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金融ホットワード深掘り解説-「ESG投資」3

なぜ広まった?どんなことをしてる?企業のESG・SDGsへの取り組み

  • 公開日:2021.02.26

Editor's Eye

最近、企業のESG(イーエスジー)やSDGs(エスディージーズ)への取り組みが紹介される機会が増えてきました。テレビやSNSなどで見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。

そこでESG投資深掘りシリーズの第3回は、ESGやSDGsへの取り組みが広まる理由を紹介したうえで、世界的に評価が高い日本企業2社の取り組みを解説。「そもそもESGやSDGsってなに…?」という方にもわかりやすく解説いたします(記事監修:機関投資家向け運用情報誌 「オル・イン」編集長 小池正芳)。

 

ESGとSDGsはどちらも国連が提唱したものだということもあり、「長期的に安定して成長する、より良い世界を目指す」との目的は一致しています。では、両者にはどんな違いがあるのでしょうか。

主な違いの一つは、対象となる人々です。ESGは主に投資家を対象としており、投資先の評価軸に組み入れるべきとされる「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(企業統治)」の3つの観点を包括しています。以下のような課題がそれぞれの観点に当てはまります。

ESGの問題例

対して、SDGsの対象は全世界の人々。「持続可能な開発目標」とも訳され、2030年までに達成すべき17の目標から構成されています。

■SDGs 17の目標

SDGs目標

 

出所:国際連合広報センター

実際に、これらに取り組む企業は増加傾向にあります。日本の年金の管理、運用を行う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による2000社以上を対象にした「機関投資家のスチュワードシップ活動に関する上場企業向けアンケート」において、「SDGsを知っており、すでに取り組みを始めている」と答えた企業は2018年時点では24%でしたが、2020年には61.6%と急拡大しています。

たった2年でここまで増加傾向にあるのは、主に「①ESG投資の拡大」と「②事業を持続可能にするため」という2つの理由があるからです。

ESG投資とは、上述したESGの観点から企業の長期の成長性や持続可能性を評価して投資する手法のこと。世界的にも投資残高が増え続けていますが、日本での成長は著しく、2016年から2018年の投資残高をみると約4.6倍と急速に伸びています。

ESG投資の投資残高が増えるということは、企業にとってはESGやSDGsに取り組んで高い評価を得られれば、新たな投資資金を呼び込める可能性があることを意味します。逆に、ESGの取り組みを疎かにすると、ESGを重視する投資家からの資金を逃すことにもつながりかねません。これが、ESG・SDGsへの取り組みが広まる1つ目の理由です。

ちなみに、企業が社会的責任を果たすという意味ではESG・SDGs誕生以前から「CSR」(Corporate Social Responsibility、企業の社会的責任)という概念が存在しています。ただ、企業の倫理観をよりどころとしていたこともあり、ESG、SDGsほどの大きな広がりを見せることはありませんでした。

ESGやSDGsの広まりは政府の方針にも影響を与えています。2020年10月、菅義偉総理大臣は「わが国は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」「脱炭素社会の実現を目指す」と所信表明演説で宣言しました。

この流れに反するような取り組みを企業が行っていれば、政府のみならず国民からも不信を買い、事業が継続不能に追い込まれる恐れすらあるかもしれません。つまり、企業は政府などの方針に沿って事業を持続可能にするために、ESGやSDGsに取り組むという側面もあるわけです。

ここからは、外部から高評価を得ている企業のESG・SDGsへの取り組みを見てみましょう。

企業のESG・SDGsに対する評価軸は複数存在し、評価機関や資産運用会社はそれぞれ独自の基準で企業を評価しています。今回はその一例として、ESG投資の先駆者として知られる世界的な資産運用会社のロベコと格付けや指数ビジネスを手掛けるS&Pグローバル社が共催する「SAMサステナビリティアワード」を元に紹介します。

「SAMサステナビリティアワード」では企業をESGの観点(環境・社会・企業統治)から評価・分析し、特に評価の高かった企業をゴールド・シルバー・ブロンズとクラス分けして表彰しています。

2020年10月に表彰式が行われた「SAMサステナビリティアワード2020」では世界の大手企業4700社超が審査対象となり、日本企業は18社がアワードを獲得。そのうち、伊藤忠商事と住友林業の2社が最高評価のゴールドクラスを受賞しました。1社ずつ、主な取り組みを見ていきましょう。

日本を代表する総合商社の伊藤忠商事は、5年連続のゴールドクラスを受賞しました。ここでは、同社が公開している「統合レポート2020」をもとに主な取り組みを紹介します。

まず環境面では、気候変動への対応について本社および支社や事業所の電力使用量を2020年までに2010年比で30%減らすことを目指していましたが、2019年時点で目標を大幅に超える44%減を達成。また、2019年2月には石炭関連事業について、「新規の石炭火力発電開発事業および、一般炭探鉱事業の開発は行わない」方針を公表しました。

社会面の取り組みでも実績を残しています。2013年度に労働環境改善のため「朝型勤務制度」を導入。20時以降の残業は原則禁止、朝5~8時からの出勤を奨励します。8時前の出勤には割増賃金が付いたり、無料で朝食の配布を行ったりとサポート体制も充実。

これにより、20時以降に退館する本社社員の比率は導入前と後で30%→6%(2019年実績)と大幅な削減に成功しています。

企業統治の面では定期的に第三者機関による取締役会の評価を実施。その実効性が維持されていることを確認したうえで、さらなる向上を目指しています。

林業や住宅・不動産事業などを主力事業とする住友林業は2年連続のゴールドクラスの受賞です。こちらも同社が公開する「サステナビリティレポート2020」より主な取り組みを紹介します。

住友林業では2011年からリサイクルチップや森林に放置された間伐材などを利用する「木質バイオマス発電事業」を開始しています。木が光合成で吸収してきた分以上のCO₂は排出されないので、大気中のCO₂の総量に変動を起こさないという「カーボンニュートラル」に基づいた、CO₂の排出を抑制する環境に配慮した取り組みです。

加えて、住友林業グループの住宅展示場に太陽光発電を搭載。これによりグループ全体における電力使用量のうち、再生可能エネルギーの利用比率は16%となりました(2019年実績)。

社会面では、性別や人種、年齢といった多様性を尊重するダイバーシティの一環として「女性活躍推進宣言」を発表。2021年までに女性の管理職比率を5.5%以上にすることを目指しています(2019年時点では4.2%)。また、ライフプランに合わせて定年時期を選べる「選択型定年制」を導入するなど、個人の選択の自由を尊重した施策も実施しています。

最近はESGやSDGsへの取り組みの認知度が高まったためか、商品の広告で「環境に配慮している」といったアピールを行う企業も多くみられます。企業の取り組みを応援するためにも、そうした商品の購入を検討するのもよいでしょう。

一方で、単にマーケティング効果を狙うだけで、実際にはESGやSDGsを必ずしも考慮しているわけではない企業も残念ながら存在しています。実際に欧米では、そうした企業はうわべを取り繕うという意味の「ホワイトウォッシング」にかけて、「グリーンウォッシング」「ESGウォッシング」などと批判を受けるケースも出てきています。

注目度が高まっている今だからこそ、私たちも注意深く企業の取り組みを評価する必要があるでしょう。

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Finasee編集部
金融事情・現場に精通するスタッフ陣が、目に見えない「金融」を見える化し、わかりやすく伝える記事を発信します。

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