試算で検証!iDeCo(イデコ)とふるさと納税は「併用したら損」なの?
セミナー講師が伝えたい マネープランのツボ 6

試算で検証!iDeCo(イデコ)とふるさと納税は「併用したら損」なの?

  • 公開日:2021.02.15

Editor's Eye

「自分がもらえる年金、月にいくらかご存知ですか」。人生100年時代、大多数の人に関係し、「もらえる」というポジティブな情報でありながら、即答できる人はほとんどいません。しかし、おさえるべき知識を身につけておけば、リタイア後に向けたマネープランはもっとスムーズに、自分の思う通りに組めるはず。証券会社に所属し、企業等の従業員に向けたライフプランや資産形成のセミナー講師を務める小出昌平氏が、マネープランのよくある疑問について解説する連載。第6回で取り上げるのは、お得な税控除制度として知られるふるさと納税と、同じく税制メリットの高いiDeCoのお話。併用するとふるさと納税の「枠」が減るわけですが、では、実際どれくらい損してしまうものなのか、シミュレーションしながら説明しています。

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は税制メリットが大きい、お得な制度です。でも、制度創設の2002年からしばらくは利用者も少なく、「知る人ぞ知る」制度でした。しかし、2016年9月に「iDeCo」という愛称が決まり、2017年には加入できる対象者が拡大されたこともあり、今や181万人* の人が老後資金を準備するために利用しています。2022年には加入できる年齢が延長され、企業型DCとの併用もやりやすくなるので、iDeCoを利用する人はますます増えると思います。
*出所:国民年金基金連合会「iDeCo(個人型確定拠出年金)の加入等の概況(2020年12月時点)」

税制メリットが大きいお得な制度としてiDeCo以上に有名なのが、ふるさと納税ですね。しかしこちらも、制度ができた2008年からの数年間は、年末が近付くと少し話題になる程度でした。それが、2015年に確定申告不要で利用できるワンストップ特例制度が導入されて以降、自治体の返礼品競争も相まって利用者が急増し、実に406万人** の人がふるさと納税を利用しています。いっとき過熱した返礼品競争は落ち着きましたが、いまや季節を問わずネットやテレビCMなどで見聞きするようになり、ふるさと納税は誰もが知る制度になったのだなと感じます。
**出所:総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和2年度実施)」

iDeCoもふるさと納税もお得な制度ですが、どちらも税控除に絡む話なので両者の関係は微妙です。おそらく、ふるさと納税を利用されている人が多いからだと思うのですが、セミナーでもiDeCoとふるさと納税の関係についての質問をよくお受けします。

結論から申し上げれば、iDeCoを始めるとふるさと納税の“利用枠”とも言える「控除上限額」が下がります。今回はその理由と影響度合いについてご説明しましょう。

***

セミナー参加者(以下、参加者)
iDeCoを始めたいと思っているのですが、「ふるさと納税をやっている人は要注意!」なんて記事をネットで見かけました。iDeCoを始めると、ふるさと納税ができなくなるのですか……?

講師
いやいや、できなくなるわけではありませんよ。要注意というのはおそらく、自己負担額の2000円を除いた「ふるさと納税の控除上限額が下がる」ことに注意せよ、ということだと思います。

参加者
「控除」って、前回の「そもそも『控除』とは?iDeCo(イデコ)の税金メリットをざっくり解説」でも聞いた言葉ですね……。どういうことなんでしょうか?

講師
では、ふるさと納税の控除の仕組みからご説明しましょう。
ふるさと納税の控除の種類は、原則「所得控除」と「税額控除」の2種類です。前回の記事でご説明した図で言うと、(2)と(4)の行にありますね。

参加者
そうでした! 控除とひと口に言ってもいろいろな控除があって、差し引く対象が「所得」や「課税所得」、「税額」などと違うんでしたよね。

講師
ええ。このうち、「所得控除」の“枠”で差し引く対象は所得税だけですが、「税額控除」の“枠”で差し引く対象は住民税の基本分と住民税の特例分と、合わせて3つに分かれます。

この3つのうち、ふるさと納税が属する制度のカテゴリー「寄付金控除」の仕組みにおさまるのは、図の中の上から2つ、所得税分と住民税の基本分までです。
寄附金控除の仕組みでは、同じ金額を寄付しても、高収入の人ほど控除される税額が多くなります。なぜだかお分かりになりますか?

参加者
所得税分の控除は「所得控除」枠に含まれるので、所得税率が高い人ほど軽減される税額が多くなるってことですよね?

講師
おっしゃるとおりです。ただ、ふるさと納税の場合は、図の一番下、「住民税の特例分」もあります。これは「寄附金控除の仕組みでは控除できない部分も、特例として全額控除できる」という枠。つまり、収入の多寡にかかわらず、ふるさと納税額から2000円を差し引いた金額分、税金の負担が減ることになるのです。

参加者
なるほど。ふるさと納税はこんな「特例」が設けられているほど、特別に優遇されていることが分かりました。でも、この図をよく見ると、住民税の特例分にも限度額があるようですね。

講師
よく気付きましたね。そうです、この※書きの注釈部分ですね。実際は、所得税分と住民税の基本分にも上限があるのですが、一般的に「ふるさと納税の控除上限額」は住民税の特例分を基準として計算されます。
この計算式を見ると、「住民税の課税所得×10%」という部分がありますよね。iDeCoの掛金は、全額が「所得控除」の対象になるので、1つ目の図で言う(2)の行にある課税所得が減ります。つまり、iDeCoをやると、課税所得を基に計算される「ふるさと納税の控除上限額」も下がるのです。

参加者
よく分かりましたけど、少し残念です……。ふるさと納税の枠が減るのは、ちょっと嫌ですね。

講師
せっかくiDeCoを考えはじめたわけですから、ふるさと納税の控除上限額がどれくらい下がるのか、確認してから決めてもいいんじゃないですか? ネットのふるさと納税サイトなら、たいていどこでも「控除上限額シミュレーション」が用意されていますので、ご自身の年収や家族構成、iDeCoの積立金額を入力して確かめてみてください。
参考までに、世帯年収500万円(税引き前)を前提に、独身や共働きのケースのほか、iDeCo加入者が最も多い「企業年金のない会社員(掛金上限27.6万円/年)」と、次に多い公務員(同14.4万円/年)のケースで試算してみました。

参加者
やっぱり、iDeCoの積立金額が多いほど、ふるさと納税の控除上限額が下がるんですね。わが家は夫婦二人暮らしなので、iDeCoで年間27.6万円積み立てていると、ふるさと納税の枠は7000円くらい減るってことですね。

講師
そうですね。ただ、2019年6月以降、寄付額に対するふるさと納税の返礼品の割合は3割以下になっています。単純計算すると、ふるさと納税の控除上限額が7000円減ると、約2000円分の返礼品がもらえなくなることになります。
「影響度」がこの程度だったら、iDeCoはどうしますか?

参加者
そうか! 実質的な「利益」で見れば、影響が出るといってもたかだか2000円ほどですか。それくらいなら、iDeCoを始めたいと思います。でも、試算をよく見ると、妻と別れて独身になれば、iDeCoを始めたとしてもふるさと納税がもっと使えるんですね……。

講師
いやいや、別れるより、まずは共働きの検討が先じゃないかと……(呆)。

***

最後はご夫婦の微妙な関係の話になりましたが、iDeCoとふるさと納税の関係も微妙です。先ほどご説明の通り、iDeCoをやると掛金が全額所得控除の対象になり課税所得が減るので、住民税の課税所得に基づいて計算されるふるさと納税の控除上限額も下がることになります。それだけを考えると、なんとなくiDeCoをはじめるのに躊躇してしまう気持ちも分かります。でも、特に返礼品の「3割ルール」を元に考えると、その影響度合いは意外と小さかったのではないでしょうか。大切なのは、ご自身のケースで実質的な「損」の規模感を確認してみること。今回のコラムが、皆さまの前向きな一歩を後押しするきっかけになれば幸いです。

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著者

小出 昌平 大和証券 ライフプランビジネス部 担当部長
小出 昌平
1993年4月大和証券入社。投資信託の開発や富裕層ビジネスの企画・運営業務などを経て、2015年より確定拠出年金業務に従事。現在は、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金の周知・普及活動に携わりながら、自治体や事業会社の職場における金融・投資教育、ライフプラン教育の支援活動に取り組み中。

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