投信選びにはここが役立つ! 春の風物詩「ファンドアワード」の注目点
篠田尚子のファンド愛 13

投信選びにはここが役立つ! 春の風物詩「ファンドアワード」の注目点

  • 公開日:2021.03.10

Editor's Eye

この時期、複数の投資信託評価会社などが発表する「ファンドアワード」。多くのメディアで取り上げられることもあって話題にはなるものの、受賞ファンドが本当に優れたファンドなのか、疑問に思う人は少なくないかもしれない。そこで、ファンドアナリストの篠田尚子氏に、アワードの評価手法、さらにはその結果をファンド選びに役立てるためのポイントを解説してもらった。

毎年1月から3月ごろは、ファンドアナリストが最も忙しくなる時期である。というのも、この時期は投資信託の評価会社などが公表する「ファンドアワード」の選考作業が佳境を迎えるためだ。筆者も、投信評価会社時代は例年、11月ごろから何度もデータを精査し、翌1月下旬に優秀ファンドを最終確定させるまで慌ただしい日々を過ごしていた。

さて、その「ファンドアワード」。日本では、毎年2月から4月にかけて前年末時点のデータを基に、モーニングスター、リッパー、格付投資情報センター(R&I)の投信評価会社のほか、筆者の所属する楽天証券も優良な成績を収めた投資信託をファンドアワードの形で表彰している。表彰部門や評価期間などの違いはあるにせよ、運用効率がよく、成績が安定した投資信託を表彰するという基本的なコンセプトは各社で共通している。

したがって、各社のアワードを「総なめ」にするファンドも毎年数本誕生する。1社だけでなく、複数社でアワードを受賞したファンドをチェックすることは、ファンド選びのヒントにもなる。

先述した「運用効率のよさ」や「安定した成績」とは、つまり「リスク控除後」のリターンの高さである。ファンドアワードに限らず、投信評価の世界では一般的に、そのファンドが取ったリスクの大小を考慮に入れて評価を行う。

リスク控除後のリターンを表す代表的な指標には「シャープレシオ」がある。シャープレシオとは、負ったリスクに対してどれだけリターンをあげることができたかを表す指標で、以下の数式で求められる。

[リターン(平均収益率)- 安全資産のリターン] / リスク(標準偏差)

上記の数式によって算出された数値が大きくなるほど、「低いリスクで高いリターンが得られる運用効率がよい投資信託」であることを意味する。一般的に、この数字が1を超えていると優良な投資信託であるとされる。

投信評価会社各社のファンドアワードでは、必ずしも全社でシャープレシオが採用されているわけではないものの、何らかのリスク調整後リターンに各社独自の改良を加えて定量評価を行い、優秀ファンドを選出している。この「独自の改良」には、リターンが同じカテゴリーの平均を下回った場合にペナルティを課すような設計にしていたり、ローリングリターン(ある一定の期間のリターンについて、起点と終点をずらして計算したもの)も考慮に入れたりといった内容が含まれる。

なお、単純なリターンではなく「リスク控除後」のリターンを重視するのは、運用成績に含まれる「偶然」や「まぐれ」の要素を極力排除するためである。リターンのみで単純比較すると、よかった成績が、例えば上昇相場で「げたを履かせてもらっていた」など環境要因の影響によるものかどうかの見極めができない。このため、リターンの根拠となるリスクの大きさを考慮に入れることで、身の丈に合った運用ができているかの判断が可能になるというわけだ。

話をファンドアワードに戻そう。実は、アワードの具体的な定量評価プロセスの開示の度合には各社で濃淡がある。特に先述した「各社独自の改良」部分については、世界的に見ても詳細が開示されているケースは少ない。一定の透明性の確保は必要だが、この各社の評価基準の違いこそが投信評価会社の心臓部でもあり、すべてを開示しろというのは酷といえよう。

では、個人投資家はどのようにファンドアワードの結果を活用すればよいか。重要なのは、各社の選考プロセスを事細かに突き詰めることではなく、受賞ファンドの傾向を把握することである。先述した各社のアワードを「総なめ」にしているファンドがあるなら、まずはそこに着目してほしい。定量評価の基準に多少の違いがあっても、複数社で優秀ファンドの称号を得ていれば、そのファンドは該当のカテゴリーで頭1つ2つ飛びぬけている可能性が高い。

また、複数年にわたり連続でアワードを受賞しているファンドに着目するのもよいだろう。この「複数年受賞」には2つのパターンがある。

1つは、例えば2018年、2019年、2020年など毎年連続でアワードを受賞するパターン。そしてもう1つは、リッパーやR&Iのように同じ年のアワードで、1年、3年、5年、10年など複数期間の優秀ファンドに選出されるパターンである。いずれも、良好なパフォーマンスが一過性のものではないということを裏付ける一つの目安となり、ファンド選びの参考にできるだろう。

ファンドアワードはあくまでも過去の運用実績に基づいた評価のため、結果だけを過信することは禁物だ。とはいえ、長年投信評価に携わってきた身としては、「過去の成績は将来を保証するものではない」と切り捨ててしまうのも、またもったいないと思ってしまう。実際に長期にわたって安定した成績を収めている「超」優良なファンドは、何かしらのアワードを受賞しているケースが多いからだ。ファンド選びに迷っている方は、本稿でご紹介した活用法を銘柄選びにぜひ役立ててほしい。

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著者

篠田 尚子 楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
篠田 尚子
慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【最新版】本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』(SBクリエイティブ)。

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