ひふみ投信の評判と今後の見通しは?藤野英人氏を質問攻めしてみた!

  • 公開日:2020.03.16
ひふみ投信の評判と今後の見通しは?藤野英人氏を質問攻めしてみた!

今回教えてくれる先生

藤野 英人 レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役社長
藤野 英人
レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役社長 最高投資責任者。 国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年レオス・キャピタルワークス創業。主に日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資教育にも注力しており、明治大学商学部兼任講師、JPXアカデミーフェローを長年務める。一般社団法人投資信託協会理事。近著に、『お金を話そう。』(弘文堂)、『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)。

鈴木雅光氏(写真左)と藤野英人氏(写真右)。どんな取材が展開されるのか、ワクワクします……。

鈴木雅光氏(写真左)と藤野英人氏(写真右)。どんな取材が展開されるのか、ワクワクします……。

ひふみのイメージキャラクター「ひふみろ」が受付でお出迎え。ひふみのコンセプト「ためて、ふやして、進化する」をイメージしたロケットです。

ひふみのイメージキャラクター「ひふみろ」が受付でお出迎え。ひふみのコンセプト「ためて、ふやして、進化する」をイメージしたロケットです。

鈴木鈴木こんにちは、金融ジャーナリストの鈴木雅光です。投資信託から暗号資産(仮想通貨)まで幅広く投資関連の取材・執筆をしています。

鈴木鈴木今回、Finasee(フィナシー)編集部さんからミッションをいただきました。運用会社の運用担当者や経営者に会って、注目されているファンドの裏側にズバッと突っ込み取材をしてこい、ということです。

鈴木鈴木その栄えある第1回目のお相手は、レオス・キャピタルワークスの代表取締役社長の藤野英人さん。もう、投資信託を買っている投資家の間では知らない人はいないってくらいの有名人。「ひふみ」という名前も有名になりましたよね。

鈴木鈴木さて、何から突っ込みましょうかね~~……。

鈴木鈴木今日は、「ひふみ」を丸裸にしようという企画です。

藤野藤野どこからでもかかってきなさい!(笑)

藤野英人氏

鈴木鈴木では早速なんですが、ひふみって、なんでこんなに大きなファンドに成長したのですか?

藤野藤野……。大きいってホントに思う?

鈴木鈴木はい(キッパリ!)。これだけ有名になって、ひふみの投資家も増えたわけですから。

藤野藤野ひふみ投信の純資産総額は1269億円、ひふみプラスは5284億円、ひふみ年金は272億円。これらを合計したひふみ投信マザーファンドは約6900億円弱しかない(2020年1月末時点)。

ひふみが取り扱う投資信託の商品ラインアップ
  純資産総額 信託報酬
(年率・税込)
特徴
ひふみ投信 1269億円 1.078% 主に日本の成長企業に投資をする直販投信
ひふみプラス 5284億円 1.0780%
(純資産総額が500億円までの場合)
販売会社(証券会社、銀行など)を通じて購入できるひふみ投信シリーズの投資信託
ひふみ年金 272億円 0.836% DC(確定拠出年金)を通じて購入できるひふみ投信シリーズの投資信託
ひふみワールド 104億円 1.6280% 海外の成長企業に投資する直販投信
ひふみワールド+(プラス) 484億円 1.6280%
(純資産総額が500億円までの場合)
販売会社(証券会社、銀行など)を通じて購入できる、ひふみワールドシリーズの投資信託
  • ※純資産総額、信託報酬は2020年1月31日の金額。

鈴木鈴木いやいや。「ひふみは急激に大きくなり過ぎて運用に苦労している」って声は、いろいろなところから聞こえてきますよ。

藤野藤野そういう声があるってことは知ってますよ。しかし、「そうじゃないんだ!」と声を大にして言いたいね。「今の日本のファンドは小さ過ぎるんだよ!」とね。ひふみは日本最大の投資信託になったけど、世界的に見ればまだ全然小粒です。

藤野英人氏

藤野藤野日本の未来をもっと憂いるべきですよ。ボクらのような規模のファンドがもっと出てこないと、日本の会社って全部外資系になってしまうかもしれません。

藤野藤野別に脅しているつもりはないのですが、実際、東芝が実質的に破たん状態になって、東芝メモリを売却することになったとき、日本で手を挙げた買収ファンドって産業革新機構(当時)だけですよ。あとは外国のヘッジファンド。他の日本のファンドは資金力がないから、指をくわえて見ているしかなかった。

藤野藤野今後10年で第2、第3の東芝が出てきたとき、日本に小粒なファンドしかなかったら、どんどん外資に買われてしまいますよ。できれば3兆円から5兆円規模のファンドが5、6本は日本にないとね。

藤野藤野もちろん私たちひふみもそれを目指しています。今の規模で大きいなんて言っていたら、それこそみじめってもんです。会社の運用総額として少なくとも10兆円くらいの規模にならないと社会的責任を果たせないと思っています。

鈴木鈴木どうしたら、大きなファンドになれるんでしょうね?

藤野藤野う~ん、それは実績を地道に積んでいくしかないのでしょうね。良い運用をして実績を積み上げ、ブランドを作り上げて宣伝する。ごく当たり前のことをやるしかないと思っています。

鈴木鈴木話を戻してしまって恐縮なんですが、「ひふみは大き過ぎて運用に苦労している」という評判があるようですが、それにはどう反論を?

鈴木雅光氏、藤野英人氏

藤野藤野正直、この程度で大き過ぎるって言われるのは心外なんだけど、確かによくそう言われますよ。「純資産総額が大きいから、もう中小型株を入れるのは難しいだろう」とか、「TOPIX(東証株価指数)に近い運用成績しか出せないだろう」って。

藤野藤野でも、そもそも組入銘柄が全然違うんです。日本のアクティブファンドの中には確かにTOPIX類似のアクティブファンドは存在します。時価総額上位30社と上位銘柄がかぶっているんです。でも、ひふみは1社も入っていません。「アクティブシェア(ベンチマークとの乖離率)」も今も昔も一貫して90%程度を維持しています。

藤野藤野それと実際の運用成績ですが、TOPIXと比較したとき、2018年10月から12月までは大きく負けています。でも、他の期間ではすべて勝っていますし、2019年はTOPIXの成績を5%上回りました。

鈴木鈴木つまり、TOPIXに連動した運用はしていないし、運用成績もちゃんとTOPIXを上回っているから、「ファンドの規模が大きいので運用難に陥っている」というのは、間違っているってことですね。

藤野藤野そう。おっしゃるとおりです。

鈴木鈴木でも最近、結構資金流出していません?

藤野藤野2018年はまだ資金流入が続いていたんですけど、2018年の秋口あたりから資金流出がありました。

藤野藤野株式市場は2017年がずっと堅調で、高値で推移していました。2018年の9月に一度下がったんですが、それが11月、12月にリバウンドで基準価額が戻ったタイミングがありました。そのあたりでの解約が大きかったのです。いわゆる「やれやれの売り(買った金融商品が値下がりして保有していたところ、相場の回復で買い値に近づいたので売ること)」ってやつですね。そのあとの下げでの狼狽売りも見られました。

藤野藤野ただ、ひふみだけ突出して解約されたというよりも、業界全体で解約が増えたのだと思います。

鈴木鈴木なるほど。想定内の解約だった、と。

藤野藤野いや、想定内ではありませんでしたね。正直、残念です。投資家の方々のために長期的な資産形成のお役に立ちたいと考えて運用していますし、これからが勝負だと思っていたタイミングでの資金流出でしたからね。

鈴木鈴木でも、解約されてよかったんじゃないですか。

鈴木鈴木基準価額が戻ったから解約したって人は、ひふみのコンセプトを理解していないからでしょ。

藤野藤野そう、そう! それは確かにその通りです。

鈴木鈴木だからそういった人はどんどん抜けてしまえばいいんですよ。そうすれば残った投資家は、ひふみのコンセプトをしっかり理解した人ばかりになるから、ファンドがより強固なものになるじゃないですか。

鈴木氏

藤野藤野そうですね。ひふみは2017年の2月に『カンブリア宮殿』(テレビ東京系)というテレビ番組で取り上げられて、それをきっかけに買ってくださったお客様の数は確かに多いですが、解約率はそれ以前に購入したお客様に比べてわずかながら低い。

鈴木鈴木そうなんですか!? それは意外ですね。

藤野藤野はい。番組では1時間、ひふみのコンセプトについて深く話をしたので、実はちゃんと番組を視てくださった人たちはファンドのコンセプトを理解してくれていて、相場の変動に左右されにくかったのだと思います。

藤野藤野逆に番組で取り上げられる前に買っていた人はパフォーマンス重視で選んでくださった人が相対的に多いので、基準価額が戻れば解約したくなったのかもしれません。

鈴木鈴木それは誤解していました。私は番組で取り上げられて以降、買った人の多くが儲かりそうだから、という動機で、戻ったところで解約しているんだろうと思ってました。

藤野藤野解約した人数は『カンブリア宮殿』放映以降の方が多いのですが、率で見ると『カンブリア宮殿』放映前の方が多いですね。

藤野藤野あと、世界の株式に投資する「ひふみワールド」を2019年10月に設定したので、そちらに乗り換えた人も結構いたみたいです。

藤野氏

鈴木鈴木そっちの話をしましょう。ひふみワールドだけじゃなく、ひふみの各ファンドにも組み入れられている外国株運用って、無謀じゃありません?

藤野藤野どうして?

鈴木鈴木だって、今以上に綿密な企業リサーチが必要ですよね。そのためには海外拠点が必要になりますし、スタッフも常駐させなければならない。

鈴木鈴木現に、日本の外国株運用のファンドって、大半が銘柄選択などを外部の投資顧問会社に外部委託しているのが現状です。大丈夫ですか?

藤野藤野大丈夫です。できます。すでに2019年だけで1000社以上の海外企業を回っているんですよ。

藤野藤野それに今、起きているのが何かというと、海外企業がひふみに来るんです。

藤野藤野海外企業が世界展開でIR(株主・投資家向けの広報)を行うときには、当然、日本にも来て、ファンドに組み入れてもらうために運用会社を回ってプレゼンするんです。しかし残念ながら日本って、外国株を対象にしたアクティブファンドで一定の残高を持っているのがほとんどないのです。

藤野藤野でも、ひふみでは、ひふみワールドで約590億円、ひふみ投信で約870億円、両方合わせて1400億円以上の外国株式を持っています。外国株投資は引き続き行っていて、その投資額は増えていますから、知名度が上がってきています。海外企業は無視できない。

藤野藤野だから、ひふみにプレゼンをしに海外企業が来るんです。今、日本の運用業界で一番、外国株式の情報が集まっているのがひふみだと思いますよ。

鈴木鈴木ひふみの今後の運用体制って、どうするんですか?

鈴木氏、藤野氏

藤野藤野ひふみ投信もひふみワールドも、私がCIO(最高投資責任者)として最終判断を下すわけですが、やはりリサーチはとても大事です。

藤野藤野ひふみ投信については、私も多くの中小型株の会社を訪問して現場の情報を集めるように努力していますし、ひふみワールドについては、外国株のスタッフを増員してチーム力を強めます。海外拠点ですが、今、ニューヨークはレンタルオフィスなんですけど、これをちゃんとしたオフィスにして、スタッフを常駐させる予定です。

藤野藤野あとはASEAN(東南アジア諸国連合)をリサーチするためにシンガポール、中国については上海、深圳、北京に中国人のスタッフを置きたいと考えています。

鈴木鈴木日本株運用でひふみは良いパフォーマンスを上げてきたわけですが、「ひふみワールド」でも期待しちゃっていいんですか?

藤野藤野外国株運用でも、ひふみは海外の運用会社に圧勝できるのではないかという予感がしています。

鈴木鈴木それ、自信過剰ってやつじゃないですか……?

藤野氏

藤野藤野傲慢な気持ちを持つのはいけません。ただ、米国の運用業界の現状について話を聞くと、大半がAI運用、パッシブ運用、超短期のヘッジファンド運用が主流なんですよ。

藤野藤野つまり、経営者にインタビューをして、経営理念やビジョンを聞いて投資している運用会社が非常に少ないのです。かつ中小型株になると、その数はさらに少ない。だから、そこで勝負をすれば勝算は十分にあると踏んでいます。

鈴木鈴木ところで、ひふみの今後の課題って何ですか?

藤野藤野ボクらは10年後、どうなっているのだろう、ってことを最近よく考えています。

藤野氏

藤野藤野Amazonがカードを使わなくても、生体認証でモノが買えるというシステムを実験しています。iPhoneが世に出たのが2007年。iPhone3が出て一気に普及したのが2008年のことでしょ。これで私たちの生活が激変しました。

藤野藤野今後、テクノロジーが進化していくなかで、投資運用の世界観がどうなっていくのか、それに思いを馳せています。

藤野藤野ひょっとしたら、「良い運用をしています」というだけでは生き残れないのかもしれない。

藤野藤野だから、個人投資家の方との接点にテクノロジーを導入して、たとえば、「QRコード決済で投資信託が買える」とか、「アセットクラス(資産の種類・分類)の組み合わせをすべてAI(人工知能)で行い、個人個人の興味・関心・行動に合った最適なサービスを提供する『運用のパーソナライズ化』を進める」とか、そういったことも考えていく必要があるかもしれない。

藤野藤野運用会社の経営者としては、良い運用をすることと、テクノロジーで投資家の方の利便性を向上させることをどう融合させていくかを考えています。

鈴木鈴木本日は根ほり葉ほりすみません。ありがとうございました!

鈴取材が終わったらノーサイド。さわやかにガッチリ握手を交わす二人。

取材が終わったらノーサイド。さわやかにガッチリ握手を交わす二人。

取材・執筆

鈴木雅光

鈴木 雅光(すずき まさみつ)

金融ジャーナリスト

有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。

この記事は役に立ちましたか?
  • よく分かった (45)
  • 難しかった (1)

参考サイトでもっと情報をキャッチ!