脱・DC難民!自動移換からの脱出のキモは「拠出」にあり
あなたは大丈夫? 企業型確定拠出年金の「DC難民」を救う! 2

脱・DC難民!自動移換からの脱出のキモは「拠出」にあり

  • 公開日:2021.04.30

Editor's Eye

2022年秋、法改正によりiDeCo(個人型確定拠出年金)との併用も可能となり、使い勝手のよくなった確定拠出年金。働き方の多様化により、転職やフリーランスに転身する人も多くなる中、退職を契機に自身の老後資産が制御不能になる「DC難民」が100万人に迫る勢いで増えていると、業界では密かな話題となっています。なんでも、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人はみな、このDC難民となる可能性があるのだとか。DC難民になってしまった人は、具体的に何をすればいいのでしょうか。iDeCoの活用を中心に、FPの山中伸枝氏が解説します。

「DC難民」とは、会社を離職した際に移し換えるべき企業型確定拠出年金(企業型DC)の資産を適切に処理せず、国民年金基金連合会という国の機関に強制格納された「自動移換者」であることは、前回の記事(リミットは6カ月!「自動移換」転退職するとき知っておきたい企業型DC)でお伝えしました。今回は、DC難民になると具体的にどのようなデメリットがあるのかお伝えしたいと思います。

ひと言で言うと「お金が増えないばかりか、減る一方」という環境に置かれるのが「DC難民」です。では、どのくらい減るのでしょう?

まず、自動移換される際に移換手数料として4348円、その後は管理手数料として年間624円がコンスタントに差し引かれます。これらのコストは全て、自動移換された資産の中から差し引かれます。

DCというと税制優遇を思い浮かべる方も少なくないと思いますが、自動移換された資産についてはなんら優遇がありません。資産に利息がつくこともありませんし、ただただ目減りしていくだけです。さらに、DC難民であることに気付いて、ご自身のiDeCoなり新しい企業型確定拠出年金なりに資産を移換しようとすると、その際に1,100円の手数料がまた引かれます。

仮に手数料が引かれ続け、最後に資産残高が0円になってしまえば、そこでゲームオーバー。あなたの資産は全て消滅、DC難民とさえも言われなくなります。

ある方がこんなことをおっしゃっていました。「確定拠出年金はどうせ60歳までおろせないんだから、その年齢になるまで自動移換のままにしておいて、時期が来たらおろせばいいんじゃない? このご時世、どうせ金利もつかないし、手続きも煩わしいし……」。

筆者は、いくつか誤解をされていると思ったので、利子がつかないどころか、手数料分が毎月目減りしていくことに加え、以下のマイナスポイントについてもお話しました。

まず、60歳になっていざ老齢給付金として資金を引き出そうとしても、自動移換された資金は必ずiDeCo(個人型確定拠出年金)、あるいは企業型DCに資金を移してからでないと、引き出しができません。国民年金基金連合会の元から直接払い出しされないのです。

また、DCには「10年しばり」があり、加入期間が10年に満たない場合は60歳で引き出しができず、加入期間に応じて最長65歳まで引き出しが延長されます。加入期間とは、掛金を拠出している期間を指すのですが、自動移換された期間についてはこの加入期間として認められないので、計画通りにお金が使えないことがあります。

さらに、受け取り時に活用できる退職所得控除は加入期間で計算するため、加入期間が短いと受け取り時の税制優遇効果が薄くなってしまいます。退職所得控除は20年までの加入期間については1年当たり40万円、それを超えると1年あたり70万円で計算されます。例えば25年の加入期間であれば、1150万円(40万円×20年+70万円×5年)もの退職所得控除、つまり非課税で受け取れる枠が設けられます。自動移換となっている場合、この恩恵に預かることができなくなることもあるわけです。

ここまでデメリットが多いと、さすがになんとかしたくなりますよね。では、例えばiDeCoに資産移換をしたらどうなるのでしょうか?

実は、掛け金(拠出額)を設定せずに資産を移換しただけであれば、特にメリットはありません。掛金を拠出しなければ、「運用指図者」となります。これは、文字通り「運用のみする人」という意味です。iDeCoも月々のランニングコストがかかり、運用指図者であっても毎月最低でも66円、高いところだと数百円、資産から差し引かれるのです。

ここで投資信託などを選べば運用利回りも期待できるかもしれませんが、定期預金などを選んでしまうと、今のご時世では利息は期待できないためコスト負けしてしまう可能性があります。つまり、せっかくDC難民から脱却しても、運用指図者であれば、あまりメリットはないのです。

iDeCoの本来の目的は老後のための資産形成ですから、やはり毎月の掛金を拠出してこそ意味があります。iDeCoの掛金は全額所得控除、つまり自分の貯蓄に回したお金が経費としてみなされ、その分所得税、住民税を低く抑えることができます。年収500万円くらいの方だと、所得税と住民税を合わせて掛金合計額の20%も税金が安くなります。

もちろん運用で得られた利益に対して税金はかかりませんし、前述したとおり掛金拠出期間は受取時も税制上有利に働きます。やはりiDeCoは本来の目的、老後の資産形成として活用してこそ価値があります。

ここでまたよく言われるのが、「今は事情があって掛金の拠出が難しい」という言葉です。拠出ができない場合、運用指図者となる選択肢もあるのですが、筆者は「iDeCoの最低掛金は月5000円です。これって、一日当たり167円ですが、やはり掛金を出すのは難しいですか?」と伺う事にしています。先ほどの例のように、年収500万円くらいの方なら、年間6万円の拠出でも12000円の税メリットがありますし、何より、資産形成は積立し続けることに重要な意義があるからです。

それでも、その5000円が拠出できないというのであれば、おそらくiDeCoの運用指図者になったところで、問題は解決しないのです。検討すべきところは「iDeCoの掛金をどうするか」ではなく家計全体で、収入や支出をしっかり見直さないといけない状況にあるはずなのです。安易にiDeCoの運用指図者になっても、根本的な家計の問題が解決されなければ、iDeCoの機会損失ばかりか、家計破綻の危機が訪れるでしょう。

実は、国民年金基金連合会の調査によると、運用指図者も2021年2月現在で69万6807人と報告されていて、こちらも年々増加傾向にあります。ネット上のQ&Aでは、「掛金の拠出が困難な場合は運用指図者になれる」と回答されていますので、そのまま運用指図者になる方もいるのかもしれません。もちろん間違った回答ではないのですが、本来はもっと本質を考えるべきでしょう。

iDeCoは任意加入なので「強制的に加入させられた」という方はいないでしょうけれど、企業型DCは自分の意思で始めたのではないと言う方もいらっしゃいます。しかし、国民一人ひとりが自助努力で資産形成をすることが必須の今、始まりはどうあれDCに出会えたことをラッキーと思い、ぜひしっかりと活用していただきたいものです。

 

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著者

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー
山中 伸枝
FP相談ねっと代表。1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務。これからはひとりひとりが自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)ほか著書多数、金融庁サイト 有識者コラム連載。心とお財布を幸せにする専門家、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役、一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。

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