iDeCo(イデコ)と住宅ローン控除 併用時、注目すべきは「減税額」
セミナー講師が伝えたい マネープランのツボ 7

iDeCo(イデコ)と住宅ローン控除 併用時、注目すべきは「減税額」

  • 公開日:2021.03.15

Editor's Eye

「自分がもらえる年金、月にいくらかご存知ですか」。人生100年時代、大多数の人に関係し、「もらえる」というポジティブな情報でありながら、即答できる人はほとんどいません。しかし、おさえるべき知識を身につけておけば、リタイア後に向けたマネープランはもっとスムーズに、自分の思う通りに組めるはず。証券会社に所属し、企業等の従業員に向けたライフプランや資産形成のセミナー講師を務める小出昌平氏が、マネープランのよくある疑問について解説する連載。第7回で取り上げるのは、ふるさと納税と同じくお得な税控除制度として知られる住宅ローン控除(減税)。iDeCoと併用すると減税枠を使い切れずに残ってしまう「使い残し」が生じるようですが、その影響はどの程度なのか? シミュレーションを基に解説します。

iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は税制メリットが大きい、お得な制度です。iDeCoで積み立てた掛金は全額が所得控除の対象になり、所得税と住民税の負担が減ります。老後の準備をしながら現在の「手取り」が増えるということですから、とてもうれしい制度ですよね。

現在の「手取り」が増えるという意味では、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)も現役世代の強い味方です。

簡単にご説明すると、一定条件を満たした住宅を返済期間10年以上のローンを利用して取得すると、入居の年から10年間、年末時点のローン残高(上限4000万円)の1%を所得税や住民税から控除できる制度です。2019年10月の消費税増税後、10年間の控除期間が特例として最長13年間に延長されましたが、コロナ禍を踏まえ、この特例の「入居期限」も2020年の12月末から2022年末までの入居に延伸されることとなりました。

iDeCoも住宅ローン控除もお得な制度ですが、併用したときの税控除額はお互いに影響し合う関係性にあります。

マイホーム購入は人生の大きなライフイベントなので、セミナーでもiDeCoと住宅ローン控除の関係についての質問をよくお受けします。結論から申し上げれば、iDeCoを始めると“住宅ローン控除の枠”で受けられる控除が減ることはあります。でも、それが損なのかどうかは考え方次第だと思います。

今回はその理由と、住宅ローン控除とiDeCo併用時のお互いの影響度合いについてご説明しましょう。

***

セミナー参加者(以下、参加者)
iDeCoを始めたいと思っているのですが、同僚に「住宅ローン控除を使っている間は、何か注意点があったような気が……」と言われました。iDeCoと住宅ローン控除って、併用はできないのですか……?

講師
いやいや、できないわけではありません。注意点というのはおそらく、税額控除されて所得税として戻ってくるお金が減ってしまう件だと思います。

参加者

出ました、「税額控除」! やっぱり今回も、「そもそも『控除』とは?iDeCo(イデコ)の税金メリットをざっくり解説」で聞いた考え方が出てくるんですね。どういうことなんでしょうか?

講師
では、住宅ローン控除とiDeCoの控除の関係をご説明しましょう。
住宅ローン控除の種類は「税額控除」です。以前ご説明した図の(4)の行にありますね。そして、iDeCoの控除の種類は「所得控除」ですから、図では(2)の行と、「税額控除」より上にあるのが分かるかと思います。

 

参加者
となると、税額計算の流れでは、住宅ローン控除よりも、iDeCoのほうが先に控除されるんですね。

講師
その通り。つまり、iDeCoを始めると、これまでに比べ、(2)の行で課税所得が減って、(3)の行の「税額」……図の一番右ですね、これも減ることになるのです。
例えば、この「税額」が住宅ローン控除の額よりも少なくなると、どうなると思いますか?

参加者
(4)の行で、「納税額」がマイナスになるってことですよね? そうすると、所得税はゼロになってうれしいのですが、せっかくの住宅ローン控除を使い残してしまうのは残念ですね……。

講師
そうなんです。今おっしゃった点がまさに、「iDeCoと住宅ローン控除の併用は損!」と喧伝される理由ですね。
でも、所得税から控除し切れなかった分は、翌年分の住民税から控除されるって知っていましたか?

参加者
えっ?そうなんですか! それなら、住宅ローン控除「枠」の使い残しは、実質的にないってことになりますね。

講師
住民税から控除できる分は上限があるので、使い残しが「なくなる」と言い切れるわけではありません。ただ、住民税からも控除できる事実は、意外とご存じない方が多いようですね。
前回の「試算で検証!iDeCo(イデコ)とふるさと納税は『併用したら損』なの?」同様、今回も具体的な試算をご紹介したいと思いますが、その前に確認させてください。
はじめに、「iDeCoを始めたい」とおっしゃっていましたよね?

参加者
ええ、そろそろ老後資金の準備を始めようと思って……。

講師
そうすると、比較すべきは、住宅ローン残高があることを前提として、老後資金の準備はひとまず預金などで準備する、iDeCoを併用しない場合と、iDeCoを併用する場合の2パターンになりますね。

参加者
そうか……iDeCoとの併用が損になるなら、iDeCo以外の選択肢も考えておかなければいけませんね。
そうなった場合は、おっしゃる通り、住宅ローン控除を受けている間は預金で老後資金を積み立てようと思います。

講師
分かりました。
それでは、■本人年収500万円(税引き前)■年末時点の住宅ローン残高は2500万円(年収の5倍)という前提で、独身または共働き、夫婦のみ、夫婦+子1人のそれぞれについて、■老後資金準備として毎月2万円(年間24万円)の積立を、iDeCo以外(預金)で実施する場合、つまり、iDeCoを併用しない場合とiDeCoを併用する場合で、減税額と住宅ローン控除の使い残し額を比較してみましょう。

講師
まずは「iDeCo併用なし」をご覧ください。これがいわば、住宅ローン控除単体でのメリットと言えるでしょう。
独身または共働きだと、所得税と住民税の負担が、年末時点の住宅ローン残高2500万円の1%、25万円も減ることになるのです。

参加者
これはうれしいですね~。でも、わが家は夫婦2人暮らしなので、この試算だと住宅ローン控除の使い残し額の分だけ、減税額が減りますね。そうなると、やはり妻とは別れたほうがいい……?

講師
またその話ですか(呆)! どうしても住宅ローン控除に使い残しがあるかないかだけで考えてしまいがちですね。
そもそも、なぜ、使い残しが出てくるのですか?

参加者
それは、配偶者控除があるからですね。その分だけ課税所得が減って、税額が減って、税額控除するとマイナスになる、ということだと思います。

講師
よく理解されているじゃないですか!
そうです。iDeCo併用なしのケースで減税額が大きいというのは、負担している所得税と住民税が多い、ということなのです。
まあそもそも、他のご家庭と比べてもあまり意味がないことではありますが、使い残しが出てくる理由は理解いただけたかと思います。
それでは、次にiDeCo併用ありのケースを確認してみましょう。独身または共働きを例にして併用なしのケースと比較すると、どんなことが言えそうですか?

参加者
え~と、そうですね……まず、iDeCoの年間24万円の積立は全額が所得控除の対象になりますから、減税額が25万円から29.6万円に増えるってことですね。
そして、iDeCoの所得控除で負担すべき所得税と住民税が少なくなるので、住宅ローン控除の「枠」に2000円の使い残しが出る、ということだと思います。

講師
その通りです。それでは、改めて伺いますよ。
iDeCo併用なしの場合、住宅ローン控除を使い切ることができますが、減税額は25万円。
一方、iDeCoを併用した場合、住宅ローン控除は2000円使い残しますが、減税額は29.6万円。
いずれにしても、老後資金の積立額は変わらないとすれば、どっちをやりたいですか?

参加者
そりゃあ、迷うことなく減税額が大きいiDeCoのほうを利用したいと思いますよ。
って、そうか……! だから、住宅ローン控除の使い残しがあるかないかだけで考えてはダメってことなんですね。

講師
そういうことです。少なくとも、「住宅ローン控除を使い残すからiDeCoは損だ」と決めつけるのはやめた方がよさそうですよね。要は減税額、つまり、手取りが増えるのか減るのかを判断基準にすればいいのです。

参加者
でも、試算してもらった減税額って、自分では計算できそうにないのですが……。

講師
一番のおススメは、ご自身で確定申告をやってみることですね。そうすると、税額計算の流れを具体的にイメージできるようになります。
ただ、「忙しいし、そこまではちょっとできないな……」という人も多いでしょう。そんなときは、最低金額の月5000円の積立でiDeCoを始めてみてはどうでしょうか? 今回ご紹介した試算でも、所得控除が少なければ少ないほど、住宅ローン控除の使い残し額も少なくなっていますので。

参加者
そうですね、分かりました。
住宅ローンがあるからといってiDeCoを敬遠するのではなく、まずは少しずつiDeCoで老後資金の準備を始めたいと思います!

***

iDeCoとふるさと納税の関係と同じように、iDeCoと住宅ローン控除の関係も微妙です。しかし、iDeCoの所得控除による税制メリットまで考えると、住宅ローン控除の「使い残し額」以上に手取りが増えることがあります。

もちろん、他にもたくさん所得控除がある人や、そもそも年収と比較して過大な住宅ローンを抱えている人は、iDeCoの税制メリットが十分に発揮されないケースもあるでしょう。でも、先ほどご説明の通り、「iDeCoと住宅ローン控除の併用は損」と最初から決めつけないほうがいいと思います。

私が住宅ローン控除の使い残しよりも「もったいない」と感じるのは、「iDeCoとの併用は損だ」と考えて、住宅ローン控除を受けている10年もの間、iDeCoの利用開始を先延ばしすることです。10年間の投資経験を積み立てられるか否かが、現役世代の皆さまにとっては大きな違いになると思うからです。この投資経験が100年続く人生に向き合うための金融リテラシー、ひいては、生き抜く力につながるのであれば、住宅ローン控除の多少の使い残しは気にする必要はないと思います。

最後は何が「損」なのか、「もったいない」のか、という禅問答のような話になりましたが、大切なのは、考えるよりも行動を起こすことではないでしょうか。今回のコラムが、皆さまの前向きな一歩を後押しするきっかけになれば幸いです。

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著者

小出 昌平 大和証券 ライフプランビジネス部 担当部長
小出 昌平
1993年4月大和証券入社。投資信託の開発や富裕層ビジネスの企画・運営業務などを経て、2015年より確定拠出年金業務に従事。現在は、iDeCoと呼ばれる個人型確定拠出年金の周知・普及活動に携わりながら、自治体や事業会社の職場における金融・投資教育、ライフプラン教育の支援活動に取り組み中。

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