投信ウオッチャーが分析 ! 2020年の投信市場振り返り&2021年のキーワード

投信ウオッチャーが分析 ! 2020年の投信市場振り返り&2021年のキーワード

  • 公開日:2021.02.08

Editor's Eye

新型コロナウイルスの感染拡大を発端に、間違いなく激動の一年であった2020年の投信市場。資産クラスごとの動向および高パフォーマンスであったファンドの分析を振り返るとともに、はたしてその流れは今後も続くのか――2021年の投信市場の見通しについてニッセイ基礎研究所の前山裕亮氏が語ります。

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、3月に世界的に株式などが一時的に急落したものの、以降はコロナ禍でも金融市場の穏やかなムードとともに株式の上昇基調が続いた。さらに年末にかけてはワクチンの早期普及への期待が高まったこともあり、内外の株式が急落前の水準を回復した。このように2020年は先行きを予測することが極めて難しい市場環境であったが、国内での追加型株式投信(ETFを除く。以下、投信)の販売は総じて堅調であった。投信全体では2兆2100億円の資金流入があり、2019年の5000億円の資金流出から純流入に転じた。

組み入れている資産クラス別に投信の資金動向をみると、国内株式投信や外国債券投信からは、2019年以上に2020年は資金流出があった【図1】。国内株式投信からは2020年に1兆5700億円の資金流出があり、株価が急上昇した11月には4000億円を超える大規模な資金流出があった。株価が上昇する中で利益確定の売却が膨らんだ模様である。外国債券については2020年も2019年と同様に毎月資金流出が続いていたが、特に3月の流出金額が大きかった。3月に世界的に長期金利が低下する中、今後の低収益化を見越して外国債券に見切りをつける投資家が多かった。

その一方で、外国株式投信には2020年に3兆5500億円もの資金流入があり、そのうち2兆5900億円はいわゆるアクティブ型への資金流入であった。個別でみても資金流入が大きかった投信のほとんどがアクティブ型の外国株式投信(図2赤太字)が占め、まさに2020年はアクティブ型の外国株式投信が投信販売を牽引したと言える【図2】。

アクティブ型の外国株式投信の中では、先行きに対して比較的安心感のあった米国株式、特にハイテク株式などが消去法的に選好されたことに加えて、年後半に新設されたESGを考慮したアクティブ型の外国株式投信も投資家の人気を集めた。2020年に8000億円に迫る純流入があった「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」がまさにその代表格である。2020年は個人投資家が中心の投信市場でもESGが注目され出したが、この流れが2021年も続くのか、さらには個人投資家の間にもESG投資が定着していくのか注目である。

また、インデックス型の外国株式投信にも2020年は9600億円の資金流入があった。2019年の4200億円の資金流入から2倍以上に膨らみ、集計できる1998年以降で最大の純流入となり、2020年末時点で純資産総額は4兆円に迫った。個人投資家の間にもインデックス型の外国株式投信での資産運用が浸透してきていることがうかがえる。このトレンドも2020年の外国株式投信への資金流入を底上げしていたといえよう。

では、2020年の投信のパフォーマンスはどうであったのか。資産クラスごとに代表的な指数からパフォーマンスの傾向を確認しよう。冒頭でも触れたとおり2020年は内外問わず、また先進国(外国)、新興国問わず株式投信が好調であったことが分かる【図3】。中国、韓国、台湾といったアジア株式が好調であったこともあり、指数では新興国株式の上昇が特に大きかった。なお、国内株式については日経平均株価が1年間で3788円(16%)上昇したが、TOPIXといった国内株式市場全体の動きを表す時価総額加重指数でみると、配当込みで上昇率は7%であった。

個別に2020年に高パフォーマンスであった投信をみると、一部の外国株式投信、それもいわゆるテーマ型の外国株式投信の1年間の収益率が90%を超えており、特に好調であった【図4】。2020年はコロナ禍でもさらなる成長が期待できるようなハイテク企業など一部の銘柄に投資家の注目が集中し、株価が大きく上昇する銘柄が存在した。そのような市場環境にうまく乗れるような銘柄を組み込むテーマ設定がされていた株式投信があったことが分かる。例えば2020年はEV(電気自動車)銘柄として米国のテスラ社が注目され、株価が大きく上昇した。高パフォーマンスだった上位2ファンドはいずれもテスラ社の株式を組み入れており、テスラ社の株価上昇の恩恵を受けられたことも高パフォーマンスの要因となった。

また、高パフォーマンスのテーマ型外国株式投信10本のうち8本(図4 赤太字)が2019年に設定された比較的、新しい投信であった。2020年単年で評価するべきではないかもしれないが、とりあえず銘柄ごとに大きく差が出た2020年の市場環境にマッチした商品が企画、提供されていたといえよう。

その一方で、REIT投信については指数が内外問わず10%以上下落したことから分かるように、2020年は厳しい状況であった。株式と同様にREITも3月に急落して以降は値を戻す展開となったが、株式と比べてその戻りは鈍く、2020年を通しても下落となった。やはり新型コロナウイルスの感染拡大に伴いホテル需要、オフィス需要、商業施設需要の減少が懸念されたことなどが重しとなった。国内株式は指数で見ると10%前後上昇したが、例えば国内株式でも不動産業に限ると国内REITと同程度の10%以上下落した。実は資産クラスごと、もしくは同一の資産クラス内でも個別で好不調の差が激しい1年であった。

債券投信については、指数が外国債券は上昇する一方で国内債券と新興国債券は下落した。先進国中心の外国債券は2020年に円高ドル安が進行したものの、世界的に景気下支えのため金融政策が拡充される中、米国などで長期金利が低下(債券価格が上昇)したことや円安ユーロ高が進行したことが追い風になった。その一方で国内債券は長期金利がやや上昇し、わずかながらマイナスとなった。新興国債券は組み入れられている主要な新興国通貨が対円で大きく下落したためマイナスのパフォーマンスとなった。

2021年についても、引き続き新型コロナウイルス情勢に注意しなければいけない展開が続くと思われる。2020年、特に世界中で感染が再拡大していたのにも関わらず株価が上昇したのは、ワクチンの早期普及に伴う経済活動の正常化が期待されたためである。つまり、金融市場ではワクチン普及後の景気回復まで既にある程度織り込まれているように思われる。もしワクチン普及が遅れる、または普及したものの期待されたほど効果が上がらなかった場合には、金融市場でも材料視される可能性が高い。いずれにしても現時点では予想は難しく、2021年も2020年と同様に不透明感が強い状況が続くと思われる。

このように不透明感が強い状況下では、特に自身に合った資産運用を心がけたい。2021年も昨年3月のような急落が起こる可能性があり、仮にそのように急落があっても落ち着いて冷静に対応できるか、リスク性の高い金融商品を保有しすぎていないか、ぜひ一度、確認していただきたい。また新規に投信などを購入する際にも、一度にまとめて購入すると結果的に高値づかみになってしまう可能性があるため、数回に分けて時間分散して購入する等の工夫が必要となるだろう。2020年、株式投信が好調だったからといって前のめりにならず、同年3月のように急落したら買い増そうとするくらい、余裕を持って行動できるのが理想である。

また投資する商品も、投資の定石である分散投資を心がけて選んでいただきたい。不透明感が強く、先行きを予想することが難しいときはあえて予想する必要はないと思われる。予想せずに幅広くさまざまな地域や資産に分散投資することが、簡単かつ失敗の可能性が低下する方法である。そういう意味では2021年も今までどおり地域分散が効いたインデックス型の外国株式投信や、さらに資産分散も効いているバランス型投信といった商品が有力な投資先となるだろう。

2020年に高パフォーマンスであった株式投信などに2021年も引き続き期待したくなるかもしれないが、2020年に大きく上昇した株式(投信)の中には割高になっているものもあると筆者は考える。新型コロナウイルスのワクチンに対する期待感に加え、世界的に行われている大規模な金融緩和策、低金利によって割高な株価水準でも許容されやすかったことも2020年の株高の背景にはある。今後迎える金融政策が正常化に向かう局面、つまり金利上昇局面では、割高になっている株式は現在の株価水準を維持できずに下落する可能性がある。つまり、どんなに事業の将来性がある企業でも株価が割高となっている場合は、短期的に下落するリスクも高くなっている可能性も潜んでいるわけである。投資する場合は、先ほどと同様に高値づかみに気を付けつつ、時間分散して購入する等の工夫をすることをお勧めしたい。

逆に、しいて注目している資産クラスや投信を挙げるとするならば、むしろ2020年にパフォーマンスが優れなかった資産クラスや投信である。金融市場全体では経済活動の正常化をかなり織り込んだ状況になるが、個別でみると織り込み具合にかなり差があった。2021年中にどうなるかは分かりかねるが、今後、本当に新型コロナウイルスを世界的に克服したとなると、今まであまり正常化が織り込まれていない資産クラスや投信ほど上昇余地が大きいと思われるためである。具体的にはREIT投信などが挙げられる。

ただ、新型コロナウイルスによって社会システム自体が構造的に変わってしまった可能性があるため、新型コロナウイルスを克服しても元の状況には戻らないリスクもある。たとえば、REITについては在宅勤務の定着とともにオフィス需要が減少する可能性も指摘されている。新型コロナウイルス情勢と合わせて、その克服後の社会変化も踏まえて投資先を選別する必要があるだろう。

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著者

前山 裕亮 ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員
前山 裕亮
早稲田大学大学院修了後、大和総研、大和証券キャピタルマーケット(現大和証券)、イボットソン・アソシエイツ・ジャパンを経て、2014年ニッセイ基礎研究所入社。2018年より現職。現在、株式市場や投資信託といった資産運用の調査、分析に従事。

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