2020年の人気ファンドにも影響?「社会貢献」の枠を超えたSDGsの現状

2020年の人気ファンドにも影響?「社会貢献」の枠を超えたSDGsの現状

  • 公開日:2021.03.05

Editor's Eye

普段ことさら社会貢献に意識を向けていない人でも、ESG、SDGsといった言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。環境・社会・企業統治の頭文字を取ったESGや、国連で採択された世界共通の「持続可能な開発目標」SDGsは、経済に直接関係しないようにも見えますが、実は企業経営、ひいては投資・資産運用の世界にも大きな影響を与えています。日本総合研究所でESG研究のスペシャリストとして活躍する小島明子氏が若者を対象に実施した調査結果を通じてESG・SDGsについて解説するシリーズ連載。最終回となる第3回では、言葉として広く浸透する「SDGs」の現状と、その担い手となる若者たちの考え方に迫ります。

最近、SDGs(エスディージーズ)という言葉をよく耳にするようになりましたが、そもそもSDGsとは、2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことを指します。

地球上の「誰一人として取り残さない」ことを理念とし、2030年を達成期限とする、先進国・途上国を問わず全ての加盟国を対象にした17のゴールと169のターゲットが示されています。17のゴールの中には、貧困の削減やジェンダー平等の実現、働きがいのある生き方と経済成長の両立などが掲げられています。その主体には、企業のような組織に限らず個人も含められており、社会全体でゴールの達成に向けて取り組むことが求められています。

2021年はオリンピックイヤーではありますが、新型コロナウイルス感染症は未だに収束しておらず、失業者も増えています。そのような状況であるからこそ、企業や個人は、見せかけではないSDGsへの貢献の在り方が求められています。そこで、本稿では、コロナ禍で求められるSDGsの在り方について考えます。

SDGsというと、以前から耳なじみのあるESG(環境・社会・企業統治)活動などと並んで社会貢献の文脈で捉える人も少なくないようですが、QUICK資産運用研究所の調査(2021年1月4日「2020年の投信、当初設定額1位は「未来ESG」 2位に滑り込んだのは?」)によれば、2020年に設定されたETFを除く、国内公募投資信託の設定額が最も多かった第1位は、「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)<愛称:未来のESG>」で、実に3830億円にも上ります。この設定額は、第2位の「HSBCグローバル・ターゲット利回り債券ファンド2020-12(限定追加型)」の949億円の約4倍に当たります。

ESG関連のファンドがここまで大きな資金を集めたことは、個人投資家の環境問題や社会課題解消に向けた企業--、まさにESG、あるいはSDGsに取り組む企業への投資に少なからぬ関心が集まっていることの一端と言えるでしょう。SDGsへの取り組みが企業成長、ひいては収益向上の要因と捉えられ始めている可能性があるわけです。

こうした流れを受け、近年、企業側が投資家の行動を意識し、ESG報告書の中でいかにESGやSDGsの取り組みを企業価値向上にもつなげているか、という点を謳う企業が飛躍的に増えていると感じます。

本来、企業が利潤の一部を社会に還元することはある種当然の社会的責任であるにもかかわらず、SDGsへの取り組みを通じた利益を投資家等にアピールすることに違和感を抱く人もいるかもしれません。

しかし、SDGsで掲げられたゴールを達成しようと考えたとき、それを社会貢献の範疇の中だけで行うには限界があります。社会課題を解決すると同時に利益が得られるからこそ、「継続的に」課題解決への貢献ができるからです。また、得られる利益が増えれば新たな雇用も創出され、別の社会課題解決へのイノベーション創出のための再投資にも活用できます。

SDGsという社会課題の切り口からビジネスの種探しをすることは決して悪いことではなく、社会をより良い方向に導いていくものだと考えます。

ただ、SDGsに対する世の中の関心が高まれば高まるほど、そのアピール効果のみを狙う、実態の伴わない「SDGsウォッシュ」(上辺だけの、白塗りでごまかしたという意味の英語「ホワイトウォッシュ」から派生した表現)企業が出てくるリスクがあります。

SDGsにおいては、自社の取り組みを評価するための指針を持つことが求められていますので、組織として経営の中に浸透させるプロセスが必要だと言えます。しかし、同じ企業の中でも、提供する製品・サービスの構造によっては、SDGsへの貢献をアピールできる部門や事業と、そうでないものが併存しているケースもあるでしょう。環境課題に解決できる事業がある一方で、社会からはいまだに必要とされているけれど、環境負荷が高い事業も抱えている、というとイメージがつきやすいかもしれません。

そのようなケースでは、自社の事業が抱えている環境や社会に与えるネガティブリスクをいかに軽減するか、という視点を持つことも必要だと言えます。実態とアピール内容が乖離した「SDGsウォッシュ」にならないようにするためには、やっているふりをしないのはもちろんですが、既存事業の問題点を改めて見つめ直す機会と捉えていくことも求められています。

では、企業や個人はSDGsへの貢献に向けて、このコロナ禍においてはどんなことに目を向けなければいけないのでしょうか。

SDGsでは「誰一人として取り残さない」、より良い社会を実現しようとしています。そのためには、次の社会を担う若者に目を向け、若者の考えや視点を取り入れる社会にしていくことが不可欠です。スウェーデンの高校生、グレタ・トゥーンベリ氏が2018年に起こした運動がきっかけとなって広がった地球温暖化防止に関するデモ活動を見るにつけ、将来の社会を最も真剣に考え、より良い社会に大きく変革していく原動力を持つのは、やはり若者なのだと考えます。

2020年5月に実施した日本総合研究所「若者の意識調査(報告)― ESGおよびSDGs、キャリア等に対する意識 ―」(以下、本調査)を見ると、SDGs17の目標の中で最も関心のある目標に、中学生、高校生、大学生ともに「貧困をなくそう」が選択されていることが特徴的です。

大学生(女子)、高校生(女子)中学生(女子)においては「ジェンダー平等を実現しよう」、「人や国の不平等をなくそう」、中学生全体においては、大学生、高校生に比べて「人や国の不平等をなくそう」の関心も高くなっています。

本調査では経済状態についても尋ねており、普通(52.7%)と回答した若者が最も多いものの、苦しいと回答した若者も約3割存在しています。新型コロナウイルスが経済的生活に悪影響をもたらしたと感じている若者は2人に1人に上り、特に経済状態がもともと苦しいと回答した若者においては約7割に上ります。

すでに、各種メディアでも報道されていますが、新型コロナウイルス感染症がきっかけとなり、経済的困窮などが原因で大学の退学や休学を行う大学生が出てきていることも深刻な問題です。

個人的な経済的不安だけではありません。自由回答の中では下記のようなコメントが挙げられており、日本社会そのものに対する経済的な不満や不安を抱えていることが分かります。

「大人が目先の利益を優先したつけは子供に回ることを忘れないでほしい」
「将来に金銭的負担を持ち込まないでほしい」
「若者をないがしろにして次世代につけが回ってくるようなことばかりしている」
「少子化なので、自分たちの上の世代を少人数で支えることになるのが不安」

さらに、「子供の意見をもっと反映してほしい」という声も少なくありません。

コロナ禍では、大人も雇用状況の悪化などの経済的な不安を抱えていますが、声を上げづらい若い世代の意見にも耳を傾け、貢献していくことが必要なのだと感じます。

***

2019年12月に改定されたSDGs実施指針では、「主なステークホルダーの役割」として次世代を担う若者が中核に位置付けられ、若者がよりその役割を担えるよう、教育にかかる政策・制度の充実が求められています。

少子高齢化が進む日本において、コロナの影響も加わり、ミドル世代は将来に対する漠然とした不安を、高齢者層は自身の介護の問題を抱えるなど余裕がない状況で、理屈では分かっていても、社会全体で若者に対してリソースを割こうという意思決定は容易ではないかもしれません。

しかし、そのような状況だからこそ、企業が中心となり、若者というステークホルダーを重要視しながら、SDGsを推進することが期待されます。コロナ禍だからこそ、長期的視野に基づき企業が若者への投資(支援等)を行うことが、まわりまわって、SDGsゴールの達成を導く若者を増やすことにつながるのだと考えます。

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著者

小島 明子 日本総合研究所 スペシャリスト
小島 明子
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、国家資格キャリアコンサルタント。金融機関を経て日本総合研究所に入社。IESS客員主任研究員兼務。環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からの企業評価業務に従事。その一環として、女性を含む多様な人材の活躍推進に関する調査研究、企業向けに女性活躍や働き方改革推進状況の診断を行っている。主な著書に「女性発の働き方改革で男性も変わる、企業も変わる」(経営書院)、「わたしのための金融リテラシー」(共著・金融財政事情研究会)。

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