太陽光、投信、債券…「リスク過多」な分散投資から脱却した60代夫婦
“お金のかかりつけ医” IFAのアドバイス事例

太陽光、投信、債券…「リスク過多」な分散投資から脱却した60代夫婦

  • 公開日:2021.02.16

Editor's Eye

銀行や証券会社等の金融機関と比べ、長期的な目線で資産相談に応じると言われるIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)。実際に、彼らは相談者に対してどんなアドバイスをしているのでしょうか。印象深かった相談内容をIFAが振り返るシリーズ連載、第18回では、東京・新宿のIFA法人バリューアドバイザーズでIFAとして活躍する牧元拓也氏が登場。周りが心配になるほどのお人好し夫婦が目下悩んでいるのが、2000万円もの「太陽光投資」のローン。もうすぐ70歳というタイミングで、老後資金とローン返済のバランスについて相談した夫妻ですが……。

今回は「ローン返済」と「老後に備えた運用」とのバランスをどうすればいいのか悩まれていた、岐阜県にお住まいの近藤千津子さん(仮名、68)の例をご紹介します。

相談者:
近藤 千津子さん(68) 専業主婦

ご家族:
夫  雅治さん (68) 自営業

※いずれも仮名 

近藤さんは既存のお客さまからの紹介で当社を知り、面談を申し込まれました。建設関連の自営業を営む近藤さんのご主人は職業上身体を使うことが多く、いつまで働けるか分からない中で、ローンの返済と老後に向けた資産形成のどちらを優先すべきか悩んでいたようです。

話を聞いていくと、ローンの対象は太陽光発電投資のために購入したソーラーパネル。営業マンにお勧めされ、発電施設を2回購入したそうで、現在のローンの残高は1回目に組んだ分の残債約1300万円と、2回目に組んだ分の残債約700万円の合計2000万円ほど。完済に10年はかかる予定でした。現在68歳ですので、80歳手前まではローンの返済があるわけです。

高額な投資ですから、どんな目的で始めたのか聞くと、どうやら自分から関心を持ったわけではないご様子。実は近藤さんはとても優しい性格の方で「こんな田舎までわざわざ足を運んでくれたから……」と、突然やってきた営業マンを手厚くもてなし、メリット・デメリットの検討もそこそこに契約を結んでしまったようです。太陽光発電投資から得られる収入は毎月約15万円に上るものの、ローンの返済額も同額の約15万円/月と、収益化には至っていない状態でした。

他の保有資産についても確認していくと、証券会社からお勧めされて購入した投資信託や外国債券、そのほか株式などを保有していました。

具体的な内容としては700万円分の投資信託を3本保有しており、1つは国内外の株式や債券を含めてさまざまな資産に分散投資を行う商品。残りの2つは、デンマークのカバード債券(複数の住宅ローンなどを担保として発行される債券)に投資を行う商品と、J-REIT(不動産投資信託)投信を保有していました。

外国債券はロシア通貨のルーブル建てで、為替相場の変動によって価格が変動する商品です。このほかに保有していた個別株式は購入されたわけではなく、「EB債」が償還期限を迎え、株式として交付されたものでした。EB債とは、満期のときに受け取れる金額が株価に連動する債券のこと。債券という性質上、年に1〜2回利息が入ってくる仕組みですが、仮に投資開始時期は株価が100万円で満期のときに60万円まで下がっていると、金銭で受け取る代わりに60万円の価値の株式が戻ってくるという複雑な仕組みです。近藤さんは、はじめは株式よりも価格変動の小さい債券だ、と思って購入したものの、償還されて初めて、手に入るのが現金ではなくリスクの高い株式だったと気付いたと言います。

その方のリスク許容度(どれだけの価格変動に耐えられるか)に合っていれば問題はないのですが、外貨建ての債券もEB債、近藤さんにとってはリスクが高過ぎる商品だったと言わざるを得ません。

このように保有資産を聞いていくと、3400万円ある資産のうち、価格が変動する金融商品に3100万円ものお金を振り分けている状況。建築系の自営業は、ケガや病気がそのまま休業に直結するだけに、会社勤め以上に「働けなくなる状態」に備える必要があるのですが、預金は300万円と総資産の1割にも満たない金額。明らかにリスクを取り過ぎていました。

しかし、リスク商品に大き過ぎるお金を振り分けていることに対し、ご本人はそこまで危機意識を持っている様子がなかったので、大き過ぎるリスクを取っている現状をご説明することから始めました。

今ある全資産、3400万をベースに、「現在の生活を維持していく」「ご主人は70歳で引退する」という前提でキャッシュフロー表を作成すると、単純計算で90歳までに全財産を使い果たしてしまうという試算結果が出てきました。逆に言えば、3100万円の運用資産が少しでもマイナスになってしまうと、90歳まで保たないというわけです。

加えて、近藤さんがソーラーパネル購入のために組んだローンには、住宅ローンとは異なり契約者の方が亡くなったときに返済が免除される団体信用生命保険のようなものが付帯されていません。しかも、電気の買取価格は下降傾向にありますから、契約者であるご主人が亡くなった場合、専業主婦の奥さんがローンを返済し続ける未来がないとも言い切れないでしょう。

さらに、3本保有している投資信託のうち、1つの商品はこれまでの運用実績が年率2.4〜2.5%程度だということが分かりました。一方で、ローンの金利は2.3%。不確実なリスク性商品で2.4%のリターンを目指すよりも、年2.3%の利息負担を解消したほうがよさそうです。完済までの期間の長い700万円分のローンを返せれば、月当たり7万円もの負担減になります。

総資産3400万円という金額の大きさになんとなく安心してしまっていた近藤さんですが、この試算結果を見て、ご自身の状況に危機感をお持ちになったようです。こうした点を説明した上で、ひとまず含み損にはなっていない700万円分の投資信託を売却して預金の比率を1000万円へと高め、2本あるローンのうち、返済期限が先に来る方の1本を完済してはどうかとご提案。近藤さんのご納得の下この方針で進めることとなり、月々のローン返済額は15万円から8万円と、かなり小さくなりました。

この他、結果的に「損切り」にはなりましたが、株式についても一部を売却したり、付き合いで続けていた個人年金保険を解約したりして、生活防衛資金となる現金の比率を向上させていきました。

ただ、今回のご相談には、ご主人が働けなくなった後の将来に備え、運用を通じて老後資金を増やしておきたい、というご希望もありました。

安定した運用でリターンを狙うとき、10年以上の長期で投資期間を取れるなら、世界の経済成長の恩恵を享受しながら年率6%程度のリターンが期待できると言われる「国際分散投資」が王道の手法です。日本を含む先進国、新興国など投資先の地域を分散させながら資産全体のリスクを軽減し、安定的に利益の確保を目指す国際分散の有効性を説明すると、近藤さんにもご納得いただけたようでした。

そこで、保有資産の中でも比較的リスクの高い株式の一部と、ルーブル建ての外国債券を売却し、国際分散投資で実績を持つ「キャピタル世界株式ファンド」を800万円分、購入していただきました。

このファンドについては、一括投資だけでなく月10万円の積立投資も並行して実施されています。仮に相場が大きく下落した場合、一括投資であればその影響を直接受けてしまいますが、積立投資なら数量を多く購入することになり、その後の回復局面でより大きい成長が期待できます。世界への分散投資だけでなく、積立という、時間を分散するアプローチによるリスク軽減についても提案し、ご理解いただいた結果です。

近藤さんは、私に相談していて「証券会社もIFAも私たちから見ると同じ金融のプロなのに、なぜここまで言うことが違うのか」と感じたそうです。今回のケースで言うと、私は預金が少なく運用に多くの資金を回していた状況を見て「これは危ないですよ」とお伝えし、資産配分の最適化に向けたご提案をしました。一方で、そもそもその危険性を高めていたのは、近藤さんのリスク許容度に見合わない商品ばかり提案していた証券会社という現状もあるわけです。

そのため近藤さんは「プロが言うから、となんでも素直に聞くのではなく、自分に合った提案をしてくれるアドバイザーは選ばないといけないのね」と、おっしゃっていました。

確かに、知識がないからこそプロに相談しているわけで、自分に合った提案をするアドバイザーを見極めるのは簡単ではありません。しかし、例えば「いい商品ですね。逆に、気を付けなければいけないことはありませんか?」とひと言聞くだけでもずいぶん違います。メリットしかない商品は存在しませんし、狙える利益が大きいほど、ある程度の危険性は負わなければいけないのが金融商品の“宿命”だからです。

さらに「転勤がない分、これからも安心して相談できますね」と言われたことも印象に残っています。証券会社の担当者は、基本的に数年ごとに転勤となります。一方で、多くのIFAには転勤がありません。自分が担当の間だけ儲けさせておければいい、といったいい加減な提案ができないことも、安心感につながっているようです。

近藤さんのおっしゃるとおり、お金の不安の解消には「自分に合った提案をしてくれるアドバイザー」が必要です。長期で相談できる資産形成の「かかりつけ医」として、私たちIFAを選択肢の一つとして覚えておいていただければうれしい限りです。

この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (11)
  • 難しかった (0)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

著者

牧元 拓也 バリューアドバイザーズ 主任
牧元 拓也
大学在学中に金融に関心を持ち、東証1部上場の証券会社に入社。福岡県、三重県で金融商品を中心とした金融商品販売業務に従事する。次第にマーケット予測による商品販売ではなく、保険や相続などお客さま一人ひとりのライフプランに合わせた全体最適でのコンサルティングに強い関心を持つ。米国のゴールベース手法や経営理念に共感し、バリューアドバイザーズのアドバイザーに転身。現在はゴールベース・アプローチによるお客さま一人ひとりに合わせた資産運用コンサルティングを行っている。

関連コラムRelated

参考サイト
もっと情報をキャッチ!