るとき、定期的に定額で取り崩すと、えーと……安いときにはたくさん売って、高いときは少ない量だけ売ることになると思います。

講師
そうですね、そうなると思います。でも、安いときにたくさん売ってしまうのって、何だかもったいない気がしませんか?

参加者
確かにもったいないですね。安いときに売るのはただでさえ嫌なのに、たくさん売ることになってしまうなんて……。

ただ、いつ高くなっていつ安くなるのか、それが分からないからこそドルコスト平均法が有効だって、そう説明していたのは先生じゃないですか!

講師
いやいや、そんなに興奮なさらなくても……。「正解」にだんだん近付いてきていると思いますよ。頭を冷やしがてら、ヒントを差し上げましょう。
そもそも、「安く買う」と「高く売る」って、得をするという点こそ同じですが、逆のことではないでしょうか? 
そうなると、「安く買う」の次善策がドルコスト平均法なら、「高く売る」の次善策は……なんでしょうか?

参加者
あっ、分かりました! 「高く売る」の次善策は、定期的に「定額」で積み立てるドルコスト平均法の逆……定「額」じゃなくて、定「量」で取り崩せばいいんじゃないでしょうか。定期的に同じ「量」を売ることにすれば、価格が安い月が続いて、思ったよりも早く運用資産がなくなってしまう、といったことも起きません。

講師
よくたどり着きましたね、その通りです。取り崩しながら運用するのであれば、運用資産はなるべく長く“延命”できたほうがいいですよね。そのため、コツは定期的に定「量」で売却する点にあり、それが「高く売る」の次善策になるわけです。いわば、ドルコスト平均法の「逆」といったところでしょうか。

参加者
「逆」がポイントなんですね。ようやく理解できました。でも、定「量」で売ると、価格が安いときには売却金額が少なくなり、価格が高いときには売却額は高くなって、毎回、受け取る金額は違ってきますが……それってどうなんですか?

講師
もっともなご指摘ですね。価格変動によって受け取れるお金が違ってくるのは困る、使い勝手が悪い、という人も多いかもしれません。
でも、そもそもiDeCoを年金で受け取るってことは、他に定期収入があることが前提です。ですから、iDeCoは定期収入の補てんとして、生活費のプラスアルファやバッファーとして考えてみてはどうでしょうか。

参加者
なるほど……。老後資金の柱ではなく、副次的な収入源としてiDeCoを考えるのであれば、定期的に定「量」で売るのもアリですね!

***

一般的には「iDeCoの受け取りは一時金で!」が定説ですが、その理由は一時金と年金とで受け取るときの税制が異なるからです。しかし、今後は徐々に、iDeCoを年金で受け取る人が増えるでしょう。そうなれば、「取り崩しながら運用する」という考え方が注目されるようになるはずです。

今まであまり聞いたことのない考え方だからといって、難しく考える必要はありません。なぜなら、「取り崩しながら運用する」のは「積み立てながら運用する」の逆、つまり、ご説明したようにドルコスト平均法の逆を考えればいいからです。ちょっと禅問答のような話ですが、そんなiDeCoの運用の考え方を、ひとつずつ、一歩ずつ、微力ながら広めていけたらと思っています。

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著者

小出 昌平 大和証券 ライフプランビジネス部 担当部長
小出 昌平
1993年4月大和証券入社。投資信託の開発や富裕層ビジネスの企画・運営業務などを経て、2015年より確定拠出年金業務に従事。現在は、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金の周知・普及活動に携わりながら、自治体や事業会社の職場における金融・投資教育、ライフプラン教育の支援活動に取り組み中。

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