「こんなはずでは…」 リスクを取って資産運用をしなかった若者の末路
資産運用の「当たり前」を疑え 1

「こんなはずでは…」 リスクを取って資産運用をしなかった若者の末路

  • 公開日:2021.05.28

Editor's Eye

ここ数年、資産運用を始める人がかなり増えてきて、Web上にも多くの情報があふれています。ただしその中で、「当たり前」だと思われていることをよくよく調べてみると、実は必ずしも正しくなかったというケースは少なくありません。そこで、資産運用や年金制度などに関する調査・研究を行うシンクタンク、アライアンス・バーンスタイン AB未来総研の所長である後藤順一郎氏に、資産運用の常識を改めて検証した上で、新たなセオリーを提示してもらう連載をスタート。第1回のテーマは、「若者の資産形成」です。

コロナ禍で在宅勤務が普及したのに伴い、時間的ゆとりができたためか、資産形成を始めた若者が多いようです。実際、ネット証券の口座数が大きく伸びていると報道されています。

長年、若者の資産形成の必要性について主張してきた者の一人として、この動きは喜ばしいと思うのですが、それでもまだ多くの若者はリスクを取って資産形成を実践していません。実際、2020年7-9月期の家計調査をみても、29歳以下で株式等に投資している割合は平均4.6%、30代は少し増えますがそれでも6.3%程度で、50歳以上は10%を超えています。理論的には若者はリスクを取りやすく、シニアになればなるほどリスクを取りづらくなるはずなのですが、現実は、それとは全く逆の状況となっています。

理論から導き出される解と現実がここまで大きく乖離しているにもかかわらず、その乖離が放置されたままになっているのは気持ち悪くないですか? そんなこともあって私は、以前からこの乖離を埋めるべく、「若者はもっとリスクを取って運用すべき」とのメッセージを出し続けています。

ところで、皆さんは若者がリスクを取りやすい理由を正確に理解していますか?

金融機関のアドバイスや投資に関連するブログでは、「若者は長期にわたって投資できるから高いリスクを取ることができるのです!」と言われていることが多いと思いますが、残念ながらこれは正確ではありません。実務で最もよく使われている「平均分散アプローチ」という手法では、投資期間が長くなってもその分リターンとリスクも大きくなるため、リスクの高い株式等に多く配分するといった解にはなりません。投資期間が長くなっても最適資産配分は同じになるのです。

これ以外にも「長期投資になればなるほどリスクが低減していくから、より多くの資産を株式等に配分できる」との説明もよく耳にします。確かに“年率”リターンのリスク(変動性)は投資期間が長くなれば下がっていくので正しいのですが、でも投資家にとって“年率”リターンのリスクは重要でしょうか?

私は最終的に資産額がどの程度変動するのか(“累積”リターンのリスク)のほうが重要だと思います。当然、長期にわたってマイナスが続くことだって起こり得るわけで、長期投資になればなるほど“累積”リターンが大きなマイナスになる可能性は増えます。つまり、「若者がリスクを取れる」は長期投資ではうまく説明ができないのです。

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著者

後藤 順一郎 アライアンス・バーンスタイン AB未来総研所長
後藤 順一郎
慶應義塾大学理工学部 非常勤講師、投資信託協会 客員研究員。1997年慶應義塾大学理工学部卒業。富士銀行(現みずほ銀行)に入社し、法人向け融資業務なに従事。2000年からはみずほ総合研究所で、主として企業年金向けの資産運用/年金制度設計コンサルティングに携わる。06年一橋大学大学院国際企業戦略研究科にてMBA取得。同年4月アライアンス・バーンスタインに入社。現在はマルチアセット戦略のプロダクト担当。また、DC・NISAビジネスの推進及びAB未来総研にて顧客向けソリューション/リサーチ業務も兼務している。共著書に『年金基金の資産運用-最新の手法と課題のガイドブック-』(東洋経済新報社)などがある。

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