長期分散投資の“生き証人” 12年で4000万円貯めた30代女子
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

長期分散投資の“生き証人” 12年で4000万円貯めた30代女子

  • 公開日:2021.01.28

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線で資産相談に応じると言われるIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)。実際に、彼らは相談者に対してどんなアドバイスをしているのでしょうか。IFAが印象深かった相談内容を振り返るシリーズ連載第16回では、千葉・幕張のIFA法人FPブレーンの代表を務める岩川昌樹さんに、投資のアドバイスをした直後にリーマンショックに襲われたという“最悪のタイミング”での相談事例を語ってもらいます。

今回はシングルの看護師、三雲さやかさん(32、仮名)の例をご紹介します。

三雲 さやかさん(32、仮名) 看護師

神奈川県在住

※年齢・居住地とも相談当時

三雲さんが初めて当社に問い合わせをしてきたのは2008年のことです。32歳とお若いながらも看護師として着実にキャリアを積み、年収は550万円に達していました。普段の生活も質素で毎月コツコツと貯蓄しており、1300万円もの預貯金を築いていました。ここまで貯まってくると、金利がほとんどつかない預貯金に置いておくのはもったいないと思うようになったそうです。

そこで投資について調べ始めたものの、「難しそうな上、なんだか怖くて自分では無理」と感じました。なにしろ当時はNISA(少額投資非課税制度)などの制度はないし、そもそも普通の人が投資をするのは今ほど一般的でなく、情報も限られていました。当社では当時から、長期・分散投資を基本とする生活者向けの投資情報をホームページで発信していたため、三雲さんはインターネット検索で当社にたどりつき、相談の申し込みをされました。

当社では相談にいらした方に、「投資」を正しく捉えていただくために、必ず3つのレクチャーをしています。公的年金が株や債券に投資している理由、そもそも投資とは何なのかということ、そして金融機関の正しい使い方についてです。

「投資はギャンブルと変わらない」と考える人もいるようですが、現実には公的年金の積立金もほとんどが株や債券で運用されています。なぜ、大切に守るべき公的年金がリスク運用されているのかといえば、資本主義経済が続く限り、長期的には経済は成長し続け、株価も上昇していくからです。

株式会社が存続していくためは、自社はもちろん、取引先や顧客、そして株主に利益をもたらし続ける必要があります。資本主義経済の大原則は企業がステークホルダーに利益をもたらすことそのものにあり、一時的には停滞することはあっても、長期的には必ず成長するものなのです。この資本主義社会が続く限り物価は上昇していくので、現金の価値は実質的に目減りしていきます。デフレに慣れ切ってしまった日本人にはピンとこないかもしれませんが、インフレは突然やってくるものです。大切な資産を守るために、資産の一定割合を平時から株や債券で保有しておく必要があるのです。

ただ、そう言うと「じゃあ、何を買っても長期で保有すれば上がるの?」と聞かれますが、数ある投資対象の中から1つ選んで投資すると、それが一時的な下落であっても、持ちこたえきれません。では、世界中の資産を丸ごと買えばどうでしょう? どれかが一時的な下落に見舞われても、他の資産が下落していなければ回復を待つことができ、時間が解決してくれるわけです。「分散投資」が広く勧められているのは、この“当たり外れがなくなる”効果を狙ってのことでしょう。

「金融機関の使い方」については、「最も安全なお金の置き場所は銀行預金」だと多くの人が誤解しています。しかし銀行が破綻した場合、ペイオフの制度で守られる預金は1000万円までで、それ以上の金額を預けている場合はどうなるか分かりません。一方、証券会社は顧客から預かった財産と証券会社自身の財産を分けて保管することが義務付けられています。そのため、預けている現金や資産は全額守られます。加えて、インフレ対策という意味でも、長期的に見れば減価してしまう預金のまま銀行に置いておくことが「安全」とは言えないのです。

銀行(預金)は生活防衛資金や使い途が決まっているお金を置く場所、証券会社は将来のために育てるお金を置く場所、それから保険は、保障機能を使うための預け先と考えるべきだと私はお伝えしています。

こうした話に三雲さんは納得されたようで、自分も世界中の資産に丸ごと投資をしてみたい、と言いました。そこで1300万円の預貯金うち300万円を生活防衛資金として残し、1000万円を投資することにしました。生活防衛資金とは、万一病気などで働けなくなったり予期せぬ出費に備えるお金で、生活費の1年分ほどを充てるのが理想です。堅実な彼女の場合、300万円もあれば十分暮らしていけるので、この額で設定しました。

世界分散投資を実践するには、投資信託が最適です。成長資産である株を6割、安定資産である債券を4割とし、さらに投資先地域を世界に分散していくことで安定した成長が期待できます。具体的には国内株式を10%、先進国株式を40%、新興国株式を10%、先進国債券を30%、新興国債券を5%、外国REITを5%の割合で保有できるよう投資信託を組み合わせました。さらに、同じ割合で月に8万円の積み立て投資も設定しています。これまで貯蓄に回していた月収の一部も、投資に充てることにしたのです。

ところが、これらの投資信託の買い付けを終えた直後、悲劇が起こりました。「100年に一度の金融危機」と言われるリーマンショックが襲い、彼女の大切な1000万円の評価額は500万円にまで半減してしまったのです。

当時は世界中の株価が下落した上、本来は株価と逆の値動きをするはずの債券も下落、さらに円高の影響で日本円換算での価値はさらに下落するという、投資家にとっては悪夢のような事態が起こっていました。結果的に、三雲さんはリーマンショック直前の最高値付近で大切な1000万円を投資し、ショックの直撃を受ける形になってしまいました。

株価や債券価格は、短期的には下方変動し得るものです。三雲さんのポートフォリオの場合、上にも下にも28%程度は動く可能性はあるので、1000万円が一時的に700万円程度まで値下がりすることも十分あり得る、と事前にお話していました。しかし、なにしろ100年に一度の事態ですから、下落幅は事前の想定をはるかに上回るものとなりました。

勇気を出して投資を始めた直後に資産を半減させてしまった彼女のショックたるや、相当大きかったに違いありません。それでも、「変動するってこういうことなんですね」と取り乱すことなく、私の事前のレクチャーを思い出し、冷静に受け止めようとしていました。

メディアなどでは「投資で安心な老後を目指そう」などと資産運用の有利な面が強調されることが多いのですが、実際にはつらい時も必ずあります。

私はいつも、こうした局面が起こり得るということは事前に口酸っぱく伝えています。「イケメンがたくさん来るよ!」と言って合コンに誘えば、女性はたくさん集まるかもしれませんが、ガッカリする人も多いでしょう。投資はいいことばかりではないことを事前に十分理解してもらうことは、長く続けてもらう上でとても重要だと考えています。

投資直後に暴落の洗礼を受けることになってしまった三雲さんには、資本主義の仕組みを改めてお話しし、決して投資をやめてはいけない、と根気強くアドバイスし続けました。三雲さんに限った話ではなく、毎月お客さまにお届けしているメルマガでも同じ内容を伝え続けています。

彼女が初めて投資信託を購入した2008年から現在までの間には投資信託の低コスト化が進んだ上、管理しやすい商品も登場しました。そのため、投資成績を向上させるために商品を入れ替える必要があり、その際、500万円ほどの損失を確定せざるを得ないときもありました。

それでも三雲さんは、あきらめることなく粘り強く投資を続けました。幸い、彼女は積み立て投資も始めていたので、暴落相場の安値を生かした有利な追加投資もできていました。

リーマンショックで落ち込んだ世界中の資産価格は5年ほどかけてようやく回復し、現在はショック前をはるかに上回る上昇を見せているのは周知のとおりです。三雲さんは積み立て投資を平行していたおかげで比較的早く含み損を解消し、保有する投資信託の評価額は現在、4000万円に達しています。積み立て投資を含めた累計の投資金額は約2600万円なので、1400万円の利益が出ていることになります。

大切に築き上げた1000万円が一時は500万円にまで減ってしまった上に、その損失を確定した後でもこの成果です。彼女は「本当に途中でやめなくてよかった。岩川さんのアドバイスを信じてよかった」と言ってくださり、アドバイザー冥利に尽きる思いです。

相談当時は横浜にお住まいだった彼女は現在福岡に住んでいますが、毎年幕張で開催されるロックフェスティバルに合わせて相談に来てくれます。2020年はコロナ禍のためオンラインになりましたが、欠かさず近況を報告してくださいます。「普通預金が貯まってきたので追加投資をしたほうがいいですか?」といったご相談をいただくこともあれば、「最近仕事が忙し過ぎて、ストレスが溜まって……積み立て投資を少し減らして自分のために使いたんですが、どうでしょう?」という話もありました。

収入や必要なお金、そしてご本人の状況はどんどん変わっていきます。こうして毎年、その時に応じたアドバイスを受けられることで安心していただいているようです。現在は仕事量を減らしていて年収が以前より少なくなっていますが、こうした働き方の調整ができるのも、資産運用の成果が支えになっているからなのかもしれません。

投資のスタートがリーマンショック直前という最悪のタイミングだったのに、12年経過したいま、大きな成果が出ているのは、「長期的に見れば資産は増えていく」という点、そして「短期的には下落することも十分あり得る」ことを三雲さんが理解され、投資を続けてきたからです。今後も引き続き、どんな相場にあっても投資を続けられるよう、フォローを続けていきます。

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著者

岩川 昌樹 FPブレーン 代表取締役
岩川 昌樹
大学卒業後、証券会社、生命保険会社経て、2002年独立。翌年、FPブレーン有限会社(現FPブレーン株式会社)を設立。経済の原理に則った独自の投資方法と心理的なサポートにもこだわる。お客さまごとに異なるライフスタイルに応じてオーダーメイドの資産運用プランを提案している。

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