意外に知らない分配金の仕組みと、新潮流「予想分配金提示型」とは?
篠田尚子のファンド愛 12

意外に知らない分配金の仕組みと、新潮流「予想分配金提示型」とは?

  • 公開日:2021.02.10

Editor's Eye

投資信託の分配金を巡っては、これまでさまざまな議論が繰り広げられてきた。特にいわゆる「タコ足分配」については多くの批判が集まってきたが、最近はそうした議論も沈静化し、ここ数年で投資を始めた人の中には、分配金の仕組みをあまり理解していない人さえいるかもしれない。そこでファンドアナリストの篠田尚子氏に、新たに台頭してきた「予想分配金提示型」の仕組みと併せて、分配金の基本を改めて解説してもらった。

最近、投資信託で資産形成を始めた投資家は、かつて一世を風靡した「グロソブ」こと「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」の存在を知らないかもしれない。1997年12月に設定された同ファンドは、それまでの投資信託の常識を覆す「毎月決算」と「毎月分配」を強みに人気を集め、2008年8月には5.7兆円という前人未到の領域まで残高を積み上げた。

当初の「グロソブ」の分配金は40円(1万口あたり。以下同)。その後、世界的な低金利環境の影響によって分配金の水準は段階的に引き下げられ、昨年12月の決算期にはついに5円にまで下がってしまった。

詳しくは後述するが、毎月分配を含む定期分配型の投資信託を巡っては、実力以上の分配を行う「タコ足分配」に批判が集まるなど、厳しい目が向けられてきた。加えて、足元の金利環境により、主に債券を投資対象とする従来型のファンドの運用にも限界が出てきた。

そうした中、同じ定期分配型の投資信託でも、「予想分配金提示型」と呼ばれるタイプがじわりじわりと存在感を高めている。火付け役となったのは、昨年3000億円超の資金流入を記録し、大ヒットした「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」だ。当ファンドは2014年の設定だが、実は予想分配金提示型の投資信託は、昨年2020年に18本、さらに2021年に入ってからもすでに6本(2月1日時点)が新たに設定されている。

予想分配金提示型の特徴について詳しく見る前に、まずは投資信託の分配金の仕組みについて確認をしておこう。

投資信託の分配金(収益分配金)とは、投資信託が決算を迎えた後、受益者(投資信託の保有者)が保有する口数に応じて支払われるお金のこと。分配金を出す頻度は、年1回や毎月など商品によって異なる。分配金は運用を通じて得られた利益から支払われるのが基本だが、分配自体は利益が発生していない状態でも行うことが認められている。つまり、元本を払い戻す形で分配が行われることがある。

このように利益が生じていなくても分配を行うことができるのは、投資信託が「投資家間の公平性」を担保しているためだ。

投資信託は原則として、「いつでも」「誰でも」購入可能な金融商品である。10年前から保有している投資家でも、決算日のわずか数日前に購入した投資家でも、受け取れる分配金の額は一律である。このように、金額も投資開始時期も異なる複数の投資家の資金をまとめて運用するとなると、収益の分配についてはどうしても不公平が生じてしまう。そこで、投資家が投じた資金から分配金を支払い、投資家間で生じる不公平を解消しているのだ。

この元本の払い戻しに該当する部分は「元本払戻金」または「特別分配金」と呼ばれ、通常20.315%(所得税15.315%、住民税5%)かかる税金は非課税となる。決算日の直前に資金を投じた投資家は、短期間でよほど基準価額の大きな上昇がない限り、受け取った分配金の大部分、または全部が元本払戻金となっている可能性が高いと言える。運用成績が振るわず、十分に分配原資を蓄えられていないようなケースもまた、元本が払い戻される可能性が高い。これが、先述した「タコ足分配」の温床というわけだ。

予想分配金提示型は、こうした事態を極力回避するよう設計されている。基準価額の水準に応じて支払われる分配金の額があらかじめ決まっており、毎決算期末に分配方針に基づいて最終的な分配金額が決定する、というのが大まかな仕組みだ。

例えば、冒頭で紹介した「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」の分配方針は、目論見書上、以下の通り明示されている。

直近2021年1月の決算日は1月15日だが、「毎計算期末の前営業日」の基準価額で分配金額が決定されるため、14日の基準価額を参照する。14日の基準価額は11,683円で、「11,000円以上12,000円未満」のレンジに該当するため、当該決算期の分配金は200円ということになる。

決算時に分配を行うかどうかと、具体的な分配額の決定権は運用会社にある。また、分配金は支払いが確約されているものではなく、実際の分配額も決算を迎えるまで分からないというのが、これまでの定期分配型の「常識」であった。「予想分配金提示型」なら、分配方針の透明性が高く、投資家にとっても分配金の見込み額を事前に把握できるという利点がある。定期的なキャッシュフローニーズのある投資家はもちろん、心理的に、一定周期で利益確定をしたほうが安心できるという投資家にも向いているだろう。

ただし、長期の資産形成を目的とするなら、定期分配型ではなく、なるべく決算回数の少ないファンドを選ぶのが鉄則だ。特に毎月決算を行う毎月分配型は、運用効率の観点から決してお勧めはできない。

例えば「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信」であれば、年2回決算の「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Bコース(為替ヘッジなし)」が同じシリーズで展開されている。長期での資産形成が目的で、同シリーズに決算回数の少ないファンドが展開されている場合には、そちらを選ぶようにしてほしい。

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著者

篠田 尚子 楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
篠田 尚子
慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【最新版】本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』(SBクリエイティブ)。

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