世界最大の年金運用機関「GPIF」 運用方針は個人投資家にも真似できる?
ニュースで目にする金融用語の深層 10

世界最大の年金運用機関「GPIF」 運用方針は個人投資家にも真似できる?

  • 公開日:2021.01.22

Editor's Eye

投資に関心を持つ人ならGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という名前を一度は聞いたことがあるだろう。私たち日本の年金積立金を運用するGPIF、実は運用資産額160兆円超という世界最大の機関投資家である。その豊富な資金力は金融市場を回遊する巨大な”クジラ”とも例えられ、その動向は市場に大きな影響を与える。そんなGPIF、過去約20年間の収益率は年率約3%、その運用方針に個人投資家が取り入れられる手段はあるのか。ファイナンシャルプランナーの吉田祐基氏が紹介する。

年金運用機関「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」が2020年4-6月の四半期に過去最高の運用益 を記録した。日本銀行のETF(上場投資信託)買い入れなど、新型コロナウイルス対策の世界的な金融緩和による国内外の株式上昇が後押しになったという。

ちなみにGPIFとはGovernment Pension Investment Fundの略で、Pensionには年金という意味がある。日本語でペンションというと郊外にある小規模な宿泊施設がイメージされるが、こちらはフランス語に由来する。GPIFに話を戻すと、2001年度から2020年度(第2四半期)までの約20年間で、累積収益額は約74.9兆円、収益率は年率3.09%とプラスの成績をあげている 。運用する資産は160兆円 以上と、2020年度の国家予算である約102兆円 を上回り、世界最大の機関投資家としても知られている。

私たちの年金の財源を増やすために、長期投資を実践するGPIF。その運用手法について、扱う金額の規模が大きすぎるがゆえに、個人投資家にはあまり関係ないと思うかもしれない。しかしGPIFが実践する運用には、私たち個人投資家にも真似できる点がある。

そもそもGPIFとは、公的年金を給付する際の財源の一部となる積立金の管理・運用を行う機関だ。運用によって得た収益は私たちの年金にあてられる。『アフターコロナで投資の常識に! ESG投資が最注目のワケ』の記事でも触れたが、ETFの購入などを通じてESG投資も実践している。

日本の年金制度は、現役世代が納めた保険料をそのときの高齢者に年金として支給する形で運営されている。今以上に少子高齢化が進むと、保険料を納める現役世代はさらに減少する。そのため、将来的に支給される年金が少なくなる可能性が指摘されている。

そういうわけでGPIFには将来に備えてまだ使われていない保険料を積立金として運用し、少しずつ増やしていく役割がある。GPIFが運用する積立金は、あくまでも年金制度を継続させていく資金であるため、長期的かつ安定的に収益を出していく運用方針が求められるのだ。

では、GPIFはどのような運用方針を掲げているのか。まず積立金の運用目標については「長期的に積立金の実質的な運用利回り1.7%を確保するよう、基本ポートフォリオ(保有する各資産の比率)を定め、これに基づき管理を行うこと 」としている。そして、この目標を実現するために「国内債券」「国内株式」「外国債券」「外国株式」の4資産に分散投資を行っている。

個別の資産配分を見ていくと、2013年6月〜2014年10月は「国内債券:60%」「国内株式:12%」「外国債券:11%」「外国株式:12%」「その他(短期資産):5%」という比率だった。つまり投資先の半分以上を一般的に安全資産と呼ばれる国内債券が占めていた。

2014年11月以降からは、「国内債券:35%」「国内株式:25%」「外国債券:15%」「外国株式:25%」と、国内債券の比率が減り、国内外を合わせた株式の割合が50%を占めるようになった。これまでよりもリスクを取りながら増やしていく資産配分へと変更されたわけだ。

さらに2020年4月1日、GPIFが目標とする資産配分は約6年ぶりに改定された。国内債券の比率を25%に下げる一方で、外国債券の比率を25%に引き上げ。つまり4資産に25%ずつ、均等な比率で分散投資を行うことになった。

海外資産の構成比率はこれまでの4割から5割に高まる。日本国債の投資収益が低迷する中、利回りの高い海外の資産比率を高める狙いがあったという。

GPIFの運用方針を見ていくと分かるとおり、4資産への分散投資は関連するインデックス型の投資信託などをそれぞれ購入すれば、個人でも実践できる。その際、「変動した資産の比率を元の25%に戻すのが面倒」と考えるなら、例えば「<購入・換金手数料なし>ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)」「eMAXIS バランス(4資産均等型)」など4資産に均等に投資するバランスファンドの購入も視野に入ってくるだろう。あるいは「iFree年金バランス」など、GPIFのポートフォリオに連動した成果を目指す投資信託もある。

新型コロナウイルスの感染拡大が相場を騒がせた2020年は、GPIFにとっても「過去最悪」と「過去最高」の運用成績を記録した年だった。

まず2020年1-3月期に、約17兆円の損失を計上した。損失の額は自主運用を始めた2001年度以降、過去最悪の記録だった。コロナショックの影響は安定運用を行うGPIFでも避けられなかったわけだ。

一方で冒頭でも触れたとおり、2020年度4-6月期の運用益は過去最高となる約12兆円だった。過去最悪の損失を計上した1-3月期から急回復したといえる。

その理由は金融緩和による世界的な株高が背景にあるといわれる。ただ、2019年12月末に3.4%だった短期資産の比率がコロナショック時の2020年3月末には6%になっていることから、相場急落のタイミングで一時的に流動性の高い短期資産の比率を増やしたことがうかがえる。しかし基本的には、前述した運用方針を守りながら相場の回復を「待つ」ことで、世界的な株価の上昇にあわせてリターンを得られたといえそうだ。

ここから学べるのは、安定運用を行う世界最大規模の機関投資家であっても、株価の変動によって短期的には損失を出したり、逆に利益を得られたりするということだ。だからこそ特に長期の資産形成では、短期的な相場の上下に一喜一憂せずに「続ける」ことが、大きな下落を乗り越えていくために必要だ。

一般論として「株価は循環する」と言われているが、このたびのコロナショックとその後の経過において、GPIFが短期間で出した損失と利益という結果はその証左といえるだろう。

GPIFの運用方針は「長期・分散」というあくまでも王道の手法だ。世界最大規模の機関投資家といっても限られた特別な運用を実践しているわけではない。しかし結果として2001年度から2020年度(第2四半期まで)にかけての長期収益率は年率でプラス3.09%という成績を挙げている。GPIFの運用手法には、個人投資家にも真似できる部分が大いにある。

 

 

この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (4)
  • 難しかった (0)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

著者

吉田 祐基 ライター・編集者
吉田 祐基
各種金融系情報誌の編集・執筆業務を行うペロンパワークス所属。AFP/2級FP技能士。大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。株・投資信託、保険などの編集・執筆を担当。

参考サイト
もっと情報をキャッチ!

あなたに最適なIFA(資産アドバイザー)を見つけるならFinasee(フィナシー)× 資産運用の無料相談窓口

あなたに最適なIFA(資産アドバイザー)を見つけるならFinasee(フィナシー)× 資産運用の無料相談窓口