WealthNavi「おまかせNISA」の登場から考える、ロボアドの次なる戦略は?

  • 公開日:2021.04.08

ロボアドに新たな機能を追加して付加価値を高めるというのは、日本では始まったばかりだが、“ロボアド先進国”の米国ではすでにさまざまなサービスが提供されている。その代表的なサービスが「ハイブリッド型」と呼ばれるものだ。

ユーザーは、パソコンやスマホでのビデオチャットを通じて、証券会社のスタッフから資産運用のアドバイスを受け、ロボアドの運用コースを決定したりする。また、運用している途中でも、さまざまなアドバイスを受けられる。当初は、一部有料のサービスだったが、現在はほぼ無料となっており、ロボアド市場では後塵を拝していた大手証券会社が躍進をする原動力となった。

その後、さまざまなサービスが登場しており、現在は、「退職貯蓄取り崩し機能」というサービスが流行している。これは、節税を図りながら、「老後資産を効果的に取り崩すにはどうしたらよいのか」というアドバイスを受けられる機能である。これまで、資産形成層がロボアドのおもなユーザーであったが、「退職貯蓄取り崩し機能」によって、リタイア生活を過ごす層にもロボアドが浸透しているという。このサービスを、大手のロボアド会社は無料で提供している。

米国のロボアド市場全体の預かり資産残高は、2020年には1兆ドル(約110兆円)を超えたとみられる。普及が始まったばかりの日本とは、正にケタ違いの市場規模といえるが、今後、こうした米国でのサービスが取り入れられれば、日本のロボアド市場が成長できる余地は広い。コロナ禍でリモートワークが定着し、ビデオチャットも当たり前になってきた昨今、ハイブリッド型のロボアドはすぐにでもローンチできるサービスといえよう。

最後に、ロボアド業界の今後を占う上で重要な視点を紹介したい。ロボアドの資産運用サービスを拡張する、ファイナンシャル・プランニングが可能なスマホアプリの存在だ。この「ファイナンシャル・プランニング機能アプリ」とでもいうべきサービスも、すでに米国ではロボアド各社から投入されている。フィデリティの『Fidelity Spire』や、チャールズ・シュワブの『Schwab action』といったアプリだ。

アプリによってサービス内容に違いはあるが、こうしたアプリのポイントは、資産運用を始める前の段階にいるユーザー層からのさまざまな“お金の相談”に対応している点である。ファイナンシャル・プランニングや運用アドバイスを行いながら、自社のロボアドへと誘導しているのだ。

実は、WealthNaviの『おまかせNISA』のリリースにも、最後に「個人金融サービス全体について、アドバイスや取引のデジタル化・自動化を推進していく」という、今後の戦略が記載されている。そこでは、資産運用だけでなく、クレジットカード、生命保険、住宅ローン、送金といった項目が並んでいる。先行している米国のような個人投資家のマネープラン全体を取り込んだ“総合金融サービスアプリ”を意識していると考えられる。

米国のロボアドは、もはや手数料無料が常識となっている。日本でも、手数料の引き下げとともに、こうしたサービスが実現していけば、さらなる市場の拡大が加速していくだろう。

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著者

松岡 賢治 マネーライター・ファイナンシャルプランナー
松岡 賢治
シンクタンク、証券会社のリサーチ部門に在籍し、国内マクロ経済と債券市場のマーケットアナリストとして従事。1996年に独立し、1997年ファイナンシャルプランナー資格を取得。以後、ファイナンシャルプランナーとして活動する傍ら、ビジネス誌や経済誌を中心に日本経済、資産運用、投資をテーマにした記事の執筆を開始。著書に『ロボアドバイザー投資1年目の教科書』『豊富な図解でよくわかる! キャッシュレス決済で絶対得する本 』。

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