不動産価格は低迷も、J-REITはなぜ上昇? その背景にある2つの巨大マネー
金融ジャーナリスト・鈴木雅光が読み解くニュースの本質 11

不動産価格は低迷も、J-REITはなぜ上昇? その背景にある2つの巨大マネー

  • 公開日:2021.05.06

Editor's Eye

依然、収束の道筋が見えない新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、不動産価格の低迷が続いています。その一方で堅調なのがJ-REIT価格で、特に今年に入ってからは上昇トレンドが継続し、実物不動産市況とのかい離への関心も高まっているようです。そこで、金融ジャーナリストの鈴木雅光氏に、その背景と今後のJ-REIT市場の行方を読み解いてもらいました。

3月23日に発表された、2021年1月1日時点を基準とした公示地価は、全用途(住宅・商業・工業)の全国平均が前年比0.5%のマイナスとなりました。昨年まで5年連続で上昇していましたから、6年ぶりの反落になります。

地価下落の要因は改めて言うまでもありませんが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞です。緊急事態宣言の発出によって飲食店は時短営業を強いられ、コロナ前に比べて街を歩いている人、夜遅くまで会食している人の数が減りました。県境を跨いだ人の移動も抑制され、ホテルの稼働率も大幅に落ち込んでいます。そして、在宅勤務を導入した企業が増えたため、オフィスビルに対するニーズが大幅に落ち込みました。

新型コロナウイルスの感染拡大が地価にネガティブな影響を及ぼすことがはっきりした以上、気になるのは今後の動向です。3月21日、政府は2カ月半にも及んだ2回目の緊急事態宣言を解除しましたが、その後、再び感染拡大の勢いが強まり、4月25日には3回目の緊急事態宣言が東京など4都府県に発出されました。

2020年1月1日から2021年1月1日までの年間を通じた公示地価の動向を、前半と後半で分けて見たデータが、国土交通省発表の「地価公示の概要」に記載されています。前半は2020年1月1日から7月1日まで。後半は2020年7月1日から2021年1月1日までです。

この間の公示地価の変動率を全国ベースで見ると、住宅地は前半が0.4%の下落で後半が0.2%の上昇ですから、年間を通じて0.2%のマイナスになりました。また商業地は前半が1.4%の下落で後半が変わらなかったため、年間を通じて1.4%のマイナスとなりました。つまり住宅地も商業地も、前半期に下げた分を後半期で取り戻せていないのです。

これは不動産に限ったことではなく、株価もそうなのですが、一度大きく下落した後にはリバウンドという回復局面が訪れます。ちなみに日経平均株価は2020年1月6日が2万3204円で、同年3月19日には1万6552円まで下落しましたが、7月1日には2万2121円まで回復し、さらに2021年1月4日には2万7258円まで上昇しました。

このように、株価は一時的に大きく下げたものの、2020年の後半期にはコロナショックで下げた分を取り戻しただけでなく、プラスが生じています。金融資産と実物資産の違いはありますが、投資対象という点で両者を比較した場合、株式に比べて不動産の出遅れが目立っているのです。

新型コロナウイルスの第4波襲来が懸念される中、これから先の不動産価格の動向が気になります。普通に考えれば、商業地やホテル、オフィスビルの不動産価格はしばらく厳しい状況が続きそうです。

このように不動産市況が低迷すれば、当然のことながらJ-REIT市場も冷え込むのが普通です。

ところが直近の値動きで気になるのが、J-REIT市場が意外にも堅調に推移していることです。東証REIT指数はコロナショックの影響を受けて2020年3月19日には1138ポイントまで下落したものの、そこから順調に上昇して、2021年4月21日時点では2073ポイントをつけました。まだコロナショック前の水準には到達していないものの、特に今年に入ってからは堅調に上昇トレンドを続けています。

4月17日の日経新聞朝刊、マーケット総合面では「REITに海外マネー」という見出しが出ていました。記事によると、「海外勢を中心にして投資マネーが入り始め、出遅れていたオフィスREITへの見直し買いに加え、世界で広がる物価上昇への懸念が市況を後押ししている」ということです。

海外からの投資マネーが入り始めている理由としては、やはりマイナス金利の影響が大きいと思われます。新型コロナウイルスの感染拡大による景気の落ち込み懸念から、日本や欧米諸国は金融緩和政策を取っています。金融緩和ですから、金融市場にマネーが過剰に供給されています。そのため、金融市場に供給されたマネーの一部が運用先を求めてJ-REIT市場にも入ってきたと考えられます。

それとともに、日銀によるJ-REITの買い入れによる影響もある程度ありそうです。2020年の1年間を通じて日銀が買い入れたJ-REITの総額は1147億円で、2019年の528億円に比べて倍額以上になりました。

日銀のJ-REIT買い入れはすべての銘柄を対象にしていません。一定の格付けを取得していて、かつ市場での流動性がある程度あるものを買い入れるというルールがあるので、例えばスポンサー企業の信頼度が高いJ-REITがメインの買入対象になります。

東証REIT市場で最も古くから上場されている「日本ビルファンド投資法人」が典型で(主なスポンサー企業は三井不動産と住友生命)、昨年10月末以降は堅調に値上がりし、その値上がり率は4月21日までで36%にも達しましたが、昨年6月末時点で同社の発行済投資証券のうち9.28%は日銀が買い入れて保有している分です。上昇トレンドに乗った時期から見て、日銀の買い入れが直接、投資証券の需給に影響を及ぼしたわけではないと思われますが、現状、日銀の政策保有はバイ&ホールドなので、市場で流通している投資証券が減れば株価を押し上げる力が働きます。

ただこれから先、ワクチン接種が進み、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着けば徐々に金融は正常化へと向かい、日銀のJ-REIT買入額も徐々に減っていくはずです。それまでに不動産市況が回復していなければ、J-REIT価格の上昇余地も限られるでしょう。

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著者

鈴木 雅光 金融ジャーナリスト
鈴木 雅光
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

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