米国モーニングスター社評価システム変遷に見る、投資信託の“目利き”とは
LA在住FPが綴る、金融大国アメリカのリアル 6

米国モーニングスター社評価システムの変遷に見る、投資信託の“目利き”とは

  • 公開日:2021.02.22

Editor's Eye

ホテル、レストランetc. 日々「星いくつ」等のランキングや格付けに影響を受けがちな私たち。投資信託を選ぶ時も例外ではないでしょう。ただ、シンプルで分かりやすいものの、その評価の付け方の“中身”にこだわっている人は意外と少ないのかもしれません。 LA在住のファイナンシャルプランナー岩崎淳子さんによれば、米国モーニングスター社の評価の仕方の変遷には、画一的に過去のパフォーマンスで測るところからスタートし、多様な評価軸が盛り込まれた歴史があり、その考え方は私たちの投信選びにも参考になるとのこと。どんな変遷だったのか、そこにどんなメッセージが読み解けるのか、解説していただきました。

ファンドや株式の評価で知られているモーニングスター社という会社があります。米国モーニングスター社は1984年の設立、日本モーニングスター社は1998年の設立です。日本ではSBIグループと提携しており、モーニングスターの1つ星から5つ星でファンド成績を評価するスター評価システムはSBI証券で使われています。同じような評価は他でもよく見られ、たとえば楽天証券ファンドスコアなども独自の5つ星システムです。

米国モーニングスター社のスター評価は1985年に開始しました。過去3年間、5年間、10年間のパフォーマンスを調べ、それを他の同様なファンドたちと比較して、どのような成績順位であったかによって星の数を付与するものです。過去成績がトップ10%であれば5つ星、その次の22.5%に入っていれば4つ星、真ん中35%なら3つ星という具合で、ボトム10%だと1つ星となります。スター評価は純粋に過去の業績評価でした。

人間、何かを測り始めるとそれにどうしても縛られます。測ればそれを並べたくなり、ランキングというものが生まれます。誰でも一番がいいと思いますから、判断基準や価値観を左右します。

このスター評価も、これまで多くの投資ファンドの選択に利用されてきたわけですが、2011年に一度、そして2019年にもう一度、米国モーニングスター社はこの評価システムの大きな変革を行いました。何をどう変えたのかを知ることは、ファンド選択にあたっての評価基準がどう改善されたのかを知るということですから、日本の投資家にとっても大きな意味のあることだと思います。日本はまだ5つ星段階ですが、徐々に米国のファンド評価基準へと移行していくと考えられます。また、アメリカが行った改革内容は、ファンド選択において日本でも今すぐに適用できる知恵でもあります。

一度目の改革は2011年で、米国モーニングスター社はそれまでの5つ星のスター評価に加えて、Gold、Bronze、Silver、Neutral、Negativeの5段階で表されるアナリスト評価の併用を始めました。その名の通り、アナリストがファンドに対して評価を行うもので、ほかの同類のファンドより業績があげられる資質や、インデックスファンドであればそのベンチマークに比較し、良い業績があげられる傾向などファンドの質的内容を問います。評価基準には5つの柱があり、それらは、People(ファンドマネージャーの能力・適正)、Parent(ファンド会社のビジネス傾向)、Process(ファンド運用プロセス)、Performance(業績)、Price(手数料などを含む値)です。

スター評価だけでファンドの正しい評価ができるのならこの改革はなかったと思います。星の数を見て、「これは良いファンドだから投資しよう」と判断しても、その後その評価に見合う成績が必ずしも実現しないケースが、無視できないレベルで存在したということだと思います。

そして、その反対の例もあったと思います。実際、多くのリサーチにおいて過去成績と将来成績の相関の無さについて様々な結果が出ています。バンガード社のホワイトペーパーでは、「いかに過去業績ランキングが将来のパフォーマンス予想の当てにならないか」について取り扱ったものがいくつか出版されています。

その一つでは、ある5年間でトップ20%だったファンドのうち、次の5年間でボトム20%になるか、成績不振で消滅してしまったファンドは46.6%に上ったと報告しています。過去のパフォーマンスを根拠にファンド選びをすることのむなしさを物語っています。

2011年に新しく導入されたアナリスト評価は、面と向かってのファンドマネージャーとのインタビューなども含まれ、過去の数字だけに頼るスター評価に比較して、より多くの包括的かつ質的情報を吟味します。
ファンドやファンド会社の質的評価を含み、今後このファンドが良い成績を収められそうかを判断するために役立つ、未来予想型の評価システムとして導入されたのです。

これにより、過去数年間、たまたま調子が良かった特定業種のセグメントファンドにばかり焦点を当てがちだったシステムから、きちんとした投資哲学と体制によって低手数料で地道に運営されているファンドにも正当な評価がされるシステムになったと感じます。

これは、ここ10年余りの間アメリカの投資業界で着実に進んできた、アクティブファンドからインデックスファンドへの潮流の変化を裏打ちするものでもあるように思います。

2019年から2020年にかけて、アナリスト評価の方法がさらに変革されました。二度目の改革です。前回2011年の改定では、将来の成績予測にとって必ずしもあてにならない過去の業績評価から、より関連性の高い質的評価システムの導入がなされましたが、今回の評価改定は、その将来パフォーマンス予想能力をさらに精錬する目的で行われました。

アナリスト評価で5つあった指標のうち、People(ファンドマネージャーの能力・適正)、Parent(ファンド会社のビジネス傾向)、Process(ファンド運用プロセス)の3本柱での評価へと簡素化される一方で、これまでよりもファンドの手数料がより大きく考慮されようになりました。

一般的に手数料の高いアクティブファンドは、これまでは「似たような他のアクティブファンド」との比較をベースに評価が決められていたところ、改定後は、アクティブファンドとインデックスファンドとが同じプールで直接比較されるようになりました。

今までは、他のアクティブファンドと比べて成績が「比較的」良ければ、GoldやSilverが付くこともありましたが、今後は、高い手数料を差し引いたあとで残る成績がインデックスファンドの成績より勝っていなければ、GoldやSilverなどの評価が付くことはありません。アクティブファンドにとっては、これまでのような「ごまかし」が効かない、より厳しい評価を受けることになります。投資家にとっては、「まやかし」のないより明白な判断基準が示されることになります。

さらに、「買い方(シェアクラス)」ごとの評価が始まります。シェアクラスというのは投資ファンドをどこで買うかのことで、アメリカではこの違いによって購入時手数料の水準やその支払いのタイミングなどが変わってきます。

内容的に全く同じ投資ファンドであっても、どこの金融機関で買うか、窓口で買うか、ネットで買うかで購入時手数料が大きく変わり、これが投資成績に影響を与えます(ちなみに購入時手数料とは文字通り購入時に課せられる手数料で、年々かかる信託報酬とは別物です)。アメリカではここ10年位で購入時手数料が大きく下がりました。日本では0%から3%と聞いています。ちなみに、0%のファンドはノーロードファンドと呼ばれており、ネット販売が主です。

買い方の違いにより購入時手数料が0%と3%では、最終投資成果に大きな影響がありますから評価が異なってしかるべきところ、2019年までの評価システムではこの区別がありませんでした。2019年の改定で、それぞれのシェアクラスごとに評価がつくことになりました。よって、同じファンドであっても、手数料が高ければ評価が悪いということになります。これも投資家にとって、どのファンドを買うかだけでなく、それをどこでどうやって買うかまで厳しく吟味する機会となり、投資判断がより簡単になる変更です。

***

この一連の米国モーニングスター社の評価改定の流れを見るに、投資ファンド選択においては過去のパフォーマンスは頼りない評価基準であること、将来成績の予想にはファンドを運用する会社やマネージャーの運用指針、体制、能力など質的な吟味が有効であること、そして何よりも低手数料での購入・運用が重要なのだというメッセージが流れているように思います。

これらはすべて、低手数料のインデックスファンドでの長期投資を後押しする流れでもあります。また、これらは日本でのファンド選択においても同様に有効な考え方であると考えます。

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著者

岩崎 淳子 ファイナンシャルプランナー
岩崎 淳子
「Smart & Responsible」代表。 マーケティング戦略やアナリスト業務を経験した後、2000年に夫の転職を機に米バージニア州へ移住。子育てをしながら米国公認会計士、パーソナル・ファイナンシャル・スぺシャリトに合格。日本と全く異なるアメリカのシステムに戸惑った経験をベースに、個人向けファイナンシャルプラニングの情報提供サイトを立ち上げる。大金持ちでないからこそのプラニング・バランスのとれた家計システム・人任せにせず自分で考える姿勢をモットーにプラニングサービスを提供中。聖書をこよなく愛するクリスチャン。現在は米カリフォルニア州在住。著書に『お金が勝手に貯まってしまう 最高の家計』(ダイヤモンド社)。

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