一般企業の見方とは異なる? 「日経平均株価のEPS」分析の注意点とは
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一般企業の見方とは異なる? 「日経平均株価のEPS」

  • 公開日:2021.03.03

Editor's Eye

EPS(Earnings Per Share/1株あたり利益)は企業の収益力を評価する際に用いる経営指標で、株価が割安かどうかを判断するPER(Price Earnings Ratio/株価収益率)の算出にも用いられる。日経平均の動向をチェックする上でもよく目にする指標の一つだが、実は正確に言うと個別銘柄とは算出方法が異なるため、見方には注意が必要だ。市況をより正しく理解するために、EPS、PERについておさらいしながら現状分析に活かしていこう。

2021年2月15日、日経平均株価は30年半ぶりの3万円台を回復した。改善した企業業績が反映され、日経平均採用銘柄の収益力を判断する予想EPSも直近で1267円と、昨年末比で2割弱増加した。株価の上昇に伴ってEPSの値も増加したことで、今期予想ベースのPERは23.3倍(12日算出時点)に。2020年11月9日以来、約3カ月ぶりの水準となり割高感は若干、和らいだようにみえる。

あらためて確認しておくと、EPSとは株主が保有する1株あたりに対し、その企業が1年間でどれだけの利益をあげたかを示す指標だ。一般的には値が大きいほど収益力が高く、優良な企業と判断することができる。算出方法は以下の通りだ。

EPS = 当期純利益 ÷ 発行済株式総数

当期純利益とは、年度中に得たすべての収益から法人税や住民税などを差し引いた経営活動における純粋な利益を指す。

例えば1000万株を発行している企業が1億円の当期純利益を上げたとすると、

1億円 ÷ 1000万株 = 10円/1株

と1株あたり10円の利益を上げたこととなり、EPSは10円となる。

投資において、EPSは単純な値の大小だけでなく、その推移も重視される。株価の算出には「EPS×PER」の計算式が用いられることがあるが、この式からはEPSが上がれば株価も値上がりすると考えられる。EPSが前期、前々期と比較して上昇傾向にあれば、将来的な値上がり益も期待できるのだ。

これまでの説明をもとにすると、「日経平均株価のEPS」とは「日経平均の1株あたり利益」といえる。しかし、ここで注意したいのが「日経平均」は株価指数の一つであり、日経平均という企業があるわけではないという点だ。

日経平均株価とは東証1部に上場する全2194社(2021年3月1日現在)から、日本経済新聞社が業種などのバランスをもとに選んだ225社の平均株価を指す。

詳しく説明すると、正確には単純に225社の株価を合算してその社数で割っているわけではない。

実際には、時価総額の違いや株式分割などによる影響を考慮した調整が行われている。株価の合計は銘柄ごとの「みなし額面」をベースに算出され、割る数(除数)も銘柄の入れ替わりの度に設定される特定の数値を利用する。どちらも日本経済新聞社によって定められており、このうち、みなし額面とは株価の水準をそろえるための考え方だ。50円を基準とし、みなし額面が50円ならば、株価をそのまま日経平均の算出に採用。500円などの場合は株価を10分の1にすることで、株価の高い銘柄の影響を抑えている。

各構成銘柄の採用株価=株価×50(円)÷みなし額面(円)

日経平均株価=構成銘柄の採用株価の合計÷除数27.769(2021年3月1日現在)

日経平均株価のEPSを求める場合、当期純利益に該当するのは「225構成銘柄の予想1株あたり利益の合計」となる。そこで、まずは「各構成銘柄の予想1株あたり利益」を計算する。

各構成銘柄の予想1株あたり利益=1株あたりの純資産×50(円)÷みなし額面(円)

その上で、各1株あたり利益を合計した値を、除数27.769で割る。

日経平均のEPS=225構成銘柄の予想1株あたりの合計÷27.769(2021年3月1日現在)

ここで注意したいのが、1株あたりの利益はあくまでも予想値を利用しているということ。225の構成銘柄の中には業績予想を非開示にしている企業もあるが、日経平均のEPSはそれらも含めて算出される。そのため、EPSをもとにPERを計算しても場合によっては現実とかけ離れた異常値が出る可能性があり、単純に割高か割安かどうかを判断するのは難しい。

またEPSが高くなると「好業績」、低くなると「業績悪化」と単純に評価される。しかし、業績予想を非開示にしている企業が含まれる限り、あくまでも目安として捉えておく必要がある。

前述の通り、日経平均のEPSは同PERを算出するのにも用いられる。日経平均EPSから算出した2021年3月1日時点の日経平均PERは22.19。日経平均のPERはここ10年、14〜16倍で推移していたことから例年よりは割高であると考えられる。

一方、NYダウのPERは32.09倍となっており、NYダウよりは割安だと捉えることもできるだろう。

ちなみに個別銘柄の場合、EPSを時系列で追っていくと、その企業が適切に増資できているかを判断できると考えられている。例えば企業が新規参入や事業拡大を行う際、新株を発行して資本金を増加させたとする。株式発行数が増えるため一時的にはEPSは下がるが、今後利益を上げることができれば回復する。このことから、継続的にEPSを維持、もしくは上昇させている企業は成長性が高く、健全な増資を行えていると判断することもある。

株価の変動や企業の業績予測にはいろいろな要因が絡む。とくに日経平均株価については割安、割高といった情報が飛び交い、困惑することも多いだろう。日経平均のEPS、PERについて正しく理解しておけば、現状に惑わされることも少なくなるだろう。

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著者

吉田 祐基 ライター・編集者
吉田 祐基
各種金融系情報誌の編集・執筆業務を行うペロンパワークス所属。AFP/2級FP技能士。大手不動産情報サイト編集記者を経て入社。株・投資信託、保険などの編集・執筆を担当。

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