保険に勧誘されても熟考を! 新社会人は原則「保険より、まずは貯金」
フレッシャーズに贈る お金の基本これだけは3

保険に勧誘されても熟考を! 新社会人は原則「保険より、まずは貯金」

  • 公開日:2021.04.07

Editor's Eye

経済コラムニストの大江英樹さんが、5回にわたってフレッシャーズの皆さんに覚えてほしいお金の基本を解説する短期集中連載。第3回のテーマは「保険」。社会に出ると、保険の勧誘に遭遇することもあるでしょう。「備えるに越したことはないのだから、入っておいた方が良いのでは?」と思われるかもしれませんが、一度加入すれば、基本的に掛け金を長期にわたって払い続けることになる、高い買い物でもあります。「良い気がする」だけで加入するのは早計です。保険の本質を知ったうえで、よく検討してください。

社会人になると生命保険を勧められることが多くなります。

もちろん最近はセキュリティ上の理由もあって、職場の内部に保険のセールスの人が出入りすることは少なくなりましたが、それでもビジネス街の喫茶店やカフェで時間を過ごしていると、周りで保険の勧誘と思しきやりとりを耳にすることがあります。これから皆さんも「社会人になったのですから、保険に入るのは一人前の大人として当然です」とか「保険に入るのは社会人としての責任です」みたいなことを言われることもあると思いますが、これらは全くの間違いです。

結論から言えば、新入社員の人は生命保険に入る必要は全くありません。これは別に難しい話ではなく、保険というものの本質を正しく理解していれば誰にでも納得できることです。保険の役割は「めったに起こらないけど、もし起こったらとても自分の蓄えではまかなえないこと」に対応するためにあります。つまり「確率極小、リスク極大」に備えるのがその役割です。わかりやすい例でお話しましょう。

例えば自動車を運転する時には「対人賠償保険」は絶対に必要です。なぜなら死亡事故などは滅多に起きないけれど、もし起きてしまったら、とても自分のお金では賠償金を払うことなど不可能だからです。ところが車両保険の場合はどうでしょう? 対人賠償には必ず入る必要はありますが、車両保険は場合によっては不要と考えて入らない人もいます。その理由は自分の車を車庫入れの時にこすったり、ちょっとしたところにぶつけて凹ませたりすることは割とよく起きるからです。つまり保険というのは起きる頻度が高いほど保険料は高くなります。死亡事故の起きる確率は限りなく低いので、年間数万円程度の保険料で無制限の対人賠償がまかなわれるのです。

一方、対人賠償と違って、自分の車の修理代は最大でも自分が買った価格以上になることはありません。したがって、対人賠償のような「確率極小、リスク極大」の事態に備える保険は絶対必要ですが、「確率中、リスク中」というような車両保険の場合は、ケースによって保険料が高くなるので加入せず、もし自分の車が傷ついた場合は、自分の貯金を使って修理すれば良い、ということなのです。

では新入社員の生命保険はどうでしょう? 先ほどの「確率極小、リスク極大」という法則で考えると、入るべきなのは「若いけれど、結婚していて子供もおり、かつ奥さんが専業主婦で働いていない人」です。独身の人は全く入る必要はありません。生命保険というのは万が一、自分が死んだ時に経済的に困る人がいる場合に、入っておいた方がいいわけで、独身の場合は、自分が死んでも、悲しむ人はたくさんいるでしょうが、経済的に困る人というのはまずほとんどいないでしょう。そんな人が生命保険に入るのは全くのお金の無駄です。そんな保険料を払うくらいなら、その分は貯金をしておくべきです。

中には医療保険に入ることを勧める人もいますが、医療保険というのは基本的には全く無用の長物です。そもそも民間の医療保険では治療費自体は一銭も出ません。治療費がまかなわれるのは健康保険などの公的な医療保険です。ただ、公的医療保険でまかなえない部分、例えば病院へ行くタクシー代とか入院した時の食事代、そして個室等へ移る場合の差額ベッド料をまかなうというのが民間の医療保険の役割です。だとすれば、そんなものに入る必要はなく、ただ、貯金をしておけば良いだけです。

貯金の良いところは貯めておきさえすれば、使い道は自分で自由に決められることです。病気になれば、そこから出せば良いですし、幸い病気にならなければ、旅行に行ったり美味しいモノを食べたりすることに使えます。保険のように目的限定型でお金を突っ込むのは極力少なくした方が良いでしょう。

また、中には「貯蓄型保険」や「個人年金保険」を勧める人もいますが、これも保険本来の目的を考えれば全く必要のないものです。そもそも保険の目的は保障にあります。つまり将来の不幸や不安に備えてみんなで保険料を出し合うのがその仕組みです。

ところが貯蓄の目的は将来の楽しみのために自分で蓄えることです。つまり保険と貯蓄ではその目的や仕組みは正反対なのです。にもかかわらず、「掛け捨てがもったいない」からと言って保険に貯蓄機能を求めるのは大きな間違いです。なぜなら限られた保険料の中から運用に回す部分と保障に回す部分の両方が充てられるからです。

結果、保障としても運用としてもどちらにも中途半端なものになってしまいます。ところが中には「自分はズボラでなかなかお金を貯めることができない。保険ならば、強制的に貯めることができるから良いのだ」と言う人がいます。でも、それなら会社の天引き貯蓄や天引き投資で十分でしょう。

それにズボラな人は結局何をやってもだめだと思います。自分のお金に関することはきちんと自分で管理することを考えることが大事です。

保険というのは、その意味や本質を深く考えずに"何となく”入ってしまっている人も多いでしょうが、人生における大きな買い物の一つであることを考えると、もう少しじっくりと考えた方がいいのではないでしょうか。

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著者

大江 英樹 経済コラムニスト
大江 英樹
1級ファイナンシャルプラニング技能士、CFP®、日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員、日本FP学会会員、上級生涯生活設計コンサルタント。大手証券会社において25年間、個人の資産運用相談に携わり、2001年10月より確定拠出年金における投資教育業務に従事した後、2012年に独立。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。

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