日本銀行が調査・公表している「資金循環統計(速報)」によると、個人金融資産の残高が初めて1900兆円台に乗りました。これは2020年9月末の数字で、正確には1901兆円になります。前回調査の2020年6月末が1884兆円ですから、この3カ月間で17兆円の増加となりました。

内訳は以下のようになります。なお、カッコ内の数字は総額の1901兆円に占める割合です。

・現金/預金=1034兆円(54.4%)
・債務証券=26兆円(1.4%)
・投資信託=72兆円(3.8%)
・株式等=181兆円(9.5%)
・保険/年金/定額保険=530兆円(27.9%)
  うち保険=375兆円(19.7%)
・その他=58兆円(3.1%)

この数字を見る限り、金融庁が打ち出している「貯蓄から資産形成へ」の流れは、いまだに進んでいないことを実感させられます。

ちょうど4年前、2016年9月末時点の資金循環統計で、前出の金融資産が個人金融資産全体に占める比率を見ると次の通りでした。

・現金/預金=52.3%
・債務証券=1.5%
・投資信託=5.0%
・株式等=8.6%
・保険/年金/定額保険=29.8%
・その他=2.9%

この4年間で株式等の比率は上がったものの、投資信託の比率は低下し、現金/預金の比率は上昇しています。

20年間でほとんど変わっていない「現金/預金偏重型」

さらに遡ってみましょう。

「貯蓄から資産形成へ」の以前のスローガンである「貯蓄から投資へ」は、金融庁が国民の資産形成の手段として、それまでの貯蓄偏重を是正して投資の比率を高めるため、今から20年ほど前の2000年前後に打ち出されたものです。ちなみに2000年の個人金融資産は1409兆円で、そこから約500兆円も個人金融資産は増えました。

では、2000年当時の個人金融資産の中身はどうだったのでしょうか。前出と同様、金融資産別の内訳を見ると以下のようになっています。

・現金/預金=53.9%
・債務証券=3.4%
・投資信託=2.4%
・株式等=8.6%
・保険/年金/定額保険=26.7%
・その他=5.1%

もうお分かりいただけたかと思いますが、この20年間で個人金融資産の総額が34.9%も増えたにもかかわらず、投資信託の比率はたったの1.4%、株式等も0.9%しか伸びていません。そして、現金/預金の占める比率は、53.9%から54.4%へと微増していますから、個人金融資産の内訳は20年前も今も「現金/預金偏重型」のままということです。