2020年3月に新型コロナウイルスの感染拡大に対する懸念から株式市場は暴落しましたが、直後に急回復し、その後も順調に市場は上昇しています。市場環境が好調な中、コロナ禍で将来不安が高まったこともあって、自己防衛の手段として多くの人が投資を始めました。

中でも若者の多くは、既存の証券会社や銀行ではなくネット証券で、少額からでも可能な積立投資を始めるなど、金融業界でも地殻変動が起こりつつあるようです。実際、金融庁(「投資信託等の販売会社による顧客本位の業務運営のモニタリング結果について」、2021年6月30日)のレポートでも、2020年の積立投資信託の販売額がネット証券において大きく伸びていることが確認できます。

このムーブメントはとても良いと思います。公的年金の実質的な減額や長生きリスクなどを考えれば、定年退職までに資産を極力増やしておく必要があり、その手段として積立投資は非常に有効だと思います。

最近では積立投資に適した個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)やつみたてNISAといった非課税制度もあるため、それらを活用している人も着実に増えています。

積立投資は本当に最強の投資手法なのか?

そんなムーブメントにもなりつつある積立投資ですが、ネットをみれば「時間分散ができる積立投資はおススメ」といったメリットを訴求する情報があふれています。でも、本当にそんなに素晴らしい投資手法なのでしょうか?

まず皆さんに理解してもらいたいのは、投資の世界に完璧なものはなく、メリットがあればデメリットもあるということ。では積立投資にはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

積立投資は、一般的には決まったタイミング、決まった金額で資産を購入(定時定額投資)する投資手法のことであり、資産の価格が高い時には少ししか購入せず、安い時にたくさん購入することで、自動的に平均購入価格を引き下げる効果が期待できます。結果として、以前の日本株式のように長く低迷した場合、低迷時には安く購入することができ、その後、日本株式が少しでも回復すれば利益が得られるようになるのです。一括投資の場合、投資した時点の価格を上回らない限り利益は出ませんが、積立投資の場合、換金時の価格が投資開始時点の価格よりも下落していたとしても、利益が上がることが十分にあり得ます。これは大きなメリットと言えるでしょう。

一方、デメリットは何でしょうか? 今のように株価が上がり続けている状況が続くと、たとえ積立投資を実践していたとしても、平均購入単価は高くなります。このような状態では投資開始時点の価格より高くても、価格がピークから少し下がるだけでマイナスになってしまうこともあるのです。

つまり積立投資は下げ相場には強いのですが、上げ相場には弱いのです。