金融資産が多い人ほど長期目線、単身世帯で二極化…データが明かす資産形成のリアル
あなたの資産形成を強くする「データ」の読み方1

金融資産が多い人ほど長期目線、単身世帯で二極化…データが明かす資産形成のリアル

  • 公開日:2021.04.22

Editor's Eye

人生100年時代。自身のライフプラン、ファイナンシャルプランを自分で考えられるようになるスキルは必須でしょう。そのためにはデータや数字を読み解き、今の時代の傾向を掴みつつ、自身のプランに活かすスキルも欠かせません。そして世の中には、知らなきゃ損!ともいうべき価値あるデータや数値がたくさん。そこで、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんに、特に注目のデータや数値をピックアップしていただき、そこから読み解ける時流や、個人が自身のライフプランやお金へのスタンスを考えるときにどう参考にすればいいかまで解説してもらうシリーズをスタート! 初回となる今回は「平均金融資産保有額〇万円」と引用されることでもおなじみの『家計の金融行動に関する世論調査』。平均値と中央値の違い、金融資産の多い人特有の傾向など、数字が示す事実を読み解きます。

『家計の金融行動に関する世論調査』は、金融広報中央委員会によって毎年実施されている調査です。金融広報中央委員会とは、事務所を日本銀行内に置く公正中立な団体で、金融情報の提供や金融経済学習の支援を行っています。

この調査の目的は、(1)家計の資産・負債や家計設計などの状況を把握し、これらの公表を通じて金融知識を身につけることの大切さを広報すること、(2)家計行動分析のための調査データを提供すること、となっています。

毎年継続的に行われている調査であること、金融資産の保有状況等に関する質問が多いことから、時代の変化が家計の資産や金融商品選びに与える影響を捉えやすい調査です。富裕層と貧困層の偏りを伝えるニュースなどでは、この調査の平均値や中央値がよく利用されています。

今回は、令和2年度の最新データをについて「2人以上の世帯」「単身世帯」の家計の状況について、見ていきます。

図表1は、過去5年間の金融資産残高の推移を示しています。2020年の2人以上の世帯の平均値(金融資産の非保有世帯含む)は、1436万円でした。

平均値を見て驚いた人は、図表1の黄色で示した「中央値」にも注目しましょう。中央値とは、金額順に並べた時にちょうど中央にくる金額です。一部の高額所有者によって金額が引っ張られる平均値よりも、社会の“真ん中”を意識するにはこちらの中央値の方が適しています。



図表1.金融資産の保有状況(2人以上の世帯)単位:万円


続いて、図表2の単身世帯の金融資産保有状況についても見ていきましょう。単身世帯では、平均値653万円に対して中央値が50万円とずいぶん低くなっています。これは過去5年間のデータを見ても大きく変わることはありません。つまり、単身世帯では、高額の貯蓄がある人がいる一方で、貯蓄がほとんどない人が大勢いる状態が長期間継続していることに気がつきます。

 

図表2.金融資産の保有状況(単身世帯)単位:万円

今回、単身世帯の回答者のうち、金融資産保有世帯(金額無回答を除く)が 1510 世帯だったのに対して、金融資産を持たない世帯が904 世帯ありました。単身世帯のうち4割弱が金融資産を持たないことになり、経済的に厳しい状況にある単身世帯がとても多いことがわかります。

ここでは平均値と中央値をご紹介しましたが、実はライフプランを考える上では、こうした数字はさほど重要ではありません。年齢やライフスタイル、住む地域や理想とする生活などによって、必要な貯蓄額は異なるということを付け加えておきます。

続いて、図表3の貯蓄割合についての質問を見ていきましょう。ここでいう貯蓄割合とは、元本保証の貯蓄だけではなく、投資性のある金融商品なども含みます。

過去1年間の手取り収入からの貯蓄割合は、2人以上の世帯が10%、単身世帯は13%でした。ボーナスや臨時収入を貯蓄に回している割合は、2人以上の世帯では20%、単身世帯では36%でした。

ここまで見ると、単身世帯はしっかりと貯蓄をしている印象ですが、単身世帯では臨時収入のなかった人が46.7%いることにも注目です。単身世帯においては、貯蓄のある層と無い層の二極化が大きい傾向が見受けられます。


図表3.収入からの貯蓄割合(貯蓄や投資を含む)

※筆者作成

金融資産の目標額の平均額は、2人以上の世帯で2721万円、単身世帯では2313万円でした。また、今後、保有額を増やそう、保有を始めようと思っている金融商品を聞いた質問(複数回答可)では、2人以上の世帯でも単身世帯でも、上位5位の金融商品の順番が同じ結果となっています。

興味深いのは、株式投資信託や個人年金よりも、個別株に関心を持つ人が多かったことです。特に、単身世帯では個別株の保有を増やしたいと考える人が21.0%いました。投資=株というのがイメージとしては強いのでしょう。


図表4.今後の金融商品の保有希望

※筆者作成

金融資産の保有額と生活設計への考え方に相関があるのかを調べてみたところ、2人以上の世帯が図表5、単身世帯が図表6のようになりました。回答は「生活設計を立てている」「現在生活設計を立てていないが、今後は立てるつもりである」「今後も生活設計を立てるつもりはない」の3つの中から、1つを選択するようになっています。

図表5.世帯の貯蓄総額と生活設計の考え方(2人以上の世帯)単位:%



図表6.世帯の貯蓄総額と生活設計の考え方(単身世帯)単位:%

※ともに筆者作成

ここでいう生活設計とは、「将来、こんな暮らしをしてみたい」「こんな家に住んで、子どもは大学まで行かせたい」など、将来の理想の姿を思い描き、それに必要なお金を計算して計画的に準備していくことです。ライフプランニングということでもあります。

この調査によると、2人以上でも単身世帯でも、金融資産の保有残高が多い家庭ほど、この「生活設計」を「したことがある」と回答した割合が多くなっています。一方で、貯蓄がない世帯においては、「今後も生活設計を立てるつもりはない」とする回答が、貯蓄がある世帯に比べてはるかに多くなっています。

生活設計を立てているから保有する金融資産が増えているのか、それとも、保有する金融資産が増えたために生活設計を立てるようになったのか、どちらが先かはデータからはわかりません。それでも、保有する金融資産残高と生活設計には何かしらの関係性がありそうです。

また、2人以上の世帯では、単身世帯に比べると生活設計の必要性を感じている人の割合が高い傾向があります。保有する金融資産が比較的少ない世帯では、生活設計を立てている人の割合こそ少ないものの、今後は生活設計を立てたいと前向きに考えている層が、単身世帯よりも多く見られました。

今回は、金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」令和2年版のデータを分析してみました。単身世帯の保有金融資産の中央値が50万円で、全体の4割弱が金融資産を持たない世帯であることに驚き、正直なところ不安を感じたのも事実です。

また、金融資産のある世帯ほど将来を具体的にイメージしてお金の準備を始めていますが、金融資産を持たない層は、生活設計に関心を持たず、目の前の生活だけを見ている傾向があります。つまり、金融資産のある世帯ほど“長期目線”と言えます。

この調査の目的とも通じますが、学校教育等でお金の基礎知識や生活設計の大切さを普及していくこと、病気や失業などのリスクにも耐えられるだけの金融資産を持つ人を増やしていくことがとても重要だと感じる調査結果でした。

参照データ
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」令和2年(2020年)
https://www.shiruporuto.jp/public/emergency/illness/yoron/tanshin/2020/20bunruit001.html

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著者

氏家 祥美 ファイナンシャルプランナー
氏家 祥美
お茶の水女子大学大学院修了。2005年に女性4名でFP会社を設立して実績を積んだのち、2010年にFP事務所ハートマネー代表に。共働き家族やリタイアメント層に向けたマネー&キャリアプランニングを得意とする。webメディアや雑誌、書籍での執筆のほか、家庭科教科書の経済パートを執筆するなど、金融リテラシーの普及をライフワークとしている。

参考サイト
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