「突如、月5万円のローン返済が発生」教育費と老後資金は捻出できるのか
みんなの資産運用相談

「突如、月5万円のローン返済が発生」教育費と老後資金は捻出できるのか

  • 公開日:2021.02.05

Editor's Eye

資産運用にまつわるお悩みにプロが回答するシリーズ。今回は、突如「親子リレーローン」の残債が降りかかり、想定外の出来事にパニック!という相談者からの相談です。家計の様々な「困った!」を解決に導き、また具体的なシミュレーションにも定評のあるファイナンシャルプランナー林 智慮さんに回答していただきました。

【山本佳代子さん(仮名)プロフィール】
40歳、専業主婦。会社員の夫(45歳)、子供(12歳、春から中学に進学)の3人で暮らす。長野県在住。義実家とは別居している。

【寄せられたお悩み】
「義父が81歳で他界し、義実家の住宅ローンが親子リレーローン※のため、夫がローンの残債を引き継ぐことになりました。親子リレーローンのことは聞いていましたが、それについて我が家の問題と思っておらず、ローンについて何もして来ませんでした。月々約5万円×返済期間5年(計約300万円)ほどのローンが突如降りかかってきました。
ゆくゆく義実家に引っ越すことも考えていますが、子どもに転校をさせなければならないので、精神的な負担があることを思うと今すぐに義実家に引っ越しというよりも、いったん現状の暮らしを維持したままローンを返済していこうと思っています(子供が高校入学くらいまでを想定)。
生活費を切り詰めればローンは払ってはいけそうですが、そろそろ子どもにもお金が掛かる、私たち夫婦の老後資金も準備しなくてはいけない……と考えると不安です。
パートに出るのも良いのかもしれませんが、長年専業主婦のため、今ひとつ踏み出せないでいます」

※編集部注:住居への1つのローンに対し、親から子へ返済を引き継ぐ方法。なお住宅金融支援機構の団体信用生命保険は、親子リレーローンの場合に親が加入することができるものの、保障は80歳の誕生日の月の末日。義父がなくなったのは81歳、保証期間が過ぎていたため、債務が残った。

【お悩みの論点】
①親子リレーローンによって、突如月5万円のローン返済発生! どうお金を捻出すればいい?
②そんな中で、教育資金&自分たち夫婦の老後資金も貯蓄しなくてはいけない。どうしたら?

【資産状況】
世帯の金融資産額:250万円
内訳
預貯金:250万円

【収支】
<収入>
・世帯の毎月の手取り収入:30万円
・手取りの年収:460万円(ボーナス100万円込み)

<支出>
・毎月の出費:30万円(詳細以下)

 

突然降りかかった「親子ローン」に困惑されているとのこと。また、山本さんのお子さんは来春、中学生になられます。これから教育費が掛かってきますね。それに加えて、山本さんたちご自身の老後資金の準備も必要になってきます。一つずつ整理していきましょう。

まず、これからお子さんにどのくらいの学費が掛かるのか知っておきましょう。ここでの数値は後々のシミュレーションにも登場します。

中学・高校
月々の教育費は、公立中学や公立高校の場合約4万円、私立中学約12万円、私立高校約8万円を見ておきましょう(ただ、長野県は高校までは公立に通うことが多いということですので、以下、中学・高校は公立という前提で話を進めます)。

<ご参考>
『文部科学省 平成30年度子供の学習費調査』から算出しています。中学校3年間の学習費合計の平均は公立で約146万円。私立で約422万円(千円単位四捨五入)。この数字は、学外の教育費(塾等)も含みます。

大学
大学4年間の学費(入学金+4年間の学費)は国立の場合、約285万円。私立は約389万円です。下宿する場合はそこに月10万円(×48カ月)=480万円ほどプラスして想定します。また一人暮らし準備金(約30万円)も必要です。

<ご参考に>
国立大学の場合、大学、学部を問わず授業料は同額です。入学金28万2000円、年間授業料64万2960円(令和2年4月)です。私立大学になると、これらは大学、学部により大きく異なります。文部科学省が発表した『私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査結果について』によれば、入学金は約25万円、年間授業料については91万円程が平均となっています。

現在の家計での教育費は2万円ですが、月々の貯金の4万円のうち2万円を教育費に充てれば、中学高校の教育費(月4万円)を支払うことが出来ます。残金2万円を積み立てることができるので、2万円×72ヶ月(6年間)=144万円残すことが出来ます。

お子さんが中学・高校の間、ボーナスが毎年100万円入る状態が続くとすれば(100万円×6年間)、毎月の貯金額と併せて600万円+144万円=744万円(①)を高校卒業までに貯蓄できる計算になります。

ここでリレーローン(月々5万円×5年分)の返済を考えます。手持ちの250万円を使って返済するのも一案ですが、万が一の時の生活防衛費に充てられるお金が必要ですので、250万円はそのままにしておいたほうがいいでしょう。

お子さんの高校進学までは、つまり中学の3年間はこのまま今の賃貸に住みたいとのことですので、この間のリレーローン約5万円×12×3年間=約180万円を今までより余計に支出することになります(つまり、上記744万円(①)-180万円=貯蓄できる金額は564万円(②)に)。

お子さんの中学卒業・高校入学を機にご主人のご実家に転居すれば、現在の家賃負担分7万円がなくなり、毎月2万円貯金が出来ます(家賃月7万円-リレーローン月5万円)。お子さんが高校3年生になるときは、リレーローンも完済できており、その1年間はまるまる7万円の貯金ができるので、2万円×24カ月(お子さんが高1、2年の間)+7万円×12ヶ月(お子さんが高3の年)=132万円分さらに貯めることができ、高校卒業までに、696万円貯められます(564万円(②)+132万円)。

大学入学後は、大学の学費に現在の家計の教育費2万円、貯金4万円、住居費だった7万円の13万円を充てることが出来ます。

このままでは、お子さんが大学を卒業される時には、山本さん51歳、ご主人は56歳になりますが、公的年金以外の老後資金が全くありません。56歳のご主人は60歳を定年と想定しましょう。

お子さんが大学を卒業されれば学費が掛からなくなるので、毎月13万円ほど貯めることが出来るでしょう。13万×48カ月=624万円の貯金が出来ます。ボーナスも含めると、4年間で1000万円ほど貯められます。

ただ銀行預金で積み立てるのではなく、iDeCoやつみたてNISAを利用すると運用益が非課税になり、有利に資産形成が出来ます。それに加え、iDeCoは掛金全額所得控除されます。その結果、その年の所得税、翌年の住民税が軽減されます。

ただ、どちらも掛け金の上限があります。つみたてNISAは年間40万円まで、iDeCoは、職種により上限が違いますが、会社員で企業年金がない場合は2万3000円までです。さらに、iDeCoは掛金できる期間が60歳未満です(令和4年5月からは、第2号被保険者等の国民年金被保険者であれば、65歳まで加入出来ます)。

よって、13万円毎月貯められても、iDeCoの掛金は最大2万3000円分までしかできません。また、専業主婦である奥様もiDeCo加入は出来ますが、奥様の分の掛金をご主人の所得から控除する事は出来ません。

加入できる年齢に期限があるため、早めにiDeCoを利用して、老後資金の準備をしましょう。

万が一の貯金が250万円あるので、お子さんが中学になられてからの2万円分を貯金ではなくiDeCoにすると、60歳になるまでに2万円×12ヶ月×14年=336万円の元金ですが、所得税(所得税率10%)33.6万円と住民税33.6万円の計67.2万円の軽減が出来ます。
※iDeCoに掛かる諸費用(口座開設、月々の口座管理費等)は考慮していません。

お子さんが中学に上がってから、月2万円を複利で積立した場合、14年後(ご主人が60歳のとき)の元金の積立合計は336万円ですが、3%の利率で運用した場合417万円、6%での運用が叶えば525万円に殖やすことが出来ます。税金の軽減分と利息分で、そのまま貯金するより約256万円多くなります。

また、時間を分散して、長期に積み立てることで、価格の変動リスクに対応できます。

さらにお子さんが高校に進学した後などは、iDeCoを満額にした残額はつみたてNISAに回して運用しましょう。つみたてNISAは、必要な時にいつでも現金化できることも特徴です。

専業主婦の場合は公的年金がほとんど国民年金のみで、月々の年金の支給は約6万5000円ですが、iDeCoを利用する事で老後資金の上乗せ分を作れます。

ところで、専業主婦(夫)のiDeCoの掛金上限2万3000円ですが、前述のとおり、収入のない専業主婦(夫)は掛金全額所得控除のメリットを受けられません。働くことで、掛金全額所得控除のメリットと、自分で自分の資産を作る意識が得られます。これが第1のメリットです。

また、将来受け取れる公的年金は、ご主人には厚生年金部分がありますが、ほぼ専業主婦だった山本さんは、厚生年金部分がほぼありません。公的年金は生きている間は受け取れますが、iDeCoは口座で運用したお金を使い切ってしまうと、それ以上は何もありません。もう少し頑張って第2号被保険者になることで、厚生年金を作る事が出来ます。これが第2のメリットです。

最後に働きに出るのは、お金の問題だけではありません。他にも、お子さんの成長や、義母様との同居と様々な家族の変化があります。何かあったときでも、外との繋がりがあると、心の安定が保たれることが多いようです。「今から働きに出るのは……」と尻込みされていらっしゃいますが、今から自分の年金を作ることに目を向けて、一歩踏み出してみることも選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。

この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (2)
  • 難しかった (0)

このページをシェアする

  • Lineにシェア
  • はてなブックマークにシェア

あわせて読みたいRecommend

著者

林 智慮 ファイナンシャルプランナー
林 智慮
ファイナンシャルプランナーCFP®、DCアドバイザー。大学(工学部)卒業後、設計会社で設計業務に従事。その後に設計請負業務の個人事業主となる。子育て期間中、配偶者の事業開始で経理に転身、簿記、ビジネス実務法務、CFP資格を取得。生活者の立場で、各種相談業務、セミナー講師、執筆活動を行う。「資産作りにおいて大切なのは、自分が制度や仕組みを知ってそれを利用すること」がモットー。ただ漠然と貯めるより有利に貯められ、より有利に殖やし、守ることが出来ることを伝えている。

関連コラムRelated

参考サイト
もっと情報をキャッチ!

あなたに最適なIFA(資産アドバイザー)を見つけるならFinasee(フィナシー)× 資産運用の無料相談窓口

あなたに最適なIFA(資産アドバイザー)を見つけるならFinasee(フィナシー)× 資産運用の無料相談窓口