企業型DCの商品選び、バランス型かインデックス投資か?
みんなの資産運用相談【DC編】

企業型DC、何を選べばいい? ファンドアナリストの篠田尚子さんが指南

  • 公開日:2021.01.07

Editor's Eye

資産運用にまつわるお悩みにプロが回答するシリーズ。今回は、企業型確定拠出年金(DC)に加入してはいるものの、「どんなファンドを選べばよいのか分からない」と迷うアラフォー会社員男性が登場。楽天証券経済研究所のファンドアナリスト篠田尚子さんに明快なアドバイスをいただきました。

【青田裕大(仮名)さんプロフィール】    
37歳、神奈川県在住の化学メーカー営業マンで、2年前に結婚した栄養士の妻(33歳)と二人暮らし。勤めている会社が企業型確定拠出年金(DC)を導入したことをきっかけに、資産運用に興味を持つ。しかし仕事が忙しく、積極的な運用はできていない状態。

【寄せられたお悩み】
「会社が企業型DCを導入しています。資産運用に興味はあるのですが、正直、仕事が忙しすぎて運用について勉強する時間があまりありません。DCもとりあえず定期預金を選択したままですが金利は雀の涙ですし、やはり少しでも積極的に運用したいという思いが募ってきました。そこで投資信託を考え、詳しい同僚に聞いてみたところ、バランス型と、自身でインデックスファンドを組み合わせる方法とのどちらかにしたら良いのでは?と言われました。両者の特徴を教えていただき、私のようなビギナーにはどちらが向いているかを教えてください」

【お悩みの論点】
①会社が企業型DCを導入しており、積極的に運用したいが、バランス型の商品を選ぶか、自身でインデックスファンドを組み合わせて運用すべきか迷っている。
②投資信託に興味があるが、仕事が忙しすぎて運用に関する勉強ができない。

【資産状況や月々の収支内訳】
世帯の金融資産額(運用中の投資額と預貯金を合わせた金額):300万円
内訳
預貯金:300万円

収支
<収入>
・世帯の毎月の手取り収入:50万円  
・手取りの年収:600万円 
             
<支出>
50万円(詳細以下)

※1 新築賃貸マンションのため相場より若干高めです。

※2 栄養士の妻は料理上手で自炊が得意なので低めです。

※3 妻が栄養士から管理栄養士にステップアップするために始めた通信教育の費用です(月額換算)。

※4 各自3万円ずつ。交際費はお互いここから出しています。

※5 健康と節約のため、やめたいのですが…。

※6 マイホーム購入に向け、貯蓄中です。

 

***

青田さんは現在37歳、DCではあと30年ほど運用することになるので、今後の資産形成を考えると可能な限り早く運用を始めていただきたいですね。企業型DCで続けても、のちにiDeCoに移換したとしても、積み立てた資産は原則60歳まで引き出すことはできません。また、現行60歳から70歳の間で選択可能な受給開始年齢は、近年中に60歳から75歳まで拡大されることが決まっています。

1つ目のお悩みは「企業型DCでどのような商品を選んだらよいか」で、バランス型ファンドとインデックスファンドの組み合わせかで迷われているようですね。ここで注意していただきたいのは、企業型DCのバランス型ファンドのラインアップは制度の導入時に採用された古いタイプの商品が多いことです。

特に債券比率が高いものには気を付けてください。例えば、〇〇バランス30、50、70といった、いわゆるライフサイクル型ファンドの中でも、30のような株式の比率が少ないタイプは、今の足元の金利環境を考えるとコスト水準も含めてやや時流に合わないと言わざるを得ません。

そこで企業型DCでは、ご自身でインデックスファンドを組み合わせることをお勧めします。インデックスファンドであれば古いものでも商品性にそれほど変わりはありませんし、もともとDCではコストが低く抑えられています。

では、具体的に何を組み合わせるかですが、青田さんの場合は長期投資が前提となるため、基本は株式だけで十分だと考えられ、国内と海外の株式を半分ずつ保有するのがいいでしょう。具体的には、日経平均株価かTOPIX(東証株価指数)に連動するインデックスファンドと、日本を除く先進国の株式、または日本を除く全世界の株式の指数に連動するインデックスファンドの組み合わせ。おそらくどこの企業のプランでも、これらのいずれかはラインアップされているはずです。

インデックスファンドを組み合わせる場合、次に問題となるのが定期的なリバランスです。それぞれの時価が変動して半々だった比率が変化してしまうため、一方を売却、一方を追加購入するなどして比率を修正します。企業型DCの導入時教育でもその重要性を教わっているかもしれません。

リバランスはもちろん重要ではありますが、少なくともDCにおいては、そこまで厳密かつ定期的にリバランスを行う必要はないと個人的に考えています。むしろ「ほったらかし」にしていてもいいくらいで、見直すとしたら、お子様の誕生や転職などでライフプランが変わるタイミングでいいでしょう。

というのも、現実には、頻繁に値動きをチェックし、ベストなタイミングでリバランスを実施することは極めて難しいためです。例えばリーマンショック、あるいは最近もコロナショックがあったように、マーケットの急落は定期的に訪れるものだからです。そうした際に、評価額がマイナスとなって慌てて売却したりしてしまうのは、最悪の選択と言っても過言ではありません。これまでショックがあってもマーケットは回復してきたわけですが、運悪く下落時に売却してしまうと、その後の上昇による恩恵を受けられません。

また、そもそもDCの資産だけで運用のポートフォリオを考え、リバランスしてもそれほど意味はありません。やはり導入時教育で、資産をバランスよく持ってくださいと教わるケースも多いでしょうが、あくまで保有資産全体で考えることが重要なのです。

だからこそ、バランス型ファンドについてはDCにこだわらず、それ以外の口座で保有するのも一案です。先述の通り、企業型DCプランで用意されているバランス型は古いタイプであることが多いです。加えて、青田さんはマイホームの購入のために貯蓄していらっしゃるとのことですが、手取りの世帯年収に対して金融資産額がやや少ない印象もあります。ですから企業型DCの他にももう1つ2つ、資産形成の器を作ったほうがいいですね。

お勧めなのはつみたてNISAで、例えば国内外の株式と債券という4資産に均等に投資する、シンプルなバランス型ファンドで積み立ててみてはいかがでしょう。貯蓄している金額の一部を振り分け、奥様のつみたてNISAの枠と合わせてお二人で月額6万円ほどの積み立てを検討されてもいいと思います。

2つ目のお悩みですが、資産運用については“勉強”と気負わず、コツだけを押さえてくだされば十分です。DCのような積み立てのメリットは、マーケットが下がったときにもきちんと買い続けられることです。しかも、下落時には投資信託の口数を多く購入できるので、基準価額が戻りきらなくても評価額は回復する。これがいわゆるドルコスト平均法のメリットで、長期運用の最大のポイントです。この点を一度マスターしておけば、つみたてNISA はもちろん、特定口座など課税口座での積立投資も抵抗なく始められるはずです。

また、勉強する時間がないとのことですが、このコツだけ押さえていただければ、あまり考えすぎなくてもいいでしょう。例えば企業型DCで国内株と海外株のインデックスファンドを持っていれば、値動きの違いが分かるようになってきます。あるいは海外株と比べると、国内株が劣後して見えるかもしれませんが、その段階で初めて“勉強する”ことを本格的に考えてもいいのではと思います。

青田さんには積極的に運用されたいという気持ちがあるようですから、勉強を始めると、さらにアクティブファンドを購入するという選択肢も出てくるかもしれません。そこでお伝えしたいのが、アクティブファンドを選ぶ時の考え方。結局は、インデックスより高いリターンがほしいか、リスクを抑えたいかのどちらか2つで、青田さんの場合はおそらく前者になるでしょう。その際、ファンド選びのポイントになるのはシャープレシオ(効率係数/運用効率を表す指標)を見ることで、この局面になればもう一歩踏み込んだ勉強が必要になってきます。

もっとも、企業型DCプランで用意されているアクティブファンドはバランス型と同様に古いタイプが多く、つみたてNISAも対象商品が少ないので、アクティブ型を保有するなら課税口座がいいでしょう。そうすると企業型DC、つみたてNISA、課税口座という3階建てになりますが、願わくは、そこまでチャレンジしていただきたいですね。もちろん同時進行でなくても、段階を踏んで始めていただければ大丈夫。この時点で海外と国内の資産を組み合わせたポートフォリオができていますし、すでに資産形成で踏むべきステップは十分にクリアしているわけですから。

***

最後に、老後の備えの目安となる金額もお伝えしておきます。フィデリティ・インスティテュート退職・投資教育研究所の調査によれば、「退職直前年収の7倍」(年収の2倍と設定した退職一時金を除く)を退職時点での必要額の目安としています。年齢的にも現在の貯蓄額からも、青田さんには可能な限り早く資産形成を始め、もう少し頑張っていただきたいというエールを送りたいですね。

 DCは税制面のメリットの多い制度で、今やグローバルスタンダードにもなりつつありますから、資産形成のベースとして、ぜひ積極的に活用してみてください。

 

 

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著者

篠田 尚子 楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
篠田 尚子
慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【最新版】本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』(SBクリエイティブ)。

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