手数料は無料に? 『M1 Finance』の登場etc. 米国ロボアドバイザー事情
LA在住FPが綴る、金融大国アメリカのリアル 8

手数料は0.25%程度、『M1 Finance』の登場etc. 米国ロボアドバイザー事情

  • 公開日:2021.04.20

Editor's Eye

日本でもロボアドバイザーの人気が定着しつつあります。しかし、「手数料が高いのでは?」など様々な議論があるのも事実。そこで、日本より長い歴史を持つ、米国でのロボアドバイザー誕生の背景、進化のプロセス、そして最新事情についてLA在住FP岩崎淳子さんに解説してもらいました。低コスト化(無料化)、長期運用におけるリスク管理など、日本のロボアドバイザー界の今後をも示唆するキーワードが。

日本でもロボアドバイザーの人気が高まっていると聞きました。

ここアメリカでは、2008年にBetterment(ベターメント)という会社が初めてロボアドという新しいサービスを立ち上げ、早10年以上が経ちました。

人間に代わって“アルゴリズム”が投資アドバイスをしてくれるというこのサービスの登場は、アメリカにおいては2008年の金融恐慌が大きなきっかけとなっています。それまでは、人間のアドバイザーが投資アドバイスとマネジメントをするのが主流でした。日本ではラップサービスと呼ばれるのでしょうか、投資残高に対して決まったパーセンテージをアドバイス料金としてチャージするというものです。1%とか、1.5%とか、高いと3%というような手数料を支払うのが普通でした。

ところが金融恐慌で業界が大きく揺れ、投資ファンド自体のファンド手数料にはじまり、投資アドバイザーに支払うアドバイス料金まで、「本当に必要なのか」「払う価値があるのか」の吟味が厳しくなりました。

ファンド手数料のほうは、手数料の高いアクティブファンドから手数料の低いインデックスファンドへのシフトが進みました。

アドバイス料金のほうは、人間ではなくアルゴリズムを使うロボアドバイスが導入され、低コスト化が始まりました。サードパーティとして複数の会社のファンドを組み合わせるロボアドバイザー、金融機関が自社のファンドで組むロボアドバイザーなどいろいろなタイプが登場しました。

そもそも、「無駄な手数料を省き低コスト化する」という誕生の存在意義がありますので、日本のロボアドバイザーのような1%という高コストなものはアメリカでは生き残れません。現在、ロボアドバイザーの手数料レベルはおおむね0.25%程度です。

ロボアドバイザーの一番の競争相手は、なんといってもターゲット・デート・ファンドでしょう。実際、ロボアドバイザーとターゲット・デート・ファンドはやっていることがかなり似通っています。

初めて投資を始めるとき、ハードルとなる要素がいくつかあります。いったん投資を始めてみればそれほど大変なことでもないかもしれませんが、一度も投資をしたことがない人にとっては、どこから始めて何をどうすればいいのかが分からないからです。

大きく分けて3つあるかと思います。

(1)投資ファンドを組み合わせてポートフォリオを組むこと(ポートフォリオ組み)、(2)投資開始後、それぞれのファンドで投資成績が異なるため最初の比率からずれが生じるので、それを定期的に元の理想的な比率に戻すこと(リバランス)、そして(3)経年とともに、だんだんお金を使う時期(リタイヤなど)が近づきますから、それに応じて株式比率を下げリスク低下を図ること(リスク調整)です。

インデックスファンドを使った長期投資(老後資金などの)を目的に、(1)も(2)も(3)もすべてをある意味“ロボ化”したのがターゲット・デート・ファンドであり、アメリカの確定拠出年金制度401(k)ではすでに主流になっています。年号を選ぶだけで、(1)~(3)まで自動走行です。日本のiDeco(イデコ)におおむね相当するIRA(Individual Retirement Account)でも、ターゲット・デート・ファンドは人気です。アメリカのターゲット・デート・ファンドの手数料は0.08%から0.15%程度が主流ですから、わざわざIRAで0.25%の手数料を払ってロボアドバイザーを使いたいと考えるためには、何か特別な理由がなければなりません。

税金面でのアドバイスやケースバイケースでの相談を売りにしているロボアドバイザーもありますが、401(k)やIRAは日本のiDeCoやNISAと同じで、そもそも非課税口座で税金は関係ないですし、インデックスファンドを使った低手数料の長期ほったらかし投資においては、そのような個別アドバイスが必要になることもそれほどないとも言えます。

実際、「どのくらいの生活費でいつリタイヤしても大丈夫か」など、一歩踏み込んだアドバイスに関してはロボアドバイザーでは対応できないことが多いので、そのようなケースでは時間チャージあるいは固定チャージでファイナンシャルアドバイザーに相談したほうが、コスト的にも質的にも良い場合も多いのではないかと思います。

ロボアドバイザーにもよりますが、(1)と(2)はやってくれるが、(3)はやってくれないサービスがあります。最初にいくつか質問に答えることでリスクレベルにあったポートフォリオ組みをしてくれ、その後リバランスも定期的にしてくれるものの、その後経年とともに必要なリスク調整はされないケースです。手数料をとっているのにこれはお粗末なことでもあり、そのようなものはお勧めしていません。

一方で、お客様にあえてロボアドバイザーをお勧めするケースもあります。それは、課税投資口座(401(k)やIRAなどの老後資金用の非課税口座以外のもの)での運用時です。

課税口座でも、簡単に済むターゲット・デート・ファンドを使うこともできるのですが、この場合一本で済むターゲット・デート・ファンドの欠点が問題になることもあります。

たとえば、家の購入や学資など中期的な投資を兼ねたい場合とか、一応長期投資を目標にしているが、もしかして何かあったら引き出す可能性があるかもしれない場合などに、一本ファンド型での投資だと含まれる株式も債券も全部パッケージで売却して現金化するしかありません。

債券だけ売りたいとか、米国株式だけ売りたいなどという小回りが利かないのです。

非課税口座であれば、ターゲット・デート・ファンドを売り、中に含んでいる個別ファンドを買うことで、ファンドを「ばらばら」にしてから小回りを利かせることができ、それが非課税でできます。

課税口座ではそこで課税が発生してしまうので、それを避けるため最初から「ばらばら」に個別ファンドでの投資が望ましいわけです。

個別ファンドでの投資を可能にするロボアドバイザーで、しかも(1)と(2)だけでなく(3)のリスク調整もやってくれるといいな、と思っていたところ、なんと最近アメリカ市場で登場しました。

『M1 Finance(M1ファイナンス)』というロボアドバイザーですが、Vanguard(バンガード)の低手数料インデックスETFを中心に使ってポートフォリオを組みます。長期投資用には、年号(ターゲット年:5年ごとに設定可)とリスクレベルの好み(高中低の3段階あり)の二つを選べば、ポートフォリオが決まり、その後のリバランスもまたターゲット年までのリスク調整も自動でされます。しかも、このサービスは無料です。

『M1 Finance』は自身をロボアドバイザーとは位置付けておらず、トレーディング、貸付、カード事業などまで含んだサービス提供しており、他の部分で利益を出すため、ロボアドサービスは無料で提供するとしています(もちろん、ロボアドサービスのみの利用もできます)。

『M1 Finance』の登場は、ロボアドバイザーとターゲット・デート・ファンドとの境界がだんだんとなくなっていくこと、そしてロボアドバイザーは、もはやそれ自体ではお金をとるようなサービスではなくなっていくことを示唆しているのではないかと感じています。

いずれにせよ、個人投資家にとって「価値があるかないか」が今後も厳しく吟味されていくのではないかと思います。

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著者

岩崎 淳子 ファイナンシャルプランナー
岩崎 淳子
「Smart & Responsible」代表。 マーケティング戦略やアナリスト業務を経験した後、2000年に夫の転職を機に米バージニア州へ移住。子育てをしながら米国公認会計士、パーソナル・ファイナンシャル・スぺシャリトに合格。日本と全く異なるアメリカのシステムに戸惑った経験をベースに、個人向けファイナンシャルプラニングの情報提供サイトを立ち上げる。大金持ちでないからこそのプラニング・バランスのとれた家計システム・人任せにせず自分で考える姿勢をモットーにプラニングサービスを提供中。聖書をこよなく愛するクリスチャン。現在は米カリフォルニア州在住。著書に『お金が勝手に貯まってしまう 最高の家計』(ダイヤモンド社)。

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