日銀の政策点検を読み解く! 金融緩和は続き、株価の上昇圧力も継続
金融ジャーナリスト・鈴木雅光が読み解くニュースの本質 10

日銀の政策点検を読み解く! 金融緩和は続き、株価の上昇圧力も継続

  • 公開日:2021.04.01

Editor's Eye

3月18日と19日に開催された金融政策決定会合で、日銀はこれまでの金融緩和策を点検し、政策に修正を加えました。今後の投資戦略を左右するという意味でも注目されていましたが、事実、直後の日経平均株価は大きく下落。さらに長い目で見ると、今回の修正はどんな影響をもたらすのでしょうか。金融ジャーナリストの鈴木雅光氏がその内容を読み解くとともに、今後の相場環境を見通します。

日本銀行は3月18、19日の両日にわたって開催した金融政策決定会合で、これまでの金融緩和政策に関する点検結果を発表しました。これまで8年近く続いた大規模な金融緩和を点検するとともに、今後も当面、金融緩和を継続するためにいくつか政策に修正を加えています。

今回の点検結果で注目されたのは、日銀が2013年4月から導入した「量的・質的金融緩和」が経済活動や物価に対してどのような影響を及ぼしたのかということです。黒田日銀総裁のもと、8年にわたって続けてきた金融政策を振り返り、総括したものといってもよいでしょう。

日銀の見方としては、「金融環境が大きく改善し、経済活動の押し上げや企業収益の改善につながった」のと同時に「物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなった」ものの、「2%の物価安定の目標の実現には至らなかった」というものでした。

こうした点検の内容を踏まえ、日銀が持続的かつ効果的な金融政策運営を続けるために必要な政策修正も行われています。

特に昨今の経済情勢で気になるのは、新型コロナウイルスの感染拡大による、経済活動面へのネガティブな影響です。中でも中小企業が資金繰りの悪化に直面しないようにするため、また、マイナス金利を深掘りした際に金融機関の収益が圧迫されないようにするため、新たに「貸出促進付利制度」が創設されました。

マイナス金利は日銀が金融機関から資金を預かる際に、残高の一部にマイナス0.1%の手数料を課すため、金融機関の収益を圧迫します。加えて預金金利と貸出金利の利ザヤも減少することから、さらなる収益圧迫要因になります。

そこで将来、さらにマイナス金利が深掘りされたとき、金融機関の収益力が今以上に低下することを防ぐために貸出促進付利制度が設けられたのです。具体的には、金融機関が一定のリスクを取って融資を実行した場合、金融機関が日銀に開設している当座預金に上乗せ金利を付利するというもので、マイナス金利が大きくなるほど増えるという性質を持っています。

つまりマイナス金利によって一時的に金融機関の収益力が低下したとしても、貸出促進付利制度によって日銀から金利収入が得られるため、収益力の低下を補うことができます。事実上の補助金といってもよいでしょう。

「黒田バズーカ」と称された量的・質的金融緩和は、ついに9年目を迎えたわけですが、まだしばらく金融緩和の状態は続きそうです。そもそも日銀が物価ターゲットとしている2%の達成にはほど遠い状況が続いているからです。金融引き締めに転じることなどまず不可能ですし、おそらく引き締めでも緩和でもない中立の金融政策にすることすら、まだまだ先のことでしょう。

今回、発表された金融政策の修正点では、長期金利の変動幅を0.25%程度まで容認することも示されました。従来、0.1%程度とされたのが0.25%まで引き上げられれば、それだけ債券相場の変動幅が大きくなるため、債券のディーリングを行っている金融機関にとっては、いま以上にディーリング収益を上げる余地ができ、収益面にはプラスになる可能性があります。

とはいえ、容認された変動幅は0.25%ですから、長期金利が上昇したとしても、たかが知れています。したがって、長期金利の低空飛行は今後もしばらく続くと見たほうがよいでしょう。

そして金融緩和が継続されるとすれば、当面は過剰流動性相場が続くと見ることができます。自然体で考えれば、株価には当面、上昇圧力がかかるでしょう。

株式市場にとって、政策修正のひとつであるETFの買い入れ柔軟化は、ポジティブ要因です。これまでは原則として年間6兆円をETFの買い入れメドにしていましたが、このメドを撤廃して、12兆円という上限枠のみが残されました。これにより、従来以上に機動的なETFの買い入れができるようになります。

ただし、ETFについては買い入れの対象をTOPIX型のみにすることが決められました。結果、金融政策決定会合の直後の東京株式市場では日経平均株価への寄与度が高いファーストリテイリングやソフトバンクグループの株式が大きく売り込まれ、日経平均株価は大幅な調整を余儀なくされました。

もっとも、今後も過剰流動性が続くとしたら、この調整局面も一時的なもので終わるでしょう。事実、3月18日から日経平均株価は下落し続けたものの、値下がり銘柄数よりも値上がり銘柄数のほうが多い日もありました。保有している銘柄群によっては、自分のポートフォリオの状況と日経平均株価の値動きの乖離に不思議な気持ちを抱いた投資家もいたはずです。

こうしたねじれ現象が長く続くことはないので、そう遠くないうちに株価は底を打ち、再び全体相場が過剰流動性に押し上げられる展開になると思われます。

最後に、気になる点をひとつ。ある銀行アナリストに聞いた話ですが、日本の銀行が保有している資産のデュレーションは5年程度だそうです。つまり、このままマイナス金利政策が続くと、金利収入が得られる資産はそろそろ底を尽き、銀行のバランスシートが悪化する恐れがあるという話でした。

いま菅政権のもとで地銀再編がまことしやかに語られています。今回の政策点検と政策修正はマイナス金利の長期化を示唆したものであり、その点で考えると、地銀再編の動きがいよいよ加速するのかもしれません。

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著者

鈴木 雅光 金融ジャーナリスト
鈴木 雅光
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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