「いま」始めても大丈夫? 積立投資にベストなタイミングはあり得るか
篠田尚子のファンド愛 14

「いま」始めても大丈夫? 積立投資にベストなタイミングはあり得るか

  • 公開日:2021.04.09

Editor's Eye

昨年のコロナショック以降、世界的に株式市場が上昇基調にあっただけに、この機会に投資を始めてみようと思った人は少なくないかもしれない。その一方で、これだけ上昇が続くと今後の下落が心配で、「始めどき」が分からないという悩みが生まれてしまうのも当然だろう。そんな人にお勧めなのが、投資の基本とも言える積立投資だ。ファンドアナリストの篠田尚子氏に、そのメリットを改めて解説してもらった。

金融庁が今年2月に公表したデータによると、つみたてNISA(少額投資非課税制度)の口座数が昨年2020年末時点で300万を突破し、過去1年間で1.6倍に増えたという。筆者が所属する楽天証券でも、足元1年の間につみたてNISAの口座開設数が急増し、2月末時点で前年同期比約2倍の109万口座に到達した。

この背景としては、世界的な株高傾向や「老後資金2000万円問題」などさまざまな要因が推察されるが、コロナ禍がきっかけとなり、自身のライフプラン、そしてマネープランに本格的に向き合う人が増えた可能性は高い。

読者の中には、年度の変わり目を迎えた今、まさにつみたてNISAや投信積立を始めようと考えている人も多いのではないだろうか。一方で、日経平均株価が3万円台前後まで回復する中、足元の株式市場がバブル状態なのではないかと懸念している人もいるだろう。そもそも積立投資を始めるのに適切なタイミングというのはあるのだろうか。

最初に答えを言ってしまうと、「ない」。より正確には、積立を始める時期について、あまり神経質になる必要はない。というのも、積立投資なら、基準価額が高値圏にあるときから開始した場合でも、利益を期待できる可能性があるからだ。

ここからは実際に例を挙げて解説していく。

投資元本5万円を基準価額1万円で一括投資した場合をケースAとし、投資元本5万円を毎月1万円ずつ5カ月にわたって積み立てていった場合をケースBとしよう。通常、投資信託の基準価額は1万口あたりの値段を指すので、基準価額が1万円だと、1万円の購入金額で1万口分を購入できることになる。

ケースAの場合、基準価額1万円のときに5万円分を購入しているので、総買付口数は5万口となる。他方、ケースBの場合、積み立てで毎月購入していく形になるので、総買付口数は都度変わる。

基準価額が安くなったときのほうが、より多くの口数を購入できるということがお分かりいただけるだろうか。

ケースBは、積立を開始直後に基準価額が急落したものの、結果的にケースAを大幅に上回る13万3,333口もの口数を購入できた。これは、たとえるなら、「スーパーで売っているパックのお肉」のイメージそのものである。「100グラムあたり○○円」として売られているパック肉と同じように、口数あたりの値段が下がると、投資信託もよりお得に購入できる。

そして、そのお得に購入できた分が、後々積立効果を発揮するのである。最終的な評価額は、ケースAが2万5,000円(50,000口×5,000円÷10,000)、ケースBが6万6,667円(133,333口×5,000円÷10,000)。よってリターンは、ケースAが-50%、ケースBは+33.3%となる。

なお、この例でもう1点注目したいのは、基準価額が「戻り切らない」状態でもBの積立投資ではリターンが出ているということだ。1万円でスタートした基準価額は最終的に5,000円までしか回復しておらず、一括投資のケースAのリターンはマイナスに沈んでいる。開始時の基準価額から半値まで下落してしまうと、さすがの積立でもリターン獲得の期待は薄いかと思いきや、ケースBは33.3%もプラスになっている。

このように最終リターンに80ポイント以上の差が出たのは、言うまでもなく、基準価額が2,000円まで急落したときも積立を止めずに買付を継続していたからだ。これこそが、市場の先行き見通しが立てにくい中で積立投資を行うメリットである。

今回紹介した例のように、満を持して積立を始めた直後に基準価額が急落するというケースは決して珍しくない。実際に昨年のコロナショックでは、主要株式市場が直近の高値から約1カ月の間に30~40%ほど下落した。

このように、株式市場が急落すると、心理的な不安が先に立ってしまい、安くなったところで買い増しをしたほうがよいと分かっていてもなかなか行動に移せなくなる。投信積立のメリットは、こうした「感情」をいっさい排除できる点にもある。

「思い立ったときが始めどき」。気持ちも新たに、年度初めこそ資産形成の第一歩として、投信積立にチャレンジしてほしい。

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著者

篠田 尚子 楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト
篠田 尚子
慶應義塾大学卒業後、国内銀行を経て2006年ロイター・ジャパン入社。傘下の投資信託評価機関リッパーにて、投信業界の分析レポート執筆、評価分析などの業務に従事。2013年、楽天証券経済研究所入所。日本には数少ないファンドアナリストとして、評価分析業務の他、資産形成セミナーの講師も務めるなど投資教育にも積極的に取り組む。近著に『【最新版】本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』(SBクリエイティブ)。

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