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ESG投資とはどんな投資手法?メリット・デメリットをわかりやすく解説

  • 公開日:2021.01.06

Editor's Eye

「ESG投資」は、今後投資の主流になると多くの投資家に注目されている投資手法です。ただ、言葉自体を見聞きしたことはあっても、その中身までしっかり理解している人は多くないようです。皆さんもそうではないでしょうか?そこで、「ESG投資」についてシリーズで深掘りしていきます。その第1回目の今回は、「ESG投資とはどんな投資手法なのか?」「一般的な投資と比べたメリットやデメリットは?」などについて、できるだけわかりやすく解説します。

 

そもそもESGとは、Environment(環境)・Social(社会)・Governance(企業統治)の3つの観点を指し、この観点から企業の長期の成長性を評価して投資を行うのがESG投資です。

具体的にはESGへの取り組みを通して評価します。私たちに身近なところで例を挙げると、2020年7月から始まったレジ袋の有料化はESGのE(環境)への取り組みにあたります。プラスチックの使用量を削減し、地球温暖化や海洋汚染を防ぐことが目的ですが、それが企業の成長性、持続可能性にどう影響があるのかといった点を分析するのです。

ちなみに、このE(環境)の分野に取り組む企業への投資を「グリーン投資」と呼ぶこともあります。菅義偉総理大臣が所信表明演説で言及し話題にもなったため、こちらも覚えておくといいかもしれません。

そのほか、以下のような問題に取り組む企業がESG投資の対象になります。

ただし、これらの取り組みを企業の成長性と関連付けて評価するのは難しく、資産運用会社などはその手法にさまざまな工夫を凝らしています。そうした評価、分析を通して、長期に成長できる企業を選択することが、ESG投資の本質だとも言えるでしょう。

ESG投資が広まったきっかけは、2006年に国連のアナン事務総長(当時)が銀行や生命保険会社、年金基金などの機関投資家に対し、ESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則(PRI)」を提唱したことだとされています。

世界が長期的に持続可能な成長を遂げるためにも、環境などの国際的な課題を解決することに積極的な企業に優先して投資(ESG投資)すべきと呼びかけたPRI。さらに、2008年の金融危機「リーマンショック」を経験し、企業が短期的な利益だけを追求する姿勢に批判が集まったことなども後押しとなって、ESG投資は世界的に広まりました。

実際、PRIへの署名者の数、つまりESG投資を行うと約束している機関投資家の数は2006年時点では32でしたが、2020年にはなんと約16倍の521となっています。

出所:PRI(英語サイト)

国内でも、世界最大級の年金運用機関「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」が2015年にPRIに署名し、2017年から本格的なESG投資を開始しています。また、米国最大の公的年金基金「カルパース」も、すべての投資判断にESGを組み込む投資原則を採用しています。

つまり、今やESG投資は国内外の主要な機関投資家の一般的な投資スタイルとなりつつある、というわけです。

なお、ESGとセットでよく使われる言葉に、「SDGs」があります。

SDGsとは2015年9月、国連で採択された「持続可能な開発目標」を指します。より良い世界にするために、企業・個人含めた全ての人が取り組むべき17の目標を設定し、2030年までの達成を目指しています。具体的な内容は、以下の通りです。

SDGs17つの目標

出所:国際連合広報センター

詳しく見てみると、「海の豊かさを守ろう」「ジェンダー平等を実現しよう」などESGに通じた目標も少なくありません。そのため、多くの人がESGとSDGsがどう違うのか混乱しがちです。

わかりやすく両者の違いを表すならば、SDGsは「目標」であり、ESGはその目標を達成するために企業が取り組む「手段」だと言えます。

例えば、紙資源を節約するため再利用を推し進めることは、ESGのE「環境」に配慮した手段であると同時に、SDGsの7番目の目標「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の達成に貢献しているわけです。

またSDGsが投資家に限らず広い人々を対象とするのに対して、ESGは投資の文脈で使われることが多いようです。そのためSDGs投資とは言わずに「ESG投資」と呼びます。詳しくはコチラ(似ているようで異なる「SDGs」と「ESG」—両者の違いと関係)の記事で解説しています。

ここまで解説してきたESG投資ですが、一般的な投資に比べ2つのメリットがあります。

投資と聞くと、お金を増やす手段というイメージが強いかもしれません。しかしESG投資によって、地球温暖化対策や労働環境の改善に取り組む企業に投資を行うことは、間接的に社会貢献にもつながります。

個人が実施できる社会貢献は日頃の節電や節水、マイバッグ持参といった行動に限らず、ESG投資という手段があることも知っておきたいですね。

 

従来の財務情報などを通した分析では、10年、20年といった長期で企業の成長力を測るのは難しいとされてきました。しかし、ESGを重視した経営を行う企業は、長い目で見たときに社会的な価値が高くなることで収益も上がりやすいと言われています。

そのため個人投資家にとっても、一般的な投資よりも長期保有でリターンを得られる可能性は高いと考えられています。

例えばスターバックスは、使い捨てのプラスチック製ストローを全廃し紙ストローを導入しました。もともと同社は発展途上国でつくられたコーヒー豆を適正価格で取引するフェアトレードも実施しており、環境や社会に配慮した取り組みを積極的に行っていたことでも知られています。

その取り組みに賛同する人が増えればスターバックス店舗の利用者も増加し、結果的に企業の利益も向上。そして利益の増加によって、その一部が投資家に還元されるという流れです。

個人投資家にとっても、長期保有で恩恵を享受しやすいと考えられるESG投資。老後資金の確保など、長期での積立投資が前提となる資産形成とも相性が良さそうです。

メリットがあるものにはデメリットはつきもの。ESG投資にもデメリットがあります。

環境問題などESGに関連した課題は、当然のことながら短期間で解決できるものではありません。企業の取り組みにおいても、いかに長期的に続けられるかが問われていますし、その成果が出るのもずいぶん先のことになってしまいます。また、そもそもその取り組みが、企業の利益には直結しないケースもしばしばあります。

そのためESG投資を実践するのは、主に年金基金や保険会社など10年、20年といったスパンで安定的な運用を前提とする機関投資家が多くなっています。あくまでも長期の運用が前提となるため、短期間で利益をあげたいという投資家には、あまり向いていないと言えるでしょう。

一般的な投資に比べ、ESG投資の場合は財務情報のみならず、ESGに関連した取り組みを行っているかなど経営面も調べる必要があります。また、その取り組みと企業の利益とが結びつくかどうかなどリサーチすべき情報が多くなる分、それを個人投資家が調べるのは負担が大きいと言えます。

ここまで、ESG投資とはどんな投資手法なのか、そのメリット・デメリットについて解説してきました。では、個人投資家がESG投資を実践するには、どうしたらいいのでしょう?

デメリット2で紹介した通り、個人投資家が企業のESGへの取り組みまで調べるのはハードルが高いと言えるでしょう。さらには、何度か指摘しているように、ESGへの取り組みと企業の利益は直結しない可能性もあります。

そのため、「たとえ利益が得られなくても、この企業を応援したい」といった場合でなければ、個別企業に投資する株式投資よりも、投資信託などを購入したほうが取り組みやすいでしょう。

ESGに関連した投資信託であれば、運用のプロが企業をESGの観点から評価した上で、投資先を選定してくれます。しかも、さまざまな企業に分散して投資する形になりますから、個別株への投資と比べてリスクも低くなります。

長期の運用が前提となるため、資産形成の手段としても相性が良いESG投資。リターンを目指すだけでなく、社会貢献の手段としてもぜひ実践してみませんか。

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Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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