相続資産7000万円で投資デビュー 独学で「安定運用」は可能?
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

相続資産7000万円で投資デビュー 独学で「安定運用」は可能?

  • 公開日:2020.12.29

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線で資産相談に応じると言われるIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)。実際に、彼らは相談者に対してどんなアドバイスをしているのでしょうか。IFAが印象深かった相談内容を振り返るシリーズ連載第14回では、本社富山のほか、各地に「投資信託相談プラザ」を展開するIFA法人、Fan名古屋支店の室田健次さんのアドバイスを紹介。YouTubeなどで情報収集をするも、自分に合ったやり方なのか分からないという相談者に、「迷いが生じたら、プロのアドバイスも活用してほしい」と室田さんは伝えます。

今回は、相続した預金の運用方法について相談を申し込まれた鈴木高志さん(仮名、50)の例をご紹介します。

相談者:
鈴木 高志さん(50) 会社員

ご家族:
妻  康子さん(50) パート
長女 有紀さん(18) 社会人

(いずれも仮名)

鈴木さんは投資経験こそないものの、税金等の知識が豊富で、相談前には自身でYouTubeや書籍で運用方法をリサーチし、親から相続した資産をさらに増やそうとYouTubeで紹介されていた個別株を購入したそうです。しかし、まとまった金額を投資したために日々の値動きが気になり、元本が減っていくことにも不安を感じていたといいます。そんな折、証券会社のウェブサイトで弊社のセミナー情報を見かけて参加され、その場で相談のご予約を取られていきました。

鈴木さんは現金だけでなく、株式や投資信託、不動産などの資産について親から相続していましたが、特に現金部分に当たる8000万円の運用方法に頭を悩ませているご様子。

ご自身で収集した情報だけでは、自分に合った運用スタイルは何なのかを決断できなかったそうです。とはいえ、いろいろと調べていく中で知った「安定した運用には『積立投資』が有効だ」という情報は信頼できる、と感じていたそうで、一括投資は鈴木さんの選択肢にありませんでした。

確かに、積立投資は時間分散によってリスクを軽減できるので、長期的に見れば安定した運用成果が期待できます。最近では「とにかく積立投資だけやっておけばOK」などと説明されることも多いのですが、万人にメリットがある手法というわけではありません。特に鈴木さんのように多くの預金を持つ方であれば、一括投資であっても債券などの比較的リスクの低い資産なら安定した運用で効率的にお金を増やすことができます。

積立投資は、投資に回せるお金が少額で、投資にかけられる期間が長い場合にはメリットが大きい一方、当然ながら初期の投資額は小さく、得られるリターンも小さくなってしまうのです。時間分散以外にも、安定運用を実現させるアプローチはいくつかあります。資産状況によっては、資産配分(アセットアロケーション)によってリスクを軽減していく選択肢もあります。

こうした点をご説明した上で、購入方法は一括投資で、投資する資産は債券を中心に構成するのがよいのではないかと提案しました。鈴木さんはうなずいた後、「実は、海外ETFの積立にも興味があって……」と語り始めました。

なんでも、YouTubeで「海外ETFの積立投資」がリスクの低い投資手段として紹介されており、強く興味を惹かれたそう。どんな銘柄がいいかも調べてきており、高配当のETF「iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF(HDV)」と「SPDR S&P 米国高配当株式 ETF(SPYD)」の購入を考えていたといいます。

話を聞いていくうちに、積立投資に惹かれた理由も「毎日、一喜一憂しなくていいところ」に魅力を感じていたということから、鈴木さんのリスク許容度は決して高くなく、目指すべきリスク水準は年率10%程度ということが分かってきました。

投資先の資産クラスが株式であれば、債券と比べるとリスクは当然高くなります。そのため、許容リスク水準を踏まえ、債券(劣後債)を5000万円分購入、3000万円の預金は現金としてそのまま残し、海外ETFについては購入していただいた劣後債の利息の範囲内で、一括投資ではなく積立購入という提案をしました。

具体的には「アクサ3%」「アンリツ4.5%」「プルデンシャル4.5%」という3銘柄の劣後債を、合計5000万円分ご購入になりました。劣後債の利回りは平均すると約4%程度ですので、年間で160万円(税引き後)程度を利息として受け取れる計算です。

海外ETFの購入には、その160万円の一部を充てていただきました。ただ、海外ETFの分配金は、現地で1割程度、国内で2割ほどの税金が差し引かれてしまいます。分配金が出ると再投資に回せる金額も少なくなるため、資産はあまり大きく増えにくい。そのため、銘柄としては当初希望されていた高配当のものではなく、配当の回数や金額が少ないながら長期的な成長を見込める「バンガード S&P500ETF(VOO)」を提案しました。

これに加え、海外個別株への投資も少額で、趣味の範囲で続けていきたいとのご意向でした。相談前は値動きの大きさに悩まれていたということもあって、あくまでも利息の範囲内で行ってもらうことにしました。

なお、相続した株式については基本的に王道とも言える大型株で、投資信託も現状のパフォーマンスが良好でしたので、こちらは相談前と変わらずに保有し続けてもらうことにしました。

鈴木さんには、半年に一度の面談でアフターフォローをしていますが、これまでのように「預金からいくらを投資に回せばいいのか」と頭を悩ませる機会も減り、以前ほど株価の変動にストレスを感じにくくなったようです。さらに、「これまでは不動産収入だけだったが、債券の利息という収入の柱が増えて安心した」といったお言葉もいただきました。

最近は書籍だけではなく、これから値上がりする株の銘柄紹介や、「初心者はインデックス型なら安心して投資できる」といった初心者向けのYouTubeを見て投資に興味を示す方も増えてきました。若いお客さまに限らず、40〜50代の方についても情報を得るツールがYouTubeなどへと変わってきているように感じます。

ただ、そうした方の話をお聞きしてみると、事実と異なる解釈を生んでいるケースも少なくありません。例えば「なぜ、積立投資なら、リスクを軽減できるのか?」といった理屈を理解しないまま積立購入を行っても、暴落時にすぐに売却してしまうような事態になりかねません。

もちろん、YouTubeなどのオンデマンド動画サービスは手軽に利用しやすく、「知るきっかけ」として有効なツールであることは間違いありません。しかし、鈴木さんのように、ご自身で学んだものの、その方法が自分自身に合っているのか悩む人も多いと考えています。

今後もそうした方に、正確な情報に基づくご提案とアフターフォローを通じ、ご本人が安心して投資を続けられるよう投資アドバイザーとしてサポートしていくのも、IFAの役目の一つだと感じています。

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著者

室田 健次 Fan IFA
室田 健次
大学卒業後、東証一部上場の証券会社へ入社。社長賞・優秀賞など10期連続で受賞。これまで富裕層を中心に1000名以上の顧客へ資産運用コンサルティングを経験。2019年に退職し、顧客ファーストでアドバイスを行えるIFAに転身。名古屋に支店を新規開設し、東海地方を中心に活動中。

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