『おまかせNISA』登場! ロボアド次なる展開は総合金融サービスか

WealthNavi「おまかせNISA」の登場から考える、ロボアドの次なる戦略は?

  • 公開日:2021.04.08

Editor's Eye

「WealthNavi(ウェルスナビ)」の預かり資産は4000億円を突破。さらに同じくWealthNaviより、NISAに対応したロボアド「おまかせNISA」という新サービスも登場した。今やロボアドの認知拡大というフェイズから、次のステージに上がりつつあるロボアド界。そこで、最新の動向をレビューしつつ、今後ロボアドはどこへ向かうのかまでを、ロボアドの登場以来ウォッチし続け、ロボアドに関する著書もある松岡賢治氏に解説してもらった。

金融商品としての「ロボアドバイザー」(以下、ロボアド)が好調だ。業界シェアトップの「WealthNavi(ウェルスナビ)」(ウェルスナビ)の預かり資産は4000億円を超えた(2021年3月31日時点)。足元では、残高が月間で約200億円以上増加するというハイペースを記録しており、シェアをさらに拡大させている状況だ。

トップとの差は開いてはいるものの、2番手グループの「THEO(テオ)」(お金のデザイン)と「楽ラップ」(楽天証券)も、まずまず残高を順調に伸ばしている。2020年12月時点のデータではあるが、THEOの預かり資産は約770億円で口座数は10万件、楽ラップは約810億円で5万件となっている。

ロボアドのような、「お金を口座に入れさえすればあとは自動で運用してくれる」という投資一任型の金融商品は、他には「ラップ口座」がある。2010年頃から個人投資家を対象とした販売がスタートし、証券会社の大ヒット商品となった。

しかし、ここ数年をみると、残高、口座数ともに伸び悩んでいる。預かり資産は大手証券会社では2兆円台をキープしているが、口座数ではすでにWealthNaviに抜かれてしまった。ラップ口座を含めた投資一任型は、WealthNaviが業界トップとなっているのだ(2020年12月時点で約23万口座)。THEOも口座数では健闘しており、SMBC日興証券、野村證券、大和証券に次ぐ5番手となっている。

ただし、2021年7月末をめどに、THEOの証券口座はSMBC日興証券に移管される予定となっている。THEOは運用業務に特化し、サービスの窓口や口座の管理はSMBC日興証券が行う見通しだ。したがって、口座の移管が完了した後は、預かり資産や口座数で大きな変動が出る可能性がある。

こうした状況下、ロボアドに新しいサービスが登場した。2021年2月、WealthNaviが提供を開始したNISA(少額投資非課税制度)口座でロボアドが使えるという『おまかせNISA』である。その名のとおり、一般NISA口座の非課税枠内で、WealthNaviが利用できるというもので、以下のように、NISA向けにいくつかのカスタマイズがされている。

『おまかせNISA』のプロセスは、①金融商品の選定→②商品ごとの購入額の決定→③非課税枠の活用→④資産の購入→⑤毎月の積み立て→⑥資産のリバランス、というステップを踏んでいく。この中で特徴的なのが、③非課税枠の活用だ。

一般NISAの年間の非課税枠の上限は120万円。投資金額120万円までは、配当や分配金、売却益といった利益が発生しても、約20%の税金が非課税となる。『おまかせNISA』では、この非課税枠の上限に達するまではNISA口座で運用される。そして、120万円を超えた分は、通常のWealthNaviの口座で運用されることになる。

また、非課税枠の上限を超える入金があった場合、NISA口座では、株式やリート(不動産投資信託)などの比較的リスク・リターンの高い(=値動きが激しい)資産が優先的に運用されるという。債券などに比べると、株式やリートは利益が大きくなる可能性があるため、非課税のメリットを活かす措置だ。

(例)すでに『おまかせNISA』で100万円を投資している状態で、50万円の入金があったとき、20万円はNISAで、残りの30万円は通常の口座で運用される。この際、NISA口座の20万円分は、株式がメインの投資信託やリートに優先的に振り向けられる。

さらに、ロボアドの最大の特徴といえる、ポートフォリオの調整である「リバランス」を自動で行う場合、なるべくNISA口座内の資産は、リバランスに伴う売却をしないようにするという。NISA口座では、資産を売却すると、その空いた分の非課税枠は再利用できないからだ。いったん上限枠に達したら、なるべくNISA口座内の資産は売却せず、一般の口座を使ってリバランスをした方が、非課税メリットをより享受することができる。

ロボアドに新たな機能を追加して付加価値を高めるというのは、日本では始まったばかりだが、“ロボアド先進国”の米国ではすでにさまざまなサービスが提供されている。その代表的なサービスが「ハイブリッド型」と呼ばれるものだ。

ユーザーは、パソコンやスマホでのビデオチャットを通じて、証券会社のスタッフから資産運用のアドバイスを受け、ロボアドの運用コースを決定したりする。また、運用している途中でも、さまざまなアドバイスを受けられる。当初は、一部有料のサービスだったが、現在はほぼ無料となっており、ロボアド市場では後塵を拝していた大手証券会社が躍進をする原動力となった。

その後、さまざまなサービスが登場しており、現在は、「退職貯蓄取り崩し機能」というサービスが流行している。これは、節税を図りながら、「老後資産を効果的に取り崩すにはどうしたらよいのか」というアドバイスを受けられる機能である。これまで、資産形成層がロボアドのおもなユーザーであったが、「退職貯蓄取り崩し機能」によって、リタイア生活を過ごす層にもロボアドが浸透しているという。このサービスを、大手のロボアド会社は無料で提供している。

米国のロボアド市場全体の預かり資産残高は、2020年には1兆ドル(約110兆円)を超えたとみられる。普及が始まったばかりの日本とは、正にケタ違いの市場規模といえるが、今後、こうした米国でのサービスが取り入れられれば、日本のロボアド市場が成長できる余地は広い。コロナ禍でリモートワークが定着し、ビデオチャットも当たり前になってきた昨今、ハイブリッド型のロボアドはすぐにでもローンチできるサービスといえよう。

最後に、ロボアド業界の今後を占う上で重要な視点を紹介したい。ロボアドの資産運用サービスを拡張する、ファイナンシャル・プランニングが可能なスマホアプリの存在だ。この「ファイナンシャル・プランニング機能アプリ」とでもいうべきサービスも、すでに米国ではロボアド各社から投入されている。フィデリティの『Fidelity Spire』や、チャールズ・シュワブの『Schwab action』といったアプリだ。

アプリによってサービス内容に違いはあるが、こうしたアプリのポイントは、資産運用を始める前の段階にいるユーザー層からのさまざまな“お金の相談”に対応している点である。ファイナンシャル・プランニングや運用アドバイスを行いながら、自社のロボアドへと誘導しているのだ。

実は、WealthNaviの『おまかせNISA』のリリースにも、最後に「個人金融サービス全体について、アドバイスや取引のデジタル化・自動化を推進していく」という、今後の戦略が記載されている。そこでは、資産運用だけでなく、クレジットカード、生命保険、住宅ローン、送金といった項目が並んでいる。先行している米国のような個人投資家のマネープラン全体を取り込んだ“総合金融サービスアプリ”を意識していると考えられる。

米国のロボアドは、もはや手数料無料が常識となっている。日本でも、手数料の引き下げとともに、こうしたサービスが実現していけば、さらなる市場の拡大が加速していくだろう。

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著者

松岡 賢治 マネーライター・ファイナンシャルプランナー
松岡 賢治
シンクタンク、証券会社のリサーチ部門に在籍し、国内マクロ経済と債券市場のマーケットアナリストとして従事。1996年に独立し、1997年ファイナンシャルプランナー資格を取得。以後、ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ビジネス誌や経済誌を中心に日本経済、資産運用、投資をテーマにした記事の執筆を開始。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

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