【本の中身を特別にチラ見せ】『IFAとは何者か』/IFAの“すべて”が詰まった1冊

【本の中身を特別にチラ見せ】『IFAとは何者か―アドバイザーとプラットフォーマーのすべて』/IFAの“すべて”が詰まった1冊

  • 公開日:2021.04.28

Editor's Eye

大原啓一さんらによる、話題の書籍『IFAとは何者か―アドバイザーとプラットフォーマーのすべて』。こちらでは特別に執筆陣の3人による鼎談で構成された、第一章の冒頭をご紹介します。今後のIFA事業の担い手になるのはどこか? そして、彼らを支援するプラットフォーマー候補はどこなのか? どんな機能が求められるのか? などの論点を探ります。

⑴ IFAを支えるプラットフォーマーにあるべき機能とは

大原――これからの新たなIFA事業の担い手として、有力な候補だと個人的に考えているのは、地域銀行等の地域金融機関や生命保険会社・保険代理店です。

野尻――それはアドバイザーとして? それともプラットフォーマーとしてですか。

大原――アドバイザーとしてです。資産運用アドバイスを提供する基礎となるお客様との信頼関係やライフプランニング技術など、地域金融機関や生命保険チャネルがそれら戦略資産を活用し、IFA事業の担い手となる可能性は大きいと考えています。

ただ、それら非証券チャネルが大きく成長するためには、プラットフォーマーの支援が欠かせません。

たとえば、地域銀行が大手オンライン証券と金融商品仲介業務で提携したけれども、対面アドバイス営業の支援が十分ではなく、提携の成果が期待していたようにあがらないといったことを最近よく耳にします。資産運用アドバイスや顧客フォローアップのための充実したツールを提供したり、そのための研修を実施したりするなどの支援をプラットフォーマーが提供しなければ、金融商品の提案・提供に慣れていない地域金融機関や保険会社・保険代理店チャネルはIFA事業に取り組むことはできません。

対面アドバイス営業の支援を十分にできないという制約を本来的にもつオンライン証券会社がプラットフォーマーの中心である現状、IFA事業の担い手が地域金融機関や保険会社・保険代理店チャネルに拡大せず、そのような支援を比較的必要としない証券会社の営業担当出身者が多い構成になっているのもその辺りに原因があるように感じています。

ですので、従来型の対面証券会社がそこに降り立つべきではないかと最近は考えています。たとえば、ある中堅証券会社は、グループ内にアセットマネジメント機能をもち、地域銀行と提携する等の動きを最近進めていますが、これからはそういう会社がプラットフォーマーとして大きく成長するのではないかという印象をもっています。

1 ここでの「プラットフォーマー」とはIFAが所属する委託金融商品取引業者等(本書 193頁参照)を指す。

野尻――理屈としてはありうるパターンだと思います。ただ、私個人としては、日本全国を網羅できるネットワークがある会社でバックオフィス機能をもっているという意味で、候補にあげるのはいわゆる確定拠出年金の運営管理機関

保険会社はそのままだとむずかしいかなって。プラットフォーマーはやはりホワイトレーベルであるべきで、その点、保険会社は色がついているのではないかと思います。ホワイトレーベルでやりにくくなるかな。

そうなると、やはり信託銀行。だが、簡単ではないでしょう。その理由は、とにかくコストがかかるビジネスだからです。

2 「確定拠出年金の運営管理機関」とは、専門的な知見に基づいて、確定拠出年金制度の運営を行う金融機関であり、運用商品の選定や提示、また、提示した運用商品に関する情報提供や投資教育等を行う「運用関連運営管理機関」と確定拠出年金の加入者の記録・管理・運用指図の取りまとめ、給付の裁定を行う「記録関連運営管理機関」がある。

沼田――従来型の信託銀行は、米国も日本も寡占化が進んで巨大化しているので、信託銀行のビジネスとして考えたときに、IFAは潜在市場が小さすぎるという判断をしてしまいがちではないでしょうか。米国では「IFAに優しい」信託会社がわざわざ新たに登場しているくらいです。

野尻――ただ、逆に日本の信託銀行でいわゆる確定拠出年金やNISAなどをやっているところは最も副次的な効果があると思います。大手外資系金融機関も米国にプラットフォームビジネスをやっているところがあって、カストディとクリアリングのサービスを行っていますね。こういうビジネスモデルが日本にあるとすると、要はカストディをやるのは何となく信託銀行になると考えているのですが。それが日本にできたらすごくきれいなかたちになると思いませんか。

3 「カストディ」とは一般に、有価証券の保管・管理、売買代金の決済、利子・配当金の受領等などの業務を提供するサービスの総称である。これらの業務を行う金融機関をカストディアンという場合もある。

大原――プラットフォーマー候補を考える場合、アドバイザーがココと組みたいと思っている金融機関として、証券会社以外にも、資産運用会社やそれこそ信託銀行もあげられます。

ただ、そうしたプラットフォーマー候補の金融機関の観点で考えると、金融商品仲介事業に興味はあっても、費用や利益、成長性等の見合いもあって、アドバイザーチャネルとして囲い込む対象としてIFAは重視しづらいという声があることも事実です。

結果、プラットフォーマー候補が優先して囲い込もうとしているのは地域銀行や保険会社というのが現状であり、まさにSBIホールディングスや野村證券等が競うように地域銀行等のアドバイザーチャネル候補を奪い合っています。中小規模のIFAがアドバイザーチャネル候補として重要視されるのはその先になるかもしれません。

これからのプラットフォーマー動向を予想するときには、そのようなビジネス的な観点も必要なように考えています。

また、資金決済・管理機能という観点も、プラットフォーマー候補としての優位性に影響するように考えています。つまり、証券総合口座と銀行口座、信託銀行口座はそれぞれ資金決済・管理に関する使い勝手や事務・システム構成等が異なっているということは無視できません。

たとえば信託銀行の場合、年金基金の運用管理等も業務として行っているように資産運用目的の口座の提供も行っていますが、大口資金を預け入れない個人向けには、株や債券等の幅広い資産の受入れは対応しきれていないことが多いように思います。

銀行口座も同じく柔軟性に欠けているように思います。そうすると株式や債券、投資信託、ラップ等、多様な資産運用商品・サービスの受け皿になりうる証券総合口座がいまのところいちばん使い勝手が良く、その観点では証券会社がプラットフォーマーとして最も優位性があると考えることもできます。

ただ、アドバイザーとなる地域銀行の投資信託口座を活用することも考えられますし、顧客セグメントによっては株式や債券等は不要ということもあるので、口座機能の柔軟性がそのままプラットフォーマーとしての優位性にはつながるわけではないとも思いますが。

いかがでしたか? このあと鼎談は資金決済まわりの重要性に話が移っていきますが、それはぜひ本をお手にとって、ご覧ください。

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著者

非公開: 大原 啓一 日本資産運用基盤グループ 代表取締役社長
非公開: 大原 啓一
2003年東京大学法学部卒。2010年ロンドンビジネススクール金融学修士課程修了。野村資本市場研究所を経て、2004年に興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)に入社。日本・英国で主に事業・商品開発業務に従事。同社退職後、マネックスグループ等から出資を受け、2015年8月にマネックス・セゾン・バンガード投資顧問を創業。2016年1月から2017年9月まで同社代表取締役社長。2018年5月に日本資産運用基盤株式会社を創業し、代表取締役社長に就任。
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