確定拠出年金の自動移換救済措置!対象となるケースは?
あなたは大丈夫? 企業型確定拠出年金の「DC難民」を救う! 3

確定拠出年金の自動移換救済措置! 対象となるケースは?

  • 公開日:2021.05.10

Editor's Eye

2022年秋、法改正によりiDeCo(個人型確定拠出年金)との併用も可能となり、使い勝手のよくなった確定拠出年金。働き方の多様化により、転職やフリーランスに転身する人も多くなる中、退職を契機に自身の老後資産が制御不能になる「DC難民」が100万人に迫る勢いで増えていると、業界では密かな話題となっています。なんでも、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人はみな、このDC難民となる可能性があるのだとか。DC難民になってしまった場合、「救済措置」があるようです。FPの山中伸枝氏が解説します。

確定拠出年金(DC)難民は、「お金が増えないばかりか減る一方」なので、メリットなんてひとつもない!という事を以前の記事ではお伝えしました(脱・DC難民!自動移換からの脱出のキモは「拠出」にあり)。さらにDC難民は個人のデメリットに加え、社会にとっても大きな損失です。なぜならば、移換された資金はただただ金庫の中に眠っているだけで、市場で運用されることもなく、付加価値を産むこともないからです。

もちろん国としてもDC難民を救うべく取り組みを強化させています。これまでは、離職する際に会社の人事の方等が企業型DCの資産移換について説明をするというのがルールでした。しかし、これまでお伝えしてきた通り、それだけではDC難民が増える一方なので、DC難民が次に企業型DCあるいはiDeCoになんらかのきっかけで加入する際に、自動移換者を救う「川下でのDC難民キャッチ作戦」を立てたのです。

具体的に仕事をするのは、「記録関連運営管理機関」です。記録関連運営管理機関とは、RK(レコードキーピング)と呼ばれている機関で、文字通りDC加入者の「記録」を管理するのが仕事です。普段は運営管理機関のバックで黒子のようなお仕事をしています。

日本には、RKが4社あります。NRK(日本レコードキーピングネットワーク)、JIS&T(日本インベスターズソリューションアンドテクノロジー)、SBIベネフィットシステムズ、損保ジャパンDC証券です。

RKは、加入者・運用指図者の個人情報や掛金、資産状況等を全て記録するという非常に重要な業務を担っています。さらにレポートの発行やコールセンター、給付の手続きなども行います。つまり、企業型も個人型もすべての加入者記録を把握しているのがこの4社というわけです。またJIS&T社は、特定運営管理機関といって、自動移換された方たちの記録を管理する役割も担っています。

加入者・運用指図者・自動移換者のすべての記録はRKにあるのだから、ここで突合作業を行えば自動移換者の資金を適正に戻せるのではないか。これが新しい取り組みです。しかし自動移換者にはこれまで定期的に通知を送るなどしていてもこの状況なのに、RKの登場でなにが変わるのでしょうか?

実はこの作戦「タイミング」がキモなのです。自動移換資産が本人に戻されるシチュエーションは以下の2ケースです。


自動移換者の中には「うっかり過去の企業型DCのことを忘れている」方も少なくありません。その方が「やっぱりiDeCoで資産形成しよう」というタイミングを狙います。例えば、Aさんが〇〇証券にiDeCo加入を申し出たとします。すると〇〇証券のRKがAさんの個人情報データをキャッチし、さらにRK4社が連携し、自動移換者でないかどうかを調査、確認がとれたところで資産をAさんに戻します。


企業型DCを導入している会社はたくさんあります。自動移換された方が転職してあらためて企業型DC加入者になるのを待つのがこちらです。例えば、Bさんは転職により企業型DCの加入者になりました。するとそのDCのRKがBさんの個人情報データをキャッチし、さらにRK4社が連携し、自動移換者でないかどうかを調査、確認がとれたところで資産をBさんに戻します。

この際のポイントは、RKで本人確認がとれれば「本人の申し出がなくとも」それぞれのiDeCoまたは企業型DCに資産を移換してくれる点です。画期的ですね。

実際筆者はRKの担当者に、効果のほどを伺ったことがありますが、ちょっとした名前の記録違いや登録住所が変わっていたりなど、細かいところの作業も多いとおっしゃっていました。iDeCoや企業型DCの新規加入者データに対して100万人もの自動移換者のデータを毎回突合するのですから、大変なご苦労もあるのでしょう。

ただ気になるのは「本人の申し出がなくとも」資産が移換されるという点です。繰り返しになりますがiDeCoに加入をするという方は、ご自身の意思で口座開設をするので、適時自分の口座の残高チェックはするのではないかと思います。その際、過去のDC資金が移換されていたら、これは嬉しいサプライズです。

しかし企業型DCはどうでしょう? そもそもあまり会社の制度に関心がなかった方が自動移換者になってしまっていたと仮定すると、過去の資産が合算されたとしても、それさえも気づかないということもあり得るのではないでしょうか? 老婆心ながら、自動移換から復活した資金は、しっかり管理していただきたいと思います。

いずれにしても、移動移換されたお金も「大切な自分のお金」です。もしこの記事を読んで「私もDC難民かも?」と思った方は、救済措置を待つのではなく自分自身からアクションを起こしましょう。特定運営管理機関では自動移換者専用のコールセンターを用意しています。番号は03-5958-3736ですから、問い合わせしてみてください。

もうひとつの試みは、企業型DCの移換先の拡大です。企業型DCに加入していた人がその会社を離職すると、これまでは選択肢は2つでした。すなわち新しい会社に企業型DCがあれば企業型DC、なければiDeCo加入です。この二択のうち、iDeCo加入はやはりハードルが高いと思う方がいらっしゃったのも事実です。

iDeCoの場合、まず運営管理機関を選び、掛金を決め、自分で運用商品を選ぶ必要があります。企業型DCの場合は、会社が運用商品も提供しますし、会社から拠出された資金ですから、あまり考えずに定期預金で運用しても問題なしと考えている人も少なくありません。それが離職に伴い、いきなり能動的にならなければいけないのですから、大変だと思う気持ちも理解できます。

そんな方たちの選択肢になりうるのが2022年5月から始まる「通算企業年金」への資産移換です。通算企業年金というのは、企業年金連合会が資産を預かり運用し、一定の年齢になったら終身年金で受給できる仕組みです。iDeCoと異なり、手続き後はお任せで年金開始まで待っていれば良いのですから、負担感はありません。つまり離職時という「川上」で難民になってしまう前に受け皿を増やすのです。

通算企業年金における年金の支払い開始時期や運用における予定利率は移換時の年齢により異なるのですが、例えば50歳の方がDCの資産を企業年金連合会に移換すると、予定利率1.25%で資産が引き続き運用され、65歳から終身年金で資金を受け取ります。(予定利率等は現在企業年金基金連合会のウェブサイトに記載されている企業年金資産についての情報を元にしています。実際は施行時の情報を参照して下さい)

いずれにしろ、川上(離職時の選択肢の拡大)と川下(RKによる資産移換)で挟み撃ちをしてDC難民を減らそうという動きがあるのはとてもよいことだと思います。とはいえ、企業型DCの加入者の意識が最も重要であることに変わりはありません。「会社に言われたので」という感覚でなんとなく企業型DCに加入しているという状態を脱して、制度を最大限活用するという意識変換が必要です。

企業型DCに加入している方も、2022年からはiDeCo併用が認められます。今までは会社がiDeCo併用を認めてくれている時のみiDeCo加入ができましたが、今後はどなたでも月2万円という枠で加入が可能になります(ただし、会社の掛金と合わせての上限が設定されています)。もし会社でマッチング拠出を認められている方でも、iDeCo併用と比較して有利な方を選択することもできます。これらを活用することで、将来に向けてより効率的に資産形成をすることが可能です。

制度自体はどんどん整備され、良くなっています。あとは使い方です。だれにでも準備されている制度ですから、使わなければ損、無関心なんてもったいない。制度を使うかどうかは、案外、書類1枚を書くかどうかの違いであったりしますが、将来的には「アリとキリギリス」のお話のように、かなりの差になっていくでしょう。

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著者

山中 伸枝 ファイナンシャルプランナー
山中 伸枝
FP相談ねっと代表。1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業後、メーカーに勤務。これからはひとりひとりが自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナー(FP)として2002年に独立。年金と資産運用、特に確定拠出年金やNISAの講演、ライフプラン相談を多数手掛ける。『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)ほか著書多数、金融庁サイト 有識者コラム連載。心とお財布を幸せにする専門家、ファイナンシャルプランナー(CFP®)、株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役、一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事。

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