利便性も多様性もさらに向上! ETF市場の拡大が加速する背景に迫る
東証ETF市場創設20周年企画【後編】

利便性も多様性もさらに向上! ETF市場の拡大が加速する背景に迫る

  • 公開日:2021.04.27

Editor's Eye

ここ数年で市場が一気に拡大し、個人投資家にも広く認知されるようになったETF(Exchange-Traded Funds)。その背景にはさまざまな要因があるものの、東京証券取引所が基盤を支え、継続的に利便性を向上させてきたことも大きな後押しになったのは言うまでもありません。東証がETF市場を創設してから間もなく20周年という節目を迎えることもあり、その記念企画第二弾として、同社の永井庸介さんに近年の取り組みを振り返ってもらいました。

前回(20世紀最大の発明の1つ「ETF」 その歴史から見えてくるものとは?)紹介したように、日本のETF市場は2010年代に入り、日本銀行の買い入れも影響して急速に拡大してきました。そうした中、日本のETF市場の利便性を大きく向上させたのが、2018年に東証が導入したETFのマーケットメイク制度Ver1.0(4月1日時点の対象銘柄は149銘柄)です。

ETFを取り引きする際には流動性、つまり「買いたいときに買える」「売りたいときに売れる」状態が確保されていることが重要となりますが、制度導入前には流動性が低い銘柄も少なからず存在しており、投資家にとって利便性があまりよくない状態でした。この課題を解決するべく、マーケットメイカーと呼ばれる専門業者が取引に参加し、買い注文と売り注文を出し続けることで取引に流動性を提供でき(下図参照)、これにより東証ETFは資産形成の手段として活用しやすい商品に生まれ変わりました。

そして翌2019年には、各アセットクラスを代表するスター銘柄を育成する観点から、マーケットメイク制度Ver2.0を開始しました(4月1日時点の対象銘柄は25銘柄)。これら一連の取り組みを通じて、特に外国株指数、外国債券指数等に連動するETFの流動性が大きく改善し、実際に売買代金が増加するなど利用が拡大しています。カントリーバイアスが強いと言われることがある日本においても、国際分散投資の重要性が個人投資家に徐々に浸透しつつある中で、日本時間のリアルタイムで外国資産に投資できる東証上場の外国株・外国債券ETFが活用しやすくなったことは意義深いと捉えています。

次に世界のETFのトレンドを見ていきます。ICI(Investment Company Institute:米国投資信託協会)の統計によると、ETFの運用資産額で世界全体の約7割を占める巨大市場アメリカにおける2021年2月末時点のアセットクラス別の残高は、株式型が最も多く8割弱、次いで債券型が2割弱、残りがその他コモディティ等となっています。

この中で近年、シェアを大きく拡大したのが債券ETFです。これには複合的な要因が考えられ、投資家の高齢化に伴ってより安全な資産である債券への投資ニーズが増したことや、債券ETF自体のバリエーションの増加により投資家の選択肢が広がったことに加え、債券ETFの利用しやすさが注目されているという見方もあります。

アメリカ市場では売買代金の上位に債券ETFが多く含まれますが、個別債権だと流動性が低く投資しにくい弱点があるのに対し、個別債券を集めてETFにすることで流動性が生まれ、その点が利用しやすさとして投資家に認められて残高が伸びたということです。特に2020年3月に発生したコロナショックにおいて、株価の下落やクレジットスプレッドの拡大で市場が凍結してしまった中で、債券ETFは売買の即時性や価格の透明性が提供でき、それ以来、世界的に債券ETFの活用への注目が高まったとも言われます。

一方、2021年に入り、アメリカではワクチン接種の進展等への期待感から経済見通しの不透明感が後退するとの見方もあり、債券ETFの資金流出が続いている状況ですが、過去数年間というタームで見ると債券ETFの市場規模は大きく拡大しています。こうした背景もあり、2020年以降、東証ETF市場においても債券型ETFのラインアップが徐々に拡充されています。

テーマ別の観点では、世界的にESG投資の潮流が広がる中で、透明性の高いETFを通じてESG投資を行う手法もニーズが高まっていると言えます。ETFは指数に連動する特性から、ESGの基準さえ設定すればそれに沿ったパッシブ運用が望めるという意味で、ESGとETFは親和性が高いとも考えられます。

ESG投資は、2006年に国連責任投資原則によってESG要素を中心としたサステナビリティに配慮した投資(ESG投資)が提唱されたことを契機に広まっています。これまでESG投資をけん引してきたのは欧州ですが、この地域で早くからESGが浸透した背景には、キリスト教が広く信仰され、教会の資金をSRI(社会的責任投資)により運用してきたため、投資判断の中にESGの要素を含む非財務情報を早くから組み入れてきたことが関係していると言われています。

その欧州では、2000年ごろから各国で年金法の改正が進み、年金受託者が投資銘柄を選ぶ際にESGを考慮したかを公開したり、上場企業にESG情報の開示が求められたりと、制度的な部分でESGが他のエリアに先んじて浸透してきました。その後も欧州全体として、ESG投資のフレームワークを整える動きがあります。

近年では先行してきた欧州のみならず、アメリカ、日本を含め世界中でESGが浸透してきており、さらに2019年末に発生したCOVID-19をきっかけに、人々の思考や企業行動において社会性が重視される動きと相まって、ESG投資の考え方がより一層浸透する可能性を指摘する声もあります。実際、世界のESG-ETFは大きく拡大し続けており、ETFの専門調査機関であるETFGIによると、ETP(ETF以外の商品も含む上場取引型金融商品)の純資産残高は2020年末時点で2000億ドルに迫る規模となっています 。

日本においても、ネットニュースや新聞等に「ESG」という言葉を見かけない日はないほど広く情報が発信され、考え方の認知度は向上してきましたが、日本のESG投資やESG-ETFに限るとその歴史は比較的浅く、現状、規模もそれほど大きくありません。しかしこれを裏返すと、欧米との比較で伸びしろが大きいと捉えることもでき、実際、東証上場のETFの中でもESG観点のETFや、ESGのスクリーニングをかけているETFの銘柄数が増加しつつあります。

COVID-19を契機とした人々の価値観の変化という流れを受け、日本のマーケットでもESGに対する関心は加速度的に高まる可能性があり、ESG投資と相性の良いESG-ETFの今後の展開を東証としても注視していくつもりです。

その他のトレンドとして、アメリカではデジタル技術が急速に発展し、普及する動きと相まって「Information Technology」セクターのETF残高が増加する動きも見られます。 このセクターにはDX(デジタルトランスフォーメーション)や非接触、在宅ワーク等に関連するハイテク銘柄も数多く含まれ、ウィズ/アフター・コロナにおいて注目される形となっています。

世界のデジタル分野の競争力はアメリカが突出しており、ETFにもこうしたトレンドが見られますが、「DX」の重要性はアメリカのみならず世界中で高まっており、日本でも「デジタル庁」の設置を含むデジタル関連法案が国会で審議されるなど、官民一体となってデジタル改革を推進していく動きが加速しています。東証ETF市場においても、昨今「DX」をテーマにした新しいタイプの商品が登場してきています。

このように、時代に即した新しいタイプのETFや、国際分散投資の手段としての外国株・外国債券ETFのバリエーションが増加しており、投資家の多様なニーズ・スタイルに応じた資産形成の手段としてETFが活用しやすい環境が整いつつあります。

東証ETF市場は本年7月に市場開設20周年の節目を迎えます。今後もコスト面や透明性、即時性といったETFが持つメリットを広く周知していくことで、日本人の誰もが、資産形成の手段としてまず「ETF」を思い浮かべるようになることを目指し、その結果としてETF市場のさらなる活性化につながるよう、引き続き取り組んでまいります。

なお、本稿中、意見に関わる部分については筆者個人の見解によるものであり、筆者が所属する東京証券取引所の公式見解を示すものではないことをお断りしておきます。

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著者

永井 庸介 東京証券取引所 金融リテラシーサポート部 課長
永井 庸介
東京証券取引所に入所後、株式部にて、市場の売買監理業務を担当。その後、財務部にて、グループの管理会計制度やコストマネジメント体制の構築等を担当する。2018年より現職となり、投資家の裾野拡大をミッションとし、資産形成啓発サイト「東証マネ部!」の運営、個人投資家へのETFプロモーション業務に従事。

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