iDeCo(イデコ)との
上手で賢い付き合い方

iDeCoの受け取り 60歳以降の出口戦略 基礎編

iDeCoの受け取り 60歳以降の出口戦略 基礎編

大江 加代

大江 加代 /
確定拠出年金アナリスト

老後資産を自ら準備する制度として、大きく注目が集まるiDeCo(イデコ)。60歳以降になるとそれまで育ててきたiDeCoの資産をようやく受け取る権利を得ることになります。その受け取り方はバラエティに富んでいて、自分の働き方や暮らしぶりに合わせて選ぶことができます。ただし、受取方法によっては多くの税金がかかってしまい、受取額が想定していたよりも大幅に減ってしまうというケースもあります。後で後悔することのないように、受け取りについて3回シリーズで説明します。

1. iDeCoの受け取りって何をするの?

そもそも受け取りというのは、これまで育ててきた自分のiDeCoの資産を売却して現金として自分の口座に振り込んでもらうことです。受け取りまでのおおまかな流れは以下のような6つのステップになります。みなさんが行うのは2~5の部分になります。

<iDeCoの受け取り 手続きから受け取るまでの流れ>

1
「受給権(=受け取る権利)資格取得通知書」が自宅に届く
2
いつから、どんな受け取り方をするのか決めるここが重要!
3
受け取りを開始したい時期になったらコールセンターかWEBで必要書類を取り寄せる
4
「印鑑登録証明書」など添付書類を準備する
5
書類を記入・押印し、提出する。
6
書類の確認が行われ、問題がなければ自宅に「給付裁定結果通知書」が届く

みなさんが行っていただく上で一番重要なのが2の「いつから、どんな受け取り方をするのかを決める」というところです。
まずはいつから受け取り可能なのかを、確認するところから始めていきましょう。

2. そもそもあなたは何歳からiDeCoを受け取れる?

iDeCoの受け取り手続きができるようになる年齢は、原則は60歳です。
ただし60歳になった時点での加入期間(通算加入者等期間)が10年以上ない場合、つまり50歳以上でiDeCoに加入された方の場合には、61歳以降になります。下の図を参照して、自分の場合は何歳から受け取れるのか確認してください。

老齢給付金の受け取り手続き可能年齢(2022年4月1日~)

老齢給付金の受け取り手続き可能年齢

手続きができるようになっても、何歳から受け取りを開始するかは、自分で決めることができます。2022年4月以降選択できる最高年齢は74歳11か月、75歳前までになります。(2020年現在、選択できる最高年齢は69歳11か月)

3. iDeCoで運用したお金の受け取り方法は3種類ある!

iDeCoの受け取り方には、「年金」「一時金」「一時金と年金の組み合わせ」の3種類があります。「一時金」で受け取るというのは、iDeCoの資産すべてを一度に売却して受け取る方法です。「年金」はiDeCoの資産の一部を売却して分割して受け取る方法です。最短で5年、最長で20年に分割して受け取ることができます。そのほかにiDeCoの資産の40%は「一時金」で受け取り、残りの60%を5年分割の「年金」で受け取るというような「一時金と年金の組み合わせ」も可能です。

60歳から受給する場合のイメージ

60歳から受給する場合のイメージ

iDeCoの受け取りは手数料に注意

「年金」「一時金」「一時金と年金の組み合わせ」いずれの方法でも、受け取りの都度、給付手数料といわれる手数料が差し引かれます。ご契約先されている金融機関によって異なり、現状440円または385円です。また、残高がある間は口座管理料も毎月かかります。積み立てしていた時よりは安いですが、こちらも契約先によりますのでご自身の契約先ではいくらになるのかチェックしてみてください。
個人型確定拠出年金ナビ「iDeCoナビ」 手数料比較一覧

その他年金受け取りTips
  • 年金受け取りは、何年かけて受け取るかだけでなく、年に何回受け取るかについてもバリエーションがあります。
  • 投資信託を保有している場合、売却時のマーケットによって売却価額が変わるため、毎回受け取り額が変わるのが一般的です。
  • 毎回の受け取り額を一定にする代わりに、受け取り期間が想定よりも少し短くなったり、最後にたくさん受け取るような受け取り方が用意されていることもあります。
  • さらに、金融機関によっては受取額を一定にするため受取専用の貯蓄型保険が用意されているケースがあります。しかし、この受取専用保険を利用すると相当な額の手数料がとられしまい、手取り額が大きく目減りするので私はお勧めしません。

4. iDeCoは受け取り方によっては、卒業する時も非課税に!受け取り時の税のしくみを解説

「給付手数料」「口座管理料」以上に手取り額に与える影響が大きいのが税金です。iDeCoの受け取りにかかる税金は受け取りのタイミングと方法によって変わります。税のしくみをしっかり押さえて賢く受け取って頂きたいと思います。

一時金で受け取る

まずは一時金として受け取る場合の税金の仕組みからみていきましょう。
計算式は、下の図にある通り、一時金として受け取る金額(収入金額)から「退職所得控除」と呼ばれる非課税枠を差し引き、それに2分の1を掛けたものが退職所得の金額となります。税額はこの退職所得の金額に応じた所得税と住民税です。これが一時金の場合の税額計算の基本的な仕組みです。

退職所得の計算方法

退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除)×1/2

勤続年数
(=A)
退職所得控除額 具体例
20年以下 40万円×A
(80万円に満たない場合には、80万円)
16年なら、
40万円×16=640万円
20年超 800万円+70万円×(A-20年) 30年なら、
800万円+70万円×(30-20年)=1500万円

「退職所得控除」という非課税枠は、勤続年数でその枠を計算することになっています。iDeCoでは、「勤続年数」を、積み立てをしていた「加入年数」に置き換えて計算します。
年に満たない月数は繰り上げとなります。20年を超えると1年あたり70万円と枠が大きくなりますから、長年コツコツ積み立てして育てたiDeCoの場合、税金がかからない枠である「退職所得控除」が相当大きくなります。

一時金受け取りここに注意
  • 一時金の税の仕組みで最大の注意点は、会社の退職金など他にも退職一時金がある場合、それと合算してこの退職所得控除を使うということ。退職金が多い会社にお勤めの方や公務員の場合、「退職所得控除」は退職一時金で使い切ってしまい、iDeCoの一時金はすべて退職所得として課税される可能性があります。
  • この合算の対象はiDeCoの受け取りをした前年から遡って14年以内に受け取った退職一時金ですので、転職などで前に退職金を受け取ったことがあるという方も、留意する必要があります。

年金として、分割で受け取る

年金で受け取る場合「公的年金等控除」があり、それを超えた額が雑所得として課税の対象になります。(図 雑所得の計算方法 参照)ここからが一時金の場合と大きく違う点なのですが、雑所得は他の所得と合算して税額を計算します。

年金受け取りここに注意
  • 60歳以降も働いていて給与収入がある時にiDeCoを年金受け取りする場合、給与所得と合算されて課税所得が算出されます。そして、その課税所得に応じた所得税や住民税を支払うことになります。
  • 非課税枠である「公的年金等控除」は、年金を受け取る年齢や年金収入金額に応じて、下記の図表のように決められています。図表にある年金収入というのは、公的年金や企業年金で受け取る額も含まれていますので、同じ年に受け取ったこれらの年金も合計して年金収入金額を算出します。

雑所得の計算方法

雑所得=年金収入金額-公的年金等控除額

年金収入
金額
公的年金等
控除額
(65歳未満)
公的年金等
控除額
(65歳以上)
130万円以下 60万円 110万
130万円超~330万円以下 年金収入金額×25%+27.5万円
330万円超~410万円以下 年金収入金額×25%+27.5万円
410万円超~770万円以下 年金収入金額×15%+68.5万円
770万円超 年金収入金額×5%+145.5万円

一時金+年金で受け取る

一時金と年金を併用して受け取る場合には、一時金部分は退職所得控除が適用されて退職所得として、年金部分は公的年金等控除が適用されて雑所得として受け取ることになります。

5. あなたはいつからどのように受け取る? それをどう決める?

受け取りをする際にコストである税金や手数料を中心に、一時金・年金の特徴を下の表にまとめてみました。

一時金で受け取る場合 年金で受け取る場合
メリット
  • ・税負担が軽いことが多い
  • ・社会保険料がかからない
  • ・給付手数料は1回しかかからない
  • ・受け取り完了まで非課税で運用を継続できる(受け取り用の保険商品を購入する場合は除く)
  • ・生活費の一部をカバーするような受け取り方にすれば管理はしやすい
デメリット
  • ・使うあてもなくまとまったお金を手にすると、無用な運用に走ったり、使いすぎる可能性がある
  • ・勤務先の退職金が多い場合は、税負担が大きくなる可能性がある
  • ・口座管理料が受け取り完了までかかる
  • ・給付手数料が受け取りの都度かかる
  • ・一時金よりも税負担が大きくなることが多い
  • ・社会保険料が増える可能性がある

メリット

一時金で受け取る場合
  • ・税負担が軽いことが多い
  • ・社会保険料がかからない
  • ・給付手数料は1回しかかからない
年金で受け取る場合
  • ・受け取り完了まで非課税で運用を継続できる(受け取り用の保険商品を購入する場合は除く)
  • ・生活費の一部カバーするような受け取り方にすれば管理はしやすい

デメリット

一時金で受け取る場合
  • ・使うあてもなくまとまったお金を手にすると、無用な運用に走ったり、使いすぎる可能性がある
  • ・勤務先の退職金が多い場合は、税負担が大きくなる可能性がある
年金で受け取る場合
  • ・口座料が受け取り完了までかかる
  • ・給付手数料が受け取りの都度かかる
  • ・一時金よりも税負担が大きくなるが多い
  • ・社会保険料が増える可能性がある

あなたが気になったデメリットはどちらに多かったでしょうか。どちらも、メリットばかりではありませんので、iDeCoの資産が多い方は一部を一時金、残りを年金で受け取るという選択肢もぜひ検討してみてください。

著者からのメッセージ

受け取り方によって税金や手数料といった費用はもちろん異なるのですが、受け取り方を決める上で一番大切なのはあなたが必要な時に受けとるということです。iDeCoは公的年金や会社の退職金・年金、そして小規模企業共済といった様々な制度とともにあなたの老後の生活を支える資金です。ですから、税金の多寡にかかわらず、生活上必要な時に受け取るというのが一番大切なことです。

ですから、60歳が近くなったらiDeCoを含めた出口戦略を立ててみることをオススメします。まずは、公的年金や退職金といった他の老後の生活を支えるお金がいつから、いくらもらえるのかを把握し、働くことを含めていつが収入における空白期間なのかを整理しましょう。その上で、パズルで最後のピースを置くように、空白の箇所をiDeCoで埋めるようにすると、制度の目的に最も適った受け取り方になります。先に計画することでタイミングも方法も自由度がとても高いiDeCoの特長を活かして受け取ることでできます。最後までiDeCoの良さを享受してiDeCoを卒業していただけたら幸いです。

まとめ

今回は、iDeCoの受け取りの基本として、受け取りとはどんなことをする必要があるのか?受け取り方による税や各種手数料の違いなどを説明してきました。受け取り時の税を安くするには、控除枠をうまく活用することがポイントです。次回以降の応用編で説明していきたいと思います。

この記事のポイント

  • 受け取りのポイントは「いつから、どんな受け取り方をするのか決めること」
  • 一時金と年金では税制上の取り扱いが全く異なる
  • 一時金も年金も非課税枠があり、他の制度との合算がなされる
大江 加代

大江 加代(おおえ かよ)

確定拠出年金アナリスト

オフィス・リベルタス取締役。大手証券会社にて22年間勤務、一貫して「サラリーマンの資産形成ビジネス」に携わる。確定拠出年金には制度スタート前から関わり、25万人の投資教育も主導。確定拠出年金教育協会の理事として、月間20万人以上が利用するサイト「iDeCoナビ」を立ち上げるなどiDeCoの普及・活用のための活動も行っている。