リミットは6カ月!「自動移換」転退職するとき知っておきたい企業型DC
あなたは大丈夫? 企業型確定拠出年金の「DC難民」を救う! 1

リミットは6カ月!「自動移換」転退職するとき知っておきたい企業型DC

  • 公開日:2021.04.23

Editor's Eye

2022年秋、法改正によりiDeCo(個人型確定拠出年金)との併用も可能となり、使い勝手のよくなった確定拠出年金。働き方の多様化により、転職やフリーランスに転身する人も多くなる中、退職を契機に自身の老後資産が制御不能になる「DC難民」が100万人に迫る勢いで増えていると、業界では密かな話題となっています。なんでも、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人はみな、このDC難民となる可能性があるのだとか。DC難民とは何なのか、企業型DCの「自動移換」の説明と併せて、FPの山中伸枝氏が解説します。

「お財布の落とし物が届いていますが、あなたのものではありませんか?」こんな電話がいきなり交番からかかってきたら、あなたはどうしますか?

選択肢1:なんとなく面倒くさいなと、放置する

選択肢2:予定をやりくりして、さっそく取りに行く

そうですよね、恐らくほとんどの方は選択肢2を選びますよね。お財布を落として平気な人はまずいないでしょう。でも、実際はお財布を受け取りに来ない方って結構いるんですよね。

何の話? はい、これは確定拠出年金(DC)の「自動移換」の話です。中には、“お財布”の中に100万円以上のお金を放置している人もいるんだそうです。びっくりしますね。

業界関係者の間では、この自動移換者のことを「DC(確定拠出年金)難民」と呼んで問題視しています。自分のお金なのに取りに来ることもせず放置している、あるいは放置していることさえ気付かずにいる、残念な人たちです。でも、これは他人事ではなく、あなたも、もしかしたらDC難民かもしれません。DCの運営主体、国民年金基金連合会の調べによると、現在100万人近くの人のお金が「自動移換」として放置されているのです。

しかもその数は年々増加傾向にあり、減る気配がありません。特に転職・退職の経験がある方は、ご自身では気付かずにDC難民になっている可能性もありますので、ぜひ最後まで読み進めてください。

自動移換というのは、企業型確定拠出年金制度(企業型DC)のある会社を辞めた方に起こり得ます。企業型DCの資産は、転職の際に自分でしかるべき手続きを行わないと、自動移換といって国の機関にお金が格納されてしまい、自由に使えなくなってしまうのです。

ちなみにあなたの会社、あるいは以前勤めていた会社に「企業型確定拠出年金(企業型DC)」という制度はありますか? これは、会社が掛金を拠出し、そのお金をご自身で運用する制度です。会社によってはマッチング拠出といって、会社のお金に加え、自らも企業型DCにお金を積み立てている方もいらっしゃいます。掛金は人それぞれですが、加入期間によってはそれなりの金額になっているはずです。

確定拠出年金(DC)とは、老後資金専用の特別口座のことで、ここに掛金を積み立てると税制優遇を受けながら有利に老後資金を作ることができます。会社が主体としてこの特別口座を開設すれば「企業型DC」となり、個人が任意でこの特別口座を開設すれば「個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)」となります。いずれにしろ、老後資金づくりへの関心が高まる昨今、非常に注目される制度です。

さて、企業型DCですが、会社を辞めるとどうなるのでしょう? DCには「ポータビリティ」といって、持ち運べる機能があります。それまで積み立てていたお金を一旦清算し、次の会社に持ち運ぶ、あるいは、iDeCoに入れ替えて引き続き自分のお金として資産形成を継続することができるのです。DCの税制優遇は最長70歳まで継続するので、転職しても持ち運べるというのは最大のメリットでもあるのですが、同時にここに大きな落とし穴があるのです。

そもそも、企業型DCは会社の退職金制度の一種なので、在職中はあまりみなさん関心を持ちません。いざ会社を辞める段になると、退職一時金と異なり確定拠出年金は現金で受け取ることができず、ポータビリティの手続きに関する「書類」のみを受け取ります。

手続きは結構分かりにくいです。まず「ポータブル」すべき口座は2択です。1つ目は企業型DC。これは、転職先の会社に企業型DCがある場合に選びます。2つ目はiDeCoで、これは転職先の会社に企業型DCがない、あるいはあってもそこには資金を移したくない場合に選びます。また、この手続きには、加入資格喪失(以前の会社の退職日の翌日)から6カ月という時間制限があります。

転職先が決まっている人であれば、新しい会社に企業型DCがあるかどうかすぐに確認できます。もし企業型DCがあれば、手続きは案外あっさりしていて、新しい会社にその旨申し出をすれば基本的には用が済みます。前の会社で運用していた資産全額が2カ月程度で新しい会社の企業型DCの口座に移換され、新しい会社からの掛金とともにご自身で運用することができます。

新しい会社に企業型DCがない場合は、自分でiDeCoの口座を開設して、そこに資産の移換を申し出します。この手続きも、口座さえ開いてしまえば案外簡単です。

しかし、iDeCoの口座開設は、実は少し手間がかかります。企業型は会社が口座開設をしてくれますし、運用する金融商品も会社が選んでくれたものの中から選べばよいだけなのでシンプルです。一方iDeCoは、数ある金融機関の中から、気に入ったところを選ぶという作業が必要ですし、月々数百円ではありますが口座を維持するための費用を今度は個人負担しなければなりません。口座開設の申し込みをしてから2カ月程度時間がかかるのもネックです。

とはいえ、離職の際に受け取る書類にも詳細が書いてありますし、自動移換後には定期的に通知もあります。それでも分かりにくいところもあるのかもしれませんが、現在の自動移換者は98万8791人、対前年同期比111.5%というのはあまりにも多いのではないでしょうか?

筆者は、ファイナンシャルプランナーとして企業様にお邪魔して企業型DCの運用セミナーなどをさせていただくことも多いのですが、ご自身のDCについて無関心な方は少なくありません。中には自分の残高をチェックするためのパスワードを忘れたまま、何年も過ぎているという人もいます。これではDC難民になってしまうのではないかと、行く末が心配になることもしばしばあります。

一方で、老後の資産形成についての関心が高く、iDeCoに加入したいというご相談もたくさんいただきます。iDeCo加入者は189万2300人と対前年同期比123.7%と伸びています。よく見ると、自動移換者はiDeCo加入者の約半分に相当する人数です。自腹で掛金を拠出するiDeCoは興味があるのに、会社からもらったお金である企業型DCには興味がないというのは、とても不思議な話です。

もし、あなたがDC難民のお一人なのであれば、ぜひ難民救助を受けてください。アクションを起こすのはあなたです。

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著者

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー
山中 伸枝
FP相談ねっと代表。1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務。これからはひとりひとりが自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)ほか著書多数、金融庁サイト 有識者コラム連載。心とお財布を幸せにする専門家、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役、一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。

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